「追い出されたって、何だ……」
「そのままの意味です。彼らは事件のあった夜、学生寮に戻りました。ですが、彼らの仲間内である神楽咲エレナが誘拐されたのが知れると、周りの学生達から出て行けと言われたそうです」
「そんな……それだけで何でッ!」
何故か、私はエリーカに怒鳴りつけていた。
胸がムカムカして仕方ない。
無関係で、どうとも思っていない奴らの事なのに。
「どこからか、連続誘拐事件の犯人がアヴェンジャーと関係していると言う情報が漏れたのだそうです。それを聞いた学生達が誘拐犯から逃れた神楽咲エレナを追い出したんだとか」
「逃れたからって、何でそこで追い出す事になるッ!!」
「……〝彼女が居たら、また化け物達が来る。そしてら自分達も殺される〟と、そう言われたらしいですよ?」
その言葉に私は固まってしまった。
被さる毛布を力強く握りしめる。
「……さすが、人間らしいよ」
憎しみがこもった声でそう呟く。
あぁ、本当に人間らしい。
邪魔、迷惑、ウザイと思った奴をとことんなまでに叩き潰す。
今の社会にも言える事だが。
と、エリーカは窓際から病室のドアの方へと向かっていく。
そして直前で立ち止まり、顔だけを私に向けた。
「そろそろ彼らの取り調べが終わる頃でしょう。貴方が目を覚ましたと伝えてきます。心配していましたから、得にあの〝少年〟が」
そう言い残すと、エリーカは静かに病室を後にした。
〝少年〟……きっとあのバカの事だろうけど。
「……追い出されたくせに、心配する程の心の余裕でもあるのか」
ため息をつきながら私は再び身体を倒す。
天井に右手を伸ばし、手の平を広げる。
何だか、あのバカの話を少し聞いただけでさっきまでの怒りが何処かへいってしまった。
ふと、何か引っ掛かる。
アイツの事で……何かモヤモヤしている自分がいるのだ。
「……あ、そうだった」
思い出した、車の中での護との会話。
あの時、どうしてか悲しくなって、アイツの前で思いっきり泣きじゃくったのだっけ。
しかも何度も謝りながら。
……死にたくなる気持ちで一杯だ。
顔が熱くなる。
私は伸ばした腕を腹部に乗せると、そのままため息をついた。
「……何だってあんなに弱気になったんだ私は。と言うか……アイツ」
誰にも、私が泣いた事を言っていないだろうな?
愛花ならまだしも、他の男共に言われたら絶望的だ。
一刻も早く口止めしなくては。
私はベッドから身体を起し、ブーツを履く。
と、病室のドアからコンコンとノックする音が聞こえてきた。
そしてしばらくしてから「ライト、起きてる?」と言う声。
その声から彼女、火野川愛花の声だと言う事が分かる。
私はあぁ、と軽く返事をする。
すると愛花は静かにドアをガチャリと開けると、病室に入ってきた。
「良かった……元気そうね」
「どうだろうな……丸二日間眠っていたって聞かされた時は驚いたが」
「それくらい疲れてたって事じゃないの?」
苦笑いしながら開いたドアを静かに閉めると愛花はコチラに近づいてくる。
そして先程エリーカが座っていたパイプ椅子に腰を降ろした。
「さぁ、どうだか」
うつむきながら私はそう呟いた。
そしてしばらく沈黙の空気が流れる。
少々気まずい感じだ。
と言っても無理もない、なんせ愛花達はあの学生寮を追い出されてしまったのだ。
言うなれば行き先が無い、といったところだ。
「――ごめん、気遣わせちゃって」
不意に、愛花がそんな言葉を口にした。
「気遣う?」
「エリーカさんから聞いたでしょ? 私達が……学生寮から追い出されちゃったって話」
私は何も言わずに、ただ頷いた。
愛花は心配させないためにか、笑っている。
……本当は、そんな笑顔作れる程の余裕なんて無いくせに。
よく見れば小刻みに身体が震えているのが分かる。
/続く