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Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「ライト、ぼさっとしてないで早く!」

エレナを背負った愛花が私を横切り、暗い一本道に歩いていく。

ここのマンションに入るには、この一本道を通らないと行けない仕組みになっているのだ。

他の道はないので、この一本道が塞がれたらここから出ることは出来ないのである。

だからこんなにも見た目が豪華なマンションでもすぐに廃墟と化してしまったのだろう。

愛花に続き、坂口、極道も暗い一本道へと向かっていく。

私も続き、歩き出そうとした、その瞬間。

「――ッ!」

激しい目眩に襲われ、その場に膝をついてしまう。

熱気が原因だろうか、それとも疲労のせいだろうか。

身体が全然動かない。

「ライト!」

愛花の声が聞こえてくる。

何とか声のする方へと視線を向けるも視界がボヤけていた。

身体の力が抜けていくのが分かる。

そのまま私は地面に倒れ込みそうになり――。

「ライトッ!!」

瞬間、どっかのお人好しに支えられた。

「おい、しっかりしろッ!」

肩を揺さぶられ、視界がだんだんとハッキリしてくる。

目の前にはツンツン頭の男子生徒。

彼は私を心配そうな表情で見つめていた。

「――お前……」

「掴まってろ、良いな?」

「――え?」

と、護はいきなり弱る私を背負ってきた。

抵抗しようとするも身体が全然言うことを聞かない。

そのため、私はコイツのなすがままにされていた。

「何だよ、お前軽すぎじゃねーか?」

私を背負った護がそんな事を口にする。

「……軽い方が、お前には都合が良いんじゃないのか」

「そうだけどさ、けどいくらなんでも軽すぎるぞ。ちゃんと飯食ってんのかよ……」

そんな事を言いながら護は愛花達の方へと足を運ぶ。

周りに燃え上がる炎は激しさを増し、熱風も先程の物とは比べ物にならない程だった。

廃墟と化したマンションにも火が移り、全階が赤く燃えているのが分かる。

そして、一人――駐車場に取り残された男の死体。

護に背負われながら私はその死体を見つめたまま、その場を後にした。



/続く



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人の形をした奴なら何匹も殺してきた。

けど、完璧に人の姿をした奴を殺したのはこれが始めてだった。

私の目の前には額から血をダラリと流す男が一人。

悲鳴は上げず、男はただ私をじっと見つめている。

「遺言はあるか、復讐者」

見つめる男にそう声をかける。

すると男は口元を歪ませると――。

「アンタは、いつか苦しむ事になる……」

弱々しい声でそう言ってきた。

「苦しみなら今でも反吐が出る程味わってるよ」

「ちげーよ……アンタが出した答えの事だ。〝人〟として生きるとアンタは言った……だがな」

男は手に持った蛇腹剣を捨てると、私の頬に触れてきた。

まるで、我が子を心配する親のような優しい触り方。

「アンタは、まだ間違ったままなんだよ。今のアンタを見て確信したぜ……そのまま行けば、アンタは……いつか、取り返しのつかない事になる……」

その言葉を最後に、目の前の男の目は虚ろな物になる。

そして、力が抜けた様に私の目の前に崩れる様に倒れ込んだ。

今度の感触はさっきとは違う。

コイツは確実に、命を落としたのだ。

男は目を開けたまま、その生命活動を停止した。

「――やった、の……?」

後ろから愛花の声が聞こえてくる。

私は答えず、ただ頷いた。

目の前に倒れる男を見つめる。

息はもうしていないようだった。

と、遠くの方から何やらサイレンらしき物が聞こえてくる。

その音はだんだんとコチラに近づいて来ているようだった。

「って、やば! 早くここから出ないと!!」

慌ただしい愛花の言葉が駐車場に響く。

なるほど、この炎を見て警察やら消防隊が駆けつけてきているって訳か。

ナイトタウンはどこも暗闇で覆われている。

そんな街にここまで派手な明かりは存在しないのだ。

だから一目で大火事だと分かるのだろう。



/続く




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「―――」

言葉を失うグリード。

アヴェンジャーである彼にとっても今目の前にいる少女は異常に見えてしまうのだ。

と、そんな事を思っている瞬間だった。

「あ、がぁあッ!!」

グリードの頭部に激痛が走る。

腹にはライトが右手で握っているグレートソードが突き刺さっていた。

血液が逆流し、口から血を吐き出すグリード。

そんなグリードをライトは笑みを崩さずに見つめる。

「――さぁ、殺し合いを始めようぜ……復讐者」

ライトは嬉しそうにそうグリードに囁く。

同時にライトはグリードからグレートソードを素早く引き抜くと、今度は横にグリードの腹部を斬り付けた。

赤い血がライトの赤色のシャツに付着する。

「あ、がぁあぁあぁッ!!!!!」

甲高い悲鳴を上げながらライトから飛び引くグリード。

暗闇でなら彼は恐らく今作った傷口すらも完治させていただろう。

しかし今やこの駐車場は火野川愛花と言う一人の魔術師の手により炎の世界と化している。

闇は灼熱の炎に照らされ、グリードを守護する事はない。

「弱体化されても困るんだ、楽しみが無くなるだろうが」

グレートソードを担ぎながらライトは呟く。

そんな彼女を睨みつけながらグリードは舌打ちをする。

傷は治らず、今なおライトによって作られた傷口からは真っ赤な血が流れ出ている。

「やっと見つけたんだからさ……もう少し楽しませろよ、アヴェンジャー」

フラフラした足取りでライトはグリードへと近づいていく。

そして担いでいたグレートソードを投げ捨てると、今度は一本のナイフを作り出した。

「お前が黒幕だとかはどうでも良いんだ、今はただ――」

お前を殺したい、とライトは殺意混じりの声音で呟いた。

そして彼女はナイフを逆手に、グリードへと一気に間合いを詰める。

今の彼女には、もはや殺意意外の感情など存在しない。

ただ、目の前の相手を殺す、ただそれだけ。

憎しみ、恨み、殺意、喜び、その全てが今のライトの心だった。

――弟を殺した憎い相手。

――自分の日常を奪った相手への恨み。

――皆殺しにするという、殺意。

――ようやく、殺す相手に会えた喜び。

それが今の彼女の全てだった。

詰め寄るライトにグリードは手に持つ蛇腹剣を伸ばす。

が――。

ワイヤーの様に伸びた蛇腹剣をライトは高い跳躍でかわす。

下手したらこのマンションの五階辺りまで跳ねたのではないか。

「コッノ野郎ッ!!! デタラメもいい加減にしやがれぇ!!!!」

思い通りに行かない事に怒りを爆発させたグリードが大声を上げる。

有り得ない、有り得ない、こんな事有り得ないと、グリードは何ども自身に言い聞かせる。

そんな彼を跳躍しているライトは蒼い瞳でじっと見つめた。

グリードは素早く水平に伸びた蛇腹剣を空中に舞うライトに向ける。

刃の着いたワイヤーがジャランと鉄の擦れる甲高い音を立てながら宙を舞う赤い少女を削り殺そうと伸びていく。

ライトは自身に伸びる刃に一瞬視線を向けると――。

「お前の手品は見飽きたよ」

と、逆手に持ったナイフで伸びる蛇腹剣を弾き返した。

そしてそのまま自分を見上げるグリードの方へと落下して行く。

グリードは弾かれた蛇腹剣を必死に元に戻そうとするも、既に遅かった。

ライトはナイフを両手で掴み、そのまま地面に着地する瞬間――。

グリードの額にナイフを深々と突き刺した。



/続く




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