Beyond Despair -31ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

もしアヴェンジャーが人工的に何者かに作られた存在であるとしたら……。

無意識に歯を食いしばる。

そんなふざけた事している奴は誰なのか。

殺意がこみ上げてくるのが分かる。

私は大きな足音を立てながら路地裏を進み続ける。

後ろからアイネが何か呟きながら付いてきているが、何を言っているのか聞き取れない。

そして、しばらく歩いていると。

点滅している街灯に照らされた十字路が見えてきた。

私は十字路の真ん中で立ち止まり、左右に視線を向ける。

左に進めば明るい表通りに出る事が出来る。

真っ直ぐ進んでも同じだ。

右に進めばまた暗闇の世界。

あの男、よくまぁこんな暗闇で女を狙ってたもんだ。

その根性に少し感心してしまう。

私は右の道に顔を向ける。

今まで通って来た道よりも暗い感じがした。

もしかしたら街灯もないかもしれないな。

「ライト……もう路地裏捜索はやめようよ~」

「怖いなら帰っても良いぞ」

私はそう言い放つとアイネを置いて右の道に進む。

「ちょ! 待ってよ~」

今にも泣き出しそうな声でアイネは私の後を追ってきた。

しばらく進むと完全に暗闇の世界にでも来たのかと思うくらいの暗さになった。

ここの路地裏は外の音が聞こえて来ないのか、私達の足音しか聞こえてこない。

私は辺りに警戒しながら黙々と先に進む。

そう言えば、右に曲がった所のどの辺りが犯行現場か聞くことを忘れてしまっていた。

「まぁ、ここまで来たら自分で探すけどな」

私は一人、そんな事を呟いた。

と、その時だった――。

どこからか変な鳴き声が聞こえてくる。

「何……何の声ッ!」

騒ぐアイネの口を手で押さえつける。

私はじっとして鳴き声がどこから聞こえて来ているのかを聞き取る。

「……猫の鳴き声?」

ニャーニャー、と言う猫の鳴き声はこの道の先から聞こえて来ているようだった。

アイネの口から手を離し、私は猫の鳴き声のする方へと向かっていく。

「え? なになに猫さん?」

さっきの態度とは一変しアイネは明るいテンションで私の後を付いてくる。 

そう言えばアイネは犬や猫が好きだったな。

そんな事を思い返している内に、また点滅している街灯が目に入る。

その点滅している街灯が差している灯りの所に数匹の猫が屯っていた。

ニャーニャー鳴きながら、何かを皆で囲んで食べているようだ。

「野良猫か……」

私はホッとため息をこぼす。

アイネは数匹の猫を前に目を輝かせていた。

「うっわ~、野良でも猫は可愛いね~」

「そうだな」

さっきまでの緊張が解けた反動か、アイネはやけにテンションが高い。

しゃがみ込んで猫達を見つめる。


/続く



にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!  

「ま、俺が知ってるのはこれだけだ。しかし騎士団に言わなくて良かったぜ、おかげでいい小遣い稼ぎが出来た」

男はそう言いながら立ち上がり、タバコを地面に投げ捨てる。

そしてそのまま暗闇の奥へと歩いて行く。

「待てッ! その女は最後どうなったッ!」

「そのまま溶けるように目の前からいなくなっちまったよ。因みに、この先の十字路を右に曲がった所だぜ」

男は振り向かずに、手を振りながら私達の前から去っていった。

私は呆然の先に広がる暗闇を見つめる。

男の予想外の言葉。

もし仮に誘拐犯がアヴェンジャーと関係しているとしたら。

「いや、でもそんな事有り得るのか……?」

エリックは誘拐犯とアヴェンジャーが関係している事はしらないふうだった。

でも本当にアヴェンジャーが誘拐犯と関係していると言う仮説が正しかったら。

「裏で、何かを企んでいる組織がある……?」

自然的災害の様な存在であるアヴェンジャーが、実は人工的災害存在だったって言うのか?

頭が混乱してくる。

「ライト、大丈夫? 顔色が悪いけど」

「あぁ……大丈夫だ」

心配しているアイネに私はそう返事をする。

目の前に広がる暗闇、この先に行った所にある十字路を右に曲がった所が男が誘拐犯を目撃した現場。

私はゆっくりと暗闇の路地裏を進む。

「えぇ!? まだ行くの? もう帰ろうよライト~」

アイネは先に行く私にそう唸る。

けど私はそんな怖がっているアイネに構っている程の余裕が無かった。

いや、正確には無くなったかな。



/続く



にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!  

「それで、いくらだ」

私がそう言うと男は深くため息をして座り込んだ。

そして手をヒラヒラさせながら首を左右に振る。

「何だ、いらなくなったか?」

「いいや、貰うさ。そだな、十五万でどうだ」

私は言われた額の金を財布から取り出し男に渡す。

男は丁寧に一枚一枚、札をペラペラと捲っていく。

「……よし、十五枚あるな。良いぜ、話してやるよ」

男は数え終えた札をポケットにしまい込んだ。

「そうだな、ありゃー一ヶ月前のこった。いつもみたいに暗闇で通り過ぎる女を待ってた時だ。時間は午後の四時くらいだったか」

男はタバコを地面に捨てると、足でグリグリ踏み潰す。

「この裏路地でロックオンしてた女を尾行してたんだがな、そしたら急にその女の前に妙な人影が現れてな。女は何か話してたみたいだったが俺が居た所からじゃなんも聞こえなくてな」

「その妙な人影って言うのは、男か? 女か?」

「男に間違いねーだろうさ。でもな、そっから引っかかるもんがあってな」

すると先程までヘラヘラしていた男の表情が変わった。

「なんかよ、その男の後ろにグニャグニヤした影が見えた気がすんだよなぁ」

「グニャグニャ?」

「あぁ、まるで生きている何かみたいな。かと言って何なのか分からねーんだけどな」

グニャグニャした、生きている何か?

「んで、そのグニャグニャした影から時々赤い光が見えてな。もしかすっと、この連続誘拐事件の犯人は獣使いか何かかもしれねーぞ」

男は冗談めかしに笑いながら新しいタバコに火を灯す。

吐いた煙が暗闇の空へと浮いていく。

「獣使い……いや、でも」

男の些細な発言に私は真剣に考え込んでいた。

グニャグニヤした生き物、赤い光……。

まさか、今回のこの事件は……。

「アヴェンジャーが関わっている?」

私が呟くと男は得意げな笑みを浮かべた。

けど、もしこの仮説が真実なら。

アヴェンジャーは何者かに従っている存在と言うことなのだろうか。


/続く

にほんブログ村 小説ブログ ライトノベルへ
よければクリック!