Beyond Despair -2ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「追い出されたって、何だ……」

「そのままの意味です。彼らは事件のあった夜、学生寮に戻りました。ですが、彼らの仲間内である神楽咲エレナが誘拐されたのが知れると、周りの学生達から出て行けと言われたそうです」

「そんな……それだけで何でッ!」

何故か、私はエリーカに怒鳴りつけていた。

胸がムカムカして仕方ない。

無関係で、どうとも思っていない奴らの事なのに。

「どこからか、連続誘拐事件の犯人がアヴェンジャーと関係していると言う情報が漏れたのだそうです。それを聞いた学生達が誘拐犯から逃れた神楽咲エレナを追い出したんだとか」

「逃れたからって、何でそこで追い出す事になるッ!!」

「……〝彼女が居たら、また化け物達が来る。そしてら自分達も殺される〟と、そう言われたらしいですよ?」

その言葉に私は固まってしまった。

被さる毛布を力強く握りしめる。

「……さすが、人間らしいよ」

憎しみがこもった声でそう呟く。

あぁ、本当に人間らしい。

邪魔、迷惑、ウザイと思った奴をとことんなまでに叩き潰す。

今の社会にも言える事だが。

と、エリーカは窓際から病室のドアの方へと向かっていく。

そして直前で立ち止まり、顔だけを私に向けた。

「そろそろ彼らの取り調べが終わる頃でしょう。貴方が目を覚ましたと伝えてきます。心配していましたから、得にあの〝少年〟が」

そう言い残すと、エリーカは静かに病室を後にした。

 〝少年〟……きっとあのバカの事だろうけど。

「……追い出されたくせに、心配する程の心の余裕でもあるのか」

ため息をつきながら私は再び身体を倒す。

天井に右手を伸ばし、手の平を広げる。

何だか、あのバカの話を少し聞いただけでさっきまでの怒りが何処かへいってしまった。

ふと、何か引っ掛かる。

アイツの事で……何かモヤモヤしている自分がいるのだ。

「……あ、そうだった」

思い出した、車の中での護との会話。

あの時、どうしてか悲しくなって、アイツの前で思いっきり泣きじゃくったのだっけ。 

しかも何度も謝りながら。

……死にたくなる気持ちで一杯だ。

顔が熱くなる。

私は伸ばした腕を腹部に乗せると、そのままため息をついた。

「……何だってあんなに弱気になったんだ私は。と言うか……アイツ」

誰にも、私が泣いた事を言っていないだろうな?

愛花ならまだしも、他の男共に言われたら絶望的だ。

一刻も早く口止めしなくては。

私はベッドから身体を起し、ブーツを履く。

と、病室のドアからコンコンとノックする音が聞こえてきた。

そしてしばらくしてから「ライト、起きてる?」と言う声。

その声から彼女、火野川愛花の声だと言う事が分かる。

私はあぁ、と軽く返事をする。

すると愛花は静かにドアをガチャリと開けると、病室に入ってきた。

「良かった……元気そうね」

「どうだろうな……丸二日間眠っていたって聞かされた時は驚いたが」

「それくらい疲れてたって事じゃないの?」

苦笑いしながら開いたドアを静かに閉めると愛花はコチラに近づいてくる。

そして先程エリーカが座っていたパイプ椅子に腰を降ろした。

「さぁ、どうだか」

うつむきながら私はそう呟いた。

そしてしばらく沈黙の空気が流れる。

少々気まずい感じだ。

と言っても無理もない、なんせ愛花達はあの学生寮を追い出されてしまったのだ。

言うなれば行き先が無い、といったところだ。

「――ごめん、気遣わせちゃって」

不意に、愛花がそんな言葉を口にした。

「気遣う?」

「エリーカさんから聞いたでしょ? 私達が……学生寮から追い出されちゃったって話」

私は何も言わずに、ただ頷いた。

愛花は心配させないためにか、笑っている。

……本当は、そんな笑顔作れる程の余裕なんて無いくせに。

よく見れば小刻みに身体が震えているのが分かる。



/続く




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「ん……」

ふんわりした感触。 

どうやら私はベッドの上に居るらしい。

目を開けると、見覚えのない天井。

あの学生寮とは違う感じ。

私はゆっくり身体を起すと、周りを見渡した。

「ここ……は、どこだ?」

頭の中がまだ上手く働いてくれない。

そもそも何で私はこんな見覚えのない部屋で眠っているのだろう。

額に手をあて、記憶を巡る。

そう、確か……昨日は――。

その時、部屋のドアがガチャリ、と音をたたてながら開く。

私は反射的にドアの方へと視線を向けた。

「お目覚めですか、ライト・クライス」

そこには金髪のロングヘアー、白い軍服を来た女が立っていた。

確か、名前は……。

「エリーカ・バードン……だったか?」

「覚えていてくれたとは光栄ですね。それよりも、体調はいかがですか?」

開けたドアを閉めるなり、エリーカは私がいるベッドの側まで近づいてくる。

そしてベッドの横に置かれたパイプ椅子に腰を降ろした。

「あぁ、平気だよ……」

「それは何よりです。しかし、余程疲れていたのですね、丸二日間眠っているなんて」

「――はぁ?」

「おや、聞こえませんでしたか? 貴方は丸二日間、ずっと眠っていたんですよ」

……丸二日間、眠っていた……だと?

「信じられませんか? まぁ、コチラとしても少し不安でした。なんせ、貴方は飲み食いもせずに眠っていましたから」

「……起こせよ、不安になるくらいなら」

「普通の人間なら自然に起きると思いますが」

この女は遠まわしに私は普通じゃない、とでも言いたいのか。

まぁ、別にその辺りに関しては否定しないけど。

「それで、ここはどこなんだ?」

「ここは我が騎士団が経営する病院です。と言っても、騎士団司令部内にあるので病院と言う言い方はおかしいですが」

つまりここは騎士団の司令部と言うわけだ。

そしてエリーカの話によると私は二日間眠っていたとのこと。

つまり今日は四月十三日になる。

と、私の脳内で一昨日の事件が再生される。 

言語を話すアヴェンジャー、そしてそれと殺し合いをした自分。

神崎護とその仲間たち。

私はエリーカに慌てて顔を向けた。

「おい、アイツ等は! アイツ等はどうしたんだッ!?」

「アイツ等とは、あの学生達の事ですか?」

慌てる私に冷静な声でエリーカは答える。

「そうだ、今どこにいる!」

騎士団の車に乗り込んだ後、私は神崎護と会話をした覚えがある。

内容は、あまり覚えてないけど。

でも会話の途中で視界がクラついて、そのまま眠ってしまったのだ。

そして気がついたらこの病室。

そのため、アイツ等が今どうしているのかは知らないのだ。

「彼らは昨日から、司令部の待機室に身を置いています。今は取り調べを行なっている時間帯ではないでしょうか」

と、エリーカは病室にある時計を見つめながらそう答える。

けどまぁ、無事ならよかった。

が、私はエリーカの今の言葉に引っかかる物を感じた。

「おい、昨日からって……アイツ等、学生寮に帰ってないのか?」

私がそう質問するとエリーカの表情が曇る。

彼女は唐突にパイプ椅子から腰を上げる。

そしてそのまま病室の窓まで歩き、外の風景を見つめた。

「………」

エリーカは何も言わず、ただじっと外の風景を見つめる。

「おい、聞かれた事くらい答えろよ」

いい歳の大人のクセに答えられないのか。

私は舌打ちをながらエリーカから顔を背ける。

「――追い出された、のだそうです」

「――え」

その小さな呟きに私はエリーカに顔を向ける。

彼女は変わらず、じっと外を見つめている。

が、拳を握り締めている手が微かに震えている様に見えた。



/続く




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Beyond Despairをご覧になっている読者の方々

毎度閲覧していただき、誠にありがとうございます。


この度、毎日投稿していたBeyond Despair につきましてのお知らせをさせていただきます。

大学に入り、私笹凪メンマも勉強などで忙しくなってまいりました。

その為、日曜を除いて毎日更新していたBeyond Despair を週一投稿とさせていただきます。


毎日の様に見ていた方々、本当に申し訳ございません。

しかし週一の投稿なのでそれなりの量を投稿していこうと考えています。


して、肝心の更新曜日ですが

毎週月曜の零時から一時の間に更新したいと考えています。


勝手な変更、誠に申し訳ございません。

これからもBeyond Despairをよろしくお願いします。


作者/笹凪メンマ