Beyond Despair -33ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「若い女性ばかりを狙った連続誘拐事件? あぁ、確かにそんな事件このエリアで起こってたね~」

第三エリアに到着してから三十分、私とアイネは街の住民に聞き込みをして回っている。

今目の前にいるヨボヨボの婆さんにも、今まさに聞き込み中だ。

「もう三十人になるんだってね~。まったく物騒になったもんだよ」

「あの……お婆さん、その事件について何か知りませんか?」

「何かって、何だいさねぇ?」

「だから~、女性の悲鳴を聞いたとか、どの人が誘拐されたとかって、私さっきからずっと聞いてるんですけど~」

ヘナヘナと地べたに崩れ落ちるアイネ。

そうもなる筈だ、なんたってこの婆さんに数えて二十回も同じ質問をしているんだからな。

よくまぁイライラしないもんだ、私ならとっくに別の住民にあたっているが。

「悲鳴なんさ聞いてないね~、ワタシは最近耳がよく聞こえなくてね? ごめんよお嬢さん、お役に立てなくて」

「え? い、いいえッ!! そんな謝らないでください……」

婆さんの行動にアイネは飛び上がる。

そして両手を振りながらの謝罪。

にしても、この婆さんかなりのボケが来ているのか。

ここまでボケていると聞き込みにすらなってない。

言うなら、簡単なショートコントと化している。

私は舌打ちをしながら婆さんを見つめた。

「うぅ……ごめんよ、赤いお嬢さん」

私の視線に気づいたのか、申し訳なさそうな表情で婆さんは言ってきた。

「最近物忘れが激しくてねぇ~本当に歳は取りたくないさね」

「もう良いよ、婆さん。アイネ、他の住民にあたるぞ」

婆さんに背を向けながら私は歩き出す。

この婆さんを含んでの聞き込み回数は十件。

どれも連続誘拐事件に関する情報は無し。

こんな状況で、どうやって犯人を探せってんだ。

「ちょっとお待ちな、赤いお嬢さんや」

「……ん?」

私は振り返り、婆さんに顔を向ける。

「アンタ達が何してっかは知らんがね、気を付けてね。この街は最近物騒だからね」

婆さんはそれだけ言うと、アイネの肩を軽く叩いて杖を着きながら何処かへと消えて行った。

「あのお婆さん、一人で大丈夫かな」

「あの婆さんは若くない。狙われる心配は無いさ」

失礼な事を言っているかもしれないけど、事実だ。

犯人は若い女しか狙わない。



/続く



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そして椅子から腰を上げると両腕を天井に伸ばす。


「にゃ~、さてッ! そろそろ占いも飽きましたし、街に繰り出しましょう!」

「え? 俺の事は占ってくれない的な?」

坂口は残念そうな声で呟く。

「だってぇ~、疲れましたし。それにどんなふうに解説するかを考えるのって、結構難しいんですよ?」

あの適当な解説を考えるのが難しいのかよ。

エレナはクルンと回転すると、そのまま喫茶店を出ていった。

「って、こらエレナ! アンタ方向音痴なんだから一人で勝手に行かないのッ!!」

エレナの後に続いて火野川も喫茶店を出る。

坂口は何かブイブイ文句を言いながら気絶している龍二の肩を持つ。

「んじゃマモッチ、我々も行きますか」

「あぁ、先行っててくれ。俺ちっとトイレ……」

俺がそう言うと坂口は「おうおう」と返事をしながら喫茶店を出ていった。

「待たせちゃ悪いよな……」

俺は喫茶店のトイレに急いで向かう。

と、その時だった――。

「気を付けた方が良いわよ、神崎護」

背中の方から耳慣れない声。

俺は振り返る。

そこには肩まで伸ばした金紗の髪の少女が居た。

少女、と言うよりは俺より年上に見えるが。

「誰だ、アンタ。何で俺の名前を……」

目の前の女は答えない。

けど、彼女の目はどこかで見たことがある。

そんな前の事じゃない、あのサファイヤの様に輝く蒼い目。

俺はあの目を知っている。

「人の顔をジロジロ見るのはやめてくれるかしら」

と、今まで黙っていた女が口を開けた。

「悪かったな、ただアンタの目がアイツに似てたからさ」

そう、思い出した。

この女とライトの目は全くと言っていいほど同じ色だ。

「アイツとは、誰の事かしら」

「アンタには関係ないだろ。そんで、何に気を付けろって?」

俺はさっさと用件を済ませようと話を切り出す。

実際、下の方もかなり限界に来ている。

「若い女性ばかりを狙った連続誘拐事件」

その言葉に俺は列車でのアイネスの言葉が頭に浮かんだ。

ライト達が犯人を探している誘拐事件。

「知り合いとあまり離れない方が良いわよ。得にあの女の子達とは」

それだけ言うと、金紗の髪の少女は俺の前から去っていった。

去り際に、彼女が右肩から下げている細い袋に視線が行った。

「……あれって、刀袋?」

江戸時代の侍が刀をしまう袋。

何でそんな物をあの女は持っているのだろうか。

「何だったんだ、アイツ」

会った事など一度も無いのに、何であの女は俺を知っているのだろか。

俺はそんな疑問を残しながらトイレへと向かった。


/続く

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「ところでさ、一つ忘れてない?」

「ん、忘れてるって何を」

俺がそう答えると火野川は呆れるようにため息をついた。

「エレナのタロット占い。アンタ最後まで占ってもらってないでしょ?」

「あぁ、そいやそうだったな」

俺は龍二の頬をツンツン突っつくエレナに顔を向ける。

するとエレナは「ほ?」と首を傾げる。

「んで? 俺を占ったお前の考察は?」

「あぁ、そう言えばまだ言ってませんでしたねぇ~」

ずるっと椅子からお落ちそうになってしまう。

「ったく、占い師が結果を伝え忘れるってどんな状況だ?」

「いやいや~失礼しました。ゴホン、ではタロットカードが示した護さんの運命やいかにッ! 神楽咲エレナの勝手に他人の運命を考察しちゃおうコーナーッ!!」

タラーン♪ と言う交換音がエレナの背中から聞こえた気がする。

つかコーナーって何だよ。

「護さんが引いたタロットカードは悪魔、世界、魔術、そして運命の輪でしたね。このカード及び位置から考察するに――」

エレナは一度両目を閉じる。

そしてしばらく何かを考えるかのような表情になると、すぐに両目を開けた。

そして俺が引いたタロットカードの順番を変える。

 一番初めに世界、次に悪魔、その後は魔術、運命の輪。

「護さんは自身の調和を壊されました。でもそれが原因で何かに覚醒、いや目覚めるんですね。そしてあらゆる局面でも可能性を信じる強い人。そして、そんな護さんにも運命的な出会いがあるのかもしれません」

火野川の時よりも少し真面目な顔つきで解説するエレナ。

「順番を変えたのは、今の護さんに合った解説をしたかったからです」

「ふぅ~ん、で? どうなのよ護」

エレナの解説を聞いた火野川が俺に声をかけてくる。

正直、この占いで出たカードはどれもただの運とは思えない。

まぁ、運命的な出会いとか、目覚めるとかはファンタジー的すぎるけど。

「まぁ、今の時点で合ってると言えるのはこの世界のカードの意味だけだな」

ペラっと世界のカードを手に取る。

調和の破壊、今の俺にはピッタリすぎるカードだよな。

まぁ、そんな俺だけに言える事じゃないんだけどな。

「まぁしょせんは占いですから。そこまで気にしなくても良いと思いますよ?」

と、ホワホワスマイルでエレナは俺にそう言った。



/続く



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