Beyond Despair -3ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「……あぁ、そうだよ。お前のせいで全部メチャクチャだぜ。ホントは今日ここに来たのは俺を励まそうって言う火野川達の計画だったってのによ」

「……ごめん」

「ホントは弱っちーくせに強がってよ、良い迷惑だぜホントに。お前に会ってからと言うもの、不幸な目にあいまくってんのは気のせいですか?」

「……ごめん」

「おかげで、アスナちゃんのエロエロ同人OVA買いそこねるは、エロ同人誌買いそこねるは、PCのパーツ買いそこねるは、どうしてくれんだよッ!!」

「……ごめ、って……それ私は関係ないだろ」

やっと顔を上げ、ライトは俺をジド目で睨みつけてきた。

俺はそんな彼女を見つめながら思わず微笑んでしまう。

「……後で、ちゃんと皆に謝っておけよな。火野川はともかく、エレナや坂口、龍二にはよ」

俺がそう言うとライトはコクりと頷いた。

そして目に溜まる涙を拭う。

そんな彼女を俺はじっと見つめる。

「――お前は、一人じゃねぇからな」

「――え?」

と、俺は無意識にライトにそう呟いた。

するとライトはまるでリスが驚いた時の様な表情で俺を見つめてくる。

「どう言う意味だ、それ……」

「えー、っとだな。そのー」

頭をかきながら俺は口ごもる。

ってか、何で俺こんな事言ったんだ?

頭が混乱してきた……どうする。

てかここで「どう言う意味だ」って聞いてくるライトもどうかと思うぞ!

クソ! そこは普通ありがとうとかだろうが!

何とか頭を猛回転させる、と――。

ドスン、と何かが俺の肩に寄りかかってきた。

顔を向けるとそこには気持ちよさそうな寝息を立てるライトの姿。

赤く染まった彼女のふんわりした髪が俺の頬を優しく撫でる。

「って、質問しといて寝るなよ……」

そう愚痴をこぼしてもライトはうんともすんとも言わない。

もう完璧に寝てやがる。

と、彼女の左手が俺の右手に重なってきた。

そして、ライトは眠りながら俺の右手を優しく握ってくる。

「……あぁ、俺って狂ってるのかもな」

そんな彼女の手を俺も優しく握り返す。

今なら、何となく分かる。

何で俺が無意識にライトにあんな事を言ったのか。

俺はもう一度窓から外の風景を見つめる。

そして小さく――。

「俺……コイツに惚れちまったんだ……」

そう、誰にも聞こえない声で呟いた。


                   2119年 四月十一日   


    第二章/友達の絆 /完/




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「君達には後日、今回の件について話を聞こうと思う。それまでゆっくりと身体を休めたまえ」

エリックが俺の肩を軽く叩くと、そのまま自分達専用の車へと乗り込んでいった。

そしてそのまま、エリック達が乗った車は静かに走り出した。

「おい、坊主! 早く乗れ!!」

と、ライト達が乗る車の運転席から顔を出すタバコを加えた男。

「ノコノコしてっと置いてくぞ!」

「は、はいッ!」

その言葉に俺は走って車へと乗り込む。

俺が座席に着く事を確認すると、運転席に座る男はエンジンをかけた。

そしてエリック達が乗る車を追うかのように走り出す。

俺は呆然と窓から外を見つめた。

今だ消えない炎に勇敢に立ち向かっていく消防隊員達。

そんな彼らをざわざわと野次馬達が見つめている。

「大丈夫か?」

「ん? あぁ、平気だって」

窓からライトに顔を向けて、俺はそう彼女に答える。

この車の中で眠っていないのは俺とライトだけのようだった。

運転席に座ってタバコをブハブハ吸っている奴を除いては。

「……ごめん」

「ん?」

と、唐突にライトがうつむきながら謝ってきた。

気のせいか、頬を伝って涙が流れている様にも見える。

いや、気のせいじゃない。

コイツは今、確実に泣いている。

身体を震わせながら、本当に申し訳なさそうに。

「……お前」

「ただでさ、お前の日常を壊しただけでも……最低なのに、それどころか……私は……お前らを見捨てようとした。それだけじゃない……お前だけじゃなく、ここに居る奴ら全員の……」

日常を壊した、と彼女は呟いた。

口元に手をあてながら、涙を流すライト。

その涙を見て、俺はある事を確信した。

どうして、初めてコイツを見た時に……強がっている様に見えたのか。

きっと、どこかで無意識に、感じ取ったんだろう。 

〝コイツは、弱い人間〟って事に。

弱い癖に、強がって、全てを拒絶する大馬鹿野郎だ。




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燃え上がる炎の方をじっと見つめる。

周りは野次馬達で騒がしくなっていた。

「……どうなってんだろな」

ここまで勢いで来たものの、今日の出来事は信じられない事ばかりだ。

当たり前の様にアヴェンジャーとまた遭遇するし、今度は完璧に人の姿をした奴まで現れやがった。

もううんざりだ、と言いたい気分マックスである。

そもそも今日このエリアに来たのは俺を元気づける為って事だった訳だが。

「とんだプレゼントだぞ……」

ため息をしながら車の方へと身体を向ける。

火野川やエレナ、坂口や極道達は疲れきって眠っているようだ。

「どうしたのだね、早く乗りたまえ」

と、声のした方へと顔を向ける。

そこには白い軍服を身にまとった男が一人。

「言われなくてもそうするっての」

俺はエリックと言う軍人を横切り、ライト達が乗る車へと向かっていく。

その時――。

「神崎……なるほど、君が〝出来損ない〟と言われている少年か」

「ッ!?」

反射的に俺は振り向く。

口元を歪ませながらエリックは俺をじっと見つめてきた。

「君の家の話なら聞いているよ。特に姉上の話はね」

「………」

まぁ、そうだろうな。

姉貴はいろいろと有名人だし。

新都市はともかく、旧都市では姉貴を知らない奴なんて一人も居ないしな。

「そうかよ、だからどうしたってんだ? アンタも出来損ないの落ちこぼれって笑うか?」

「いいや、そんな事はしないさ。ただ、噂を耳にしたのでね。神崎家の出来損ないが新都市に居ると」

「んだよ、笑ってんじゃねーか」

舌打ちをしながら俺はエリックを睨みつける。

どうも俺はこの男を好きになれない。

いつでも余裕の笑みを浮かべ、裏では何を考えているか分からない野郎だ。

ライトの事も、彼女の事情を良いように利用して駒として使ってやがる。

「すまんね、しかし君も大変だな。姉上が出来すぎているが故に、君の立場は重くなっていく。新都市に来たのは、それが理由かね?」

「テメーに答える義理はねーよ」

いい加減コイツとの会話も飽きてきた。

俺はエリックに背中を向ける。

と、コチラを見つめているライトと視線が合った。

「……はぁ」

ため息を吐く俺をライトはじっと見つめてくる。

そういや今日はアイツとよく話したよな。

昨日と比べると少しは友達になれた、ような気もしないでもない。

まぁ、その分いろいろやばい目にもあったけどな。

それだけじゃない、俺意外の奴らも……。

今日で、当たり前だった日常が終わったんだ。

坂口も、アニメやゲームばかりしていた日常が。

龍二も、朝かた夜まで喧嘩していた日常が。

エレナも、いつまでもニッコリと笑っていた日常が。

火野川も、勉強して生徒会長としてたくましく生きていた日常が。

そのどれもが、今日――。

全て崩れ、壊れてしまったんだ。

俺は自分の右手を持ち上げ、拳を握る。

相変わらずの無力さだったよ。

何度かライトの事は助けられたけど、それだけだ。

助けるだけで、守る事は出来ない。

「情けねぇよな……チクショウ」

エリックの言う通りだ、俺は姉貴と違って出来損ないだ。

誰かを守る事すら出来ない、無力な人間。

せもて火野川みたいに魔術さえ使えれば良かったが、その源となる魔力すら無い。

「……おい、お人好し」

と、車の中からライトが声をかけてきた。

その声から彼女が不機嫌だと言うのが何となく分かる。

俺は顔を上げ、ライトを見つめた。

「……早く、乗れよ」

プイ、と顔を俺から背けるライト。

どうやら早く帰りたいらしい。

ライトは座っている座席から一つずれる。

どうやらここに座れ、と言う事らしい。




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