Beyond Despair -32ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「金か、ならいくらでもやるぞ」

「金には困ってない。そうだな、アンタの身体で遊ばせてくれたら知ってる事を教えてやっても構わないぜ?」

男は立ち上がり私に近づいてくる。

「ら、ライトッ! 逃げようよ……!」

アイネは動かない私の腕を何ども引く。

でも私はそんなアイネの腕を振り払う。

すると男は私の両肩に分厚い手を乗せてきた。

「ほぉ、その態度はお触りOKって事かな?」

私は何も言わずに目の前の男を見つめる。

すると肩に乗っていた男の手がゆっくりと私の首筋を撫でた。

「ら、ライト……!」

泣きそうなアイネの声が路地裏に響く。

男の手はだんだん私の胸へと到着した。

「ひゅ~、姉ちゃんまさかこう言う事されたくて来たってはらか?」

ご機嫌そうな声で男は私の赤いシャツをまくり上げようとする。

が、その直前で男は手を引いた。

「……どうした、やらないのか?」

「やめたよ、アンタからは波ならぬ殺気を感じるからな。もし触りでもしたら殺されそうだぜ」

「へぇ、利口だなアンタ」

すると男は私に左手を差し出してきた。

「その手は何だ」

「姉ちゃんの身体はいらねー。でもただで情報はやりたくねー。分かるよなぁ?」

結局はそうなるのか。

だったら初めからそう言えばいいのに、無駄な時間を過ごした気分だ。

私は舌打ちをしながら財布を取り出す。

「で? いくら欲しいんだ」

「姉ちゃんの所持金はいくらだ、それによって要求する額も変わってくる」

「そうだな、ざっと五十万って所か」

私がそう言うと男は目を丸くした。

頭をかきながら私を呆然と見つめる。

「おいおい、姉ちゃんどっかの大企業の社長の娘か何かか? そんな大金よく持ち歩けるな」

「大企業の娘じゃないけど、まぁ昔働かされてたからな。それの残りだよ、この五十万は」

「その歳で働いてたのかぁ? おいおい、姉ちゃんの両親は一体どんな奴だ」

「正確には二年前、あの化け物が現れるまでだけどな」

男は信じられないと言う表情だ。

こんな社会のゴミのような奴でも、こういった常識的な考え方は出来るのか。

と言うことは〝あの男〟の考え方は異常って事だな。



/続く



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「アンタに聞きたい事がある。最近このエリアで起きている若い女ばかりを狙った連続誘拐事件についてだ」

私がそう言うと、目の前の男は鼻で笑う。

「いい歳して探偵ゴッコか? くだらねぇ事してねーでとっととお家に帰りな」

手をヒラヒラさせながら男はそう言った。

「じゃねーと、お嬢さん方も拐われちまうぜ?」

ふらりと立ち上がり、裏路地の更に奥へと男は歩き始める。

私はそんな男の肩を掴んだ。

「話は終わってない」

男は顔を私に向けると睨みつけてくる。

見たところコイツは表向きの人間では無いだろう。

さっきまでの聞き込みは表向きの人間ばかりだった、裏の人間なら何か知っているかもしれない。

「姉ちゃん、本気で犯人探してんのか?」

「あぁ、生憎と依頼なんでな」

「依頼? おいおい、その歳でもう仕事してんのか、人生損してんぞ」

「はっ、説教たれりほどの人間かアンタ。どうせ女を強姦して奪った金で生活してるって人種だろうが」

私がそう言うと男はイラっとした顔つきになる。

そそてポケットからタバコを取り出し口に加える。

ライターを取り出してタバコに火を灯すと、男は上を見上げた。

「ふぅー、アンタ中々鋭い姉ちゃんじゃねーか。まぁ、確かに俺はその人種に入る糞な男だが」

男は私とアイネにイヤらしい微笑みを見せる。

アイネはそんな男に笑みにまた私にしがみついてきた。

「まぁ、安心しな。俺も今じゃまともな仕事で金を稼いでる。その事に関しちゃ今回の連続誘拐事件にゃ感謝しなきゃならねーな。なんせ俺を立派な社会人に復帰させてくれるきっかけをくれたんだからよ」

男はさぞ嬉しそうにゲラゲラ笑いながら先程と同じ点滅している街灯の所に腰を降ろす。

ブハブハと煙を周りに吐き散らしながら私達を見つめてくる。

「立派? 馬鹿言えクズが。まぁ、アンタがどんな奴かなんて興味は無いんだ。で、何か知ってるのか」

「あぁ知ってるとも。ただ、無料で情報を教える程俺はまだまともな人間じゃねーぞ? お嬢さん」

そんな事を言い出すと思ってた。

どうりでさっきから私の身体を舐めまわす様に見ている訳だ。



/続く



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勿論、老人も狙うと言った事ならあの婆さんにも付き添わないといけないわけだが。

「ねぇ、ライトってお年寄り嫌いなの?」

と、唐突にアイネはそんな質問を投げかけてきた。

「……何でそう思うんだ」

「だって、何かあのお婆さんに聞き込みしてた時すごくイライラしてたし」

「……」

そんなにイライラしていただろうか。

あまり自覚はないのだが。

「別に嫌いって訳じゃない。かと言って好きって訳でもないけど」

「普通って事?」

私は頷きながら暗闇の道を歩く。

ナイトタウン、その名の通りの夜の街。

この街には街灯や店の灯り以外の、光を差す物が存在しない。

中には明るくて歩きやすい道もあれば、暗すぎて歩く事すら不可能な道までもあるらしい。

恐らく、連続誘拐事件の犯人が隠れている可能性があるとしたら。

「ら、ライト? もしかしてこの道に入るとか言わないよね?」

路地裏への入口を前に身体を少し震わせながらアイネが私にしがみついてきた。

「こ、ここ灯りも無いし……痴漢とか居るかもしれないよ?」

「痴漢か、そいつらにも話を聞いても悪くないかもな」

「じ、冗談でしょ!! もしかしたらおっかないおじさんとかも居るかもしれないし……」

私はアイネの腕を振りほどき、路地裏へと入っていく。

「ライト……くぅ~」

アイネは周りを警戒しながら私の後に付いてくる。

賑やかに商店街と違い、路地裏には私達の足音が響きわたる。

ゴミ箱を漁る野良猫が私達に気づいたんか、早々に何処かへと去っていった。

後ろから付いてくるアイネが私のコートを掴んでいるのが分かる。

しばらく歩くと点滅している街灯が目に入った。

私は一旦足を止める。

「え、ライト? どうかしたの」

アイネに静かにしろとジョスチャーし、点滅している街灯のしてに座り込んでいる男を睨みつける。

ナイトタウンの住民は誰もが豪華な格好、服装をしているのに対して、この男は地味な服装だ。

私は座り込んでいる男にゆっくりと近づいていく。

近くまで寄ると、男は私の方へと顔を向けた。

歳は三十代後半と言った所だろうか。

「何だ、女」

初対面の相手に随分なご挨拶だな。

まあ、初対面の女に意味不明な事を言ったツンツン頭の男も居るが。



/続く



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