「若い女性ばかりを狙った連続誘拐事件? あぁ、確かにそんな事件このエリアで起こってたね~」
第三エリアに到着してから三十分、私とアイネは街の住民に聞き込みをして回っている。
今目の前にいるヨボヨボの婆さんにも、今まさに聞き込み中だ。
「もう三十人になるんだってね~。まったく物騒になったもんだよ」
「あの……お婆さん、その事件について何か知りませんか?」
「何かって、何だいさねぇ?」
「だから~、女性の悲鳴を聞いたとか、どの人が誘拐されたとかって、私さっきからずっと聞いてるんですけど~」
ヘナヘナと地べたに崩れ落ちるアイネ。
そうもなる筈だ、なんたってこの婆さんに数えて二十回も同じ質問をしているんだからな。
よくまぁイライラしないもんだ、私ならとっくに別の住民にあたっているが。
「悲鳴なんさ聞いてないね~、ワタシは最近耳がよく聞こえなくてね? ごめんよお嬢さん、お役に立てなくて」
「え? い、いいえッ!! そんな謝らないでください……」
婆さんの行動にアイネは飛び上がる。
そして両手を振りながらの謝罪。
にしても、この婆さんかなりのボケが来ているのか。
ここまでボケていると聞き込みにすらなってない。
言うなら、簡単なショートコントと化している。
私は舌打ちをしながら婆さんを見つめた。
「うぅ……ごめんよ、赤いお嬢さん」
私の視線に気づいたのか、申し訳なさそうな表情で婆さんは言ってきた。
「最近物忘れが激しくてねぇ~本当に歳は取りたくないさね」
「もう良いよ、婆さん。アイネ、他の住民にあたるぞ」
婆さんに背を向けながら私は歩き出す。
この婆さんを含んでの聞き込み回数は十件。
どれも連続誘拐事件に関する情報は無し。
こんな状況で、どうやって犯人を探せってんだ。
「ちょっとお待ちな、赤いお嬢さんや」
「……ん?」
私は振り返り、婆さんに顔を向ける。
「アンタ達が何してっかは知らんがね、気を付けてね。この街は最近物騒だからね」
婆さんはそれだけ言うと、アイネの肩を軽く叩いて杖を着きながら何処かへと消えて行った。
「あのお婆さん、一人で大丈夫かな」
「あの婆さんは若くない。狙われる心配は無いさ」
失礼な事を言っているかもしれないけど、事実だ。
犯人は若い女しか狙わない。
/続く