Beyond Despair -40ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「うん、そうだよ~」

歯を食いしばる。

俺はそっとライトに視線を向ける。

昨日、公園で子供の様に泣いていた少女の姿が脳内で蘇える。

『君は察しが良いな』

拳を力強く握りしめる。

「護……?」

火野川の心配そうな声が後ろから聞こえてきた。

ホント、ついてねーよな俺。

俺自身、コイツとはもう関わらないって、そう決めたのに。

『もう私に関わるな。そうすれば、お前の日常に大きな変化はないから……』

エントランスを去る時の彼女の言葉。

でも、その言葉を告げるときの彼女の顔は……。

とても、悲しそうだった。

「護、別の車両に移る?」

俺の右肩に手を置きながら火野川はそう言った。

コイツ自身、俺とライトを会わせるのはマズイと思っているらしい。

「立ってても良いなら、普通の車両に行くけど?」

俺は火野川に顔を向ける。

と、エレナに龍二までも俺を心配そうな表情で見つめていた。

また変な心配をさせている自分が情けなく思える。

「せっかく良い車両に来んだ、一般車両に戻るなんて勿体ないだろ?」

俺は笑いながら三人にそう言った。

「本当ですか? 無理しないで良いんですよ、護さん?」

「別に平気だって。それに、コイツが起きなければ問題無いだろ?」

俺はそう言いながら窓際へと移動する。

「ん? ライトと何かあったの少年?」

ソファーに横になっているアイネスが声をかけてきた。

「いやぁ、別に」

そう言うしかないよな。

俺は折りたたみ式の椅子に腰を降ろした。

すると火野川とエレナも同じく折りたたみ式の椅子に座る。



/続く



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「あれ、何でライトがここに」

火野川はライトを見つめながらそう呟く。

「って、アンタ達……ライトの知り合いなの?」

すると反対側のソファーに腰掛ける金髪の少女がそう聞いてきた。

「え? えぇ、まぁそんな感じですけど……」

「へー、ライト、友達出来たなんて一言も言わなかった癖に」

少し拗ねた感じで金髪の少女はライトを見つめる。

つか気になっていたんだが……。

「ところで……アンタ誰?」

かなり遅い問いを俺は口にする。

すると金髪の少女は髪をなびかせると静かにソファーから腰を上げた。

「私はアイネス・ヴァルハーケン。ライトの彼女で~す」

「か、彼女……?」

アイネスと言う少女の言葉に俺達四人はしばらく言葉を失う。

彼女って、この女はアレか?

同性愛者って奴なのか?

「む、何よその怪しい者を見る目は?」

「いや……同性愛者にお目にかかれるとは……

「何よ、文句ある?」

頬を膨らませるアイネス。

でも少し意外だった。

ライトにもこんな友達が居たんだな。

「ライト、昨日はあんまり眠れなかったみたいなんだ。だからナイトタウンに着くまでの間、睡眠を取ってるって訳」

アイネスはそう言いながら再びソファーに腰掛ける。

「あの、ナイトタウンにはどういったご要件で行かれるんですか?」

薄型テレビに手を置きながらエレナはアイネスに問いかける。

するとアイネスは気だるそうに身体を横にした。

「ん~っとね~、最近若い女性ばっか狙った連続誘拐事件が起きててね~? その犯人を見つける為に行くの~。はぁ~、私としてはライトと遊びたかったんだけどね~」

と、その言葉に俺はとある男を思い出した。

あの時、公園で身体を震えさせながら涙するライトを見つめていた男。

「騎士団からの依頼か……?」

俺は無意識にそんな言葉を口にしていた。



/続く




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騎士団専用車両前に着くなり、男性車掌が貫通扉の真横にある通信ボタンを押した。

「お客様、少しよろしいでしょうか」

どうやら騎士団専用車両には既に先客が居るらしい。

『はいは~い、何でしょうか~?』

「申し訳ございませんが、四名追加させていただいてもよろしいでしょうか?」

『あぁ~、良いですよ~約一名寝てますし』

すると騎士団専用車両の貫通扉のロックが解除された。

他の貫通扉と違い、この車両の扉はかなり豪華な出来である。

「では、ナイトタウン到着までこの車両でお過ごしください」

頭を軽く下げる男性車掌に火野川は礼を言うと、そのまま俺達よりも先に中へ入って行った。

俺達も続いて騎士団専用車両へと入る。

「げぇ……これが騎士団専用車両か……」

入るなり俺はそんな言葉を口にした。

他の車両とはかなりと言うか、全然作りが違う。

白いカーテン、床は赤い絨毯が敷かれている。

そして長ソファーが木製のテーブルを挟んで二つ。

プラス、薄型テレビまでも置かれている。

「うわぁ~、すごいですね~」

エレナは早速薄型テレビの元へと向かう。

列車にテレビがあるって結構珍しいよな。

龍二はこれと言ってあまり興味が無いらしく、窓の外を見つめている。

火野川は何かブツブツ呟きながら携帯のカメラで車内の写真を撮っている。

と、俺は一つのソファーに腰掛ける人物に視線を向ける。

金髪の髪で露出度の高い服を着た少女。

そう言えばこの車両には先客がいたんだったっけか。

火野川もエレナもその事を忘れているようだが。

「ちょっと、アンタ達~あんまり騒がないでよ。 今私の恋人が眠ってるんだからさ」

火野川とエレナを交互に見つめながら金髪の少女はそう言った。

って、恋人?

金髪の少女の言葉に俺達四人は呆然とする。

と、微かに寝息が聞こえてくる。

その寝息はどうやら俺の目の前の長ソファーから聞こえてくるらしい。

俺はそっと背もたれの上から覗き込む。

そこには――。

「嘘マジかよ……」

今日、学生寮のエントランスで会った赤毛の少女。

全身赤の彼女はスースーと気持ちよさそうに眠っている。



/続く



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