Beyond Despair -4ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「大佐、今は彼らを安全な場所に」

考え込むエリックにエリーカが凛とした声でそう言った。

「そうだな……。では君たち、乗りたまえ」

エリックはエレナが眠っている車を指さす。

どうやらアレに乗れ、と言うことらしい。

しかし生憎、私はまだ本調子ではないらしい。

まだ自力で立つ力すら無いのだ。

「ライト、立てる?」

「いや……少し肩を借りたい」

了解、とアイネが笑顔で答えてくれる。

私はアイネの肩に腕を回すと、そのままゆっくりと立ち上がる。

すると、騎士団の車のドアが開いた。

そして中からコチラに急いで向かってくる女子生徒が一人。

火野川愛花である。

愛花はエリックを横切ると私の元へとやってきた。

「肩、私も貸す?」

「いや、アイネが居るから大丈夫だ」

私がそう言うと愛花はそう、と頷いた。

そう言えば、エリックに私が自分達を置き去りにした事は言っていないのだろうか。

愛花から話は聞いたと言っていたけど。

「……愛花、お前……エリックに」

言わなかったのか、と言いかけて愛花に人差し指で口止めされる。

「今はその話はいいの。だからアンタも今は自分の身体の事を考えなさい」

ウィンクしながら愛花は小声でそう言った。

ついつい笑ってしまう。

「さ、早く乗りましょ」

愛花はそう言いながら先行し、騎士団の車に戻って行く。

私とアイネも後に続き、車へと向かった。

車の中には疲れきったのか、すやすやと眠っている奴らが三人。

一人は坂口弥、一人は極道龍二、一人は……今回一番被害にあったエレナ。

坂口と極道は疲れきった表情だが、エレナだけ精神的に疲れた表情で眠っていた。

愛花は一度、そんなエレナの頭を優しく撫でると車の座席に腰を下ろす。

「ライト、座るよ?」

アイネはそう言いながらゆっくり私を座席に座らせる。

そして隣によっこらしょ、とアイネも腰を下ろす。

ふと、私はまだ車に乗っていない護に視線を向けた。

護は呆然と炎が舞い上がる方をじっと見つめている。

その背中からは、どこか儚さを感じられた。



/続く



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「無様だな、ライト・クライス」

低く、冷たい声でエリックが呟く。

けど、正直無様と言われても何の感情も浮かばなかった。

というか、自分でも分かっている事だからかな。

「愛花と言う少女から話は聞いた。今回はご苦労だった、と言いたい所だが……」

エリックは視線を騎士団の車の中で眠っているエレナに向ける。

「君は無関係な人間を被害にあわせた。それどころか協力までしてもらうとわな。君一人では対処出来ない程の物だったのかね?」

「………」

私は何も答えず、ただ黙ってエリックの言葉を聞く。

と、隣に居た護が立ち上がりエリックを睨みつけた。

「テメー……何様だ。ライトが何でこうなったと思ってんだよ。全部テメーがコイツに押し付けてるからだろうが!!」

怒鳴りながら護はエリックの襟元を掴む。

「頂点に立つ野郎が何子供任せにしてんだよッ! ライトはテメーらの道具じゃねーんだぞッ!!」

護の行動にエリーカが腰に付けた剣を抜こうとする、が。

エリックの制止によりエリーカの動作を止めた。

「君は確か、昨日公園に居た少年かね?」

涼しい目で護を見つめるエリック。

「どうやら立場が逆転しているようだな、赤毛犬。昨日は彼が今の君の様になっていたのに」

口元を歪ませるエリック。

だけど、言われてみればそうかもしれない。

コイツは昨日と違ってアヴェンジャーが目の前に居ても怯える事すらしなかった。

それどころか仲間の為、と言う感情だけで突っ込んで行っていたっけ。

「君、名は何と言うのかな?」

襟元を掴む護の手を払いのけながらエリックはそう言った。

護はエリックを真っ直ぐな目で睨みつけながら――。

「神崎護……」

とハッキリと呟く。

するとエリックは目を大きく見開いた。

「――神崎、だと?」

「――大佐、では彼は……」

意味ありげな表情でエリーカがエリックに耳打ちする。

エリックは頷きながら再び護に顔を向けた。

「一つ確認したい。君は神崎家の者で間違いないな?」

「当たり前だろうが」

「ならもう一つ確認だ。君の実家は新都市ではなく、旧都市にあるのか?」

旧都市? その単語は初耳だ。

「だったら何だってんだよ」

護はエリックを睨みつけながら答える。

と、エリックは「これはまた……」とため息をつきながら呟いた。



/続く





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表通りに出ると人だかりが出来ていた。

恐らく愛花の出した炎が原因だろう。

道のあちこちには消防車が止まり、中からホースを持った隊員達が一斉に炎の方へと向かって行った。

「……」

私はただ黙って壁に背を任せ、座りながらその光景を見つめる。

身体は何とか動かせるようにはなってきた。

それでも何もしていないのに息が乱れてしまう。

「……大丈夫か?」

隣に座る護が声をかけてきた。

表通りに出るまで、私はコイツに背負われていたのだ。

「あぁ……良くなってきたよ」

息の乱れも徐々に治まってきている。

私は足元に視線を向けながら息を吐いた。

と、二つの人影が私の目の前に広がってくる。

顔を上げるとそこには白い軍服を着たエリックとエリーカが立っていた。

彼はただじっと私を見つめてくる。

「―――」

私は何も言わずにエリックから顔を逸らす。

その瞬間、誰かが物凄い勢いで抱き着いてきた。

「ちょっ、誰だッ!?」

「らぁぁぁいいいいとぉぉぉぉぉおぉ!!!」

左腕に頬擦りしているのは紛れも無くアイネだった。

引きはがしたい所だが、生憎まだ力が出ない。

アイナは何回か頬擦りすると、私に顔を向けてきた。

両目に大粒の涙が溜まっている。

今にも泣き出しそうな表情だ。

「ライト……ライト……よかった、よかったよ~」

ムギュ、と首に手を回して抱きついてくるアイネ。

そう言えばコイツとは別行動して以降、連絡がつかなかったのだっけ。

私に何かあったのかと思って心配していたのだろうか。

泣きじゃくるアイネの頭を優しく撫でる。

「悪いな、心配させて。もう大丈夫だから……」

「ごめん、ごめんねぇ……うぅ、ライト~」

「ところで、お前がコイツらを呼んできたのか?」

抱きつくアイネに私はそう声を掛ける。

するとアイネは顔を上げると、頷いた。

と、エリックが深々とため息をこぼす。



/続く




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