「ん……」
ふんわりした感触。
どうやら私はベッドの上に居るらしい。
目を開けると、見覚えのない天井。
あの学生寮とは違う感じ。
私はゆっくり身体を起すと、周りを見渡した。
「ここ……は、どこだ?」
頭の中がまだ上手く働いてくれない。
そもそも何で私はこんな見覚えのない部屋で眠っているのだろう。
額に手をあて、記憶を巡る。
そう、確か……昨日は――。
その時、部屋のドアがガチャリ、と音をたたてながら開く。
私は反射的にドアの方へと視線を向けた。
「お目覚めですか、ライト・クライス」
そこには金髪のロングヘアー、白い軍服を来た女が立っていた。
確か、名前は……。
「エリーカ・バードン……だったか?」
「覚えていてくれたとは光栄ですね。それよりも、体調はいかがですか?」
開けたドアを閉めるなり、エリーカは私がいるベッドの側まで近づいてくる。
そしてベッドの横に置かれたパイプ椅子に腰を降ろした。
「あぁ、平気だよ……」
「それは何よりです。しかし、余程疲れていたのですね、丸二日間眠っているなんて」
「――はぁ?」
「おや、聞こえませんでしたか? 貴方は丸二日間、ずっと眠っていたんですよ」
……丸二日間、眠っていた……だと?
「信じられませんか? まぁ、コチラとしても少し不安でした。なんせ、貴方は飲み食いもせずに眠っていましたから」
「……起こせよ、不安になるくらいなら」
「普通の人間なら自然に起きると思いますが」
この女は遠まわしに私は普通じゃない、とでも言いたいのか。
まぁ、別にその辺りに関しては否定しないけど。
「それで、ここはどこなんだ?」
「ここは我が騎士団が経営する病院です。と言っても、騎士団司令部内にあるので病院と言う言い方はおかしいですが」
つまりここは騎士団の司令部と言うわけだ。
そしてエリーカの話によると私は二日間眠っていたとのこと。
つまり今日は四月十三日になる。
と、私の脳内で一昨日の事件が再生される。
言語を話すアヴェンジャー、そしてそれと殺し合いをした自分。
神崎護とその仲間たち。
私はエリーカに慌てて顔を向けた。
「おい、アイツ等は! アイツ等はどうしたんだッ!?」
「アイツ等とは、あの学生達の事ですか?」
慌てる私に冷静な声でエリーカは答える。
「そうだ、今どこにいる!」
騎士団の車に乗り込んだ後、私は神崎護と会話をした覚えがある。
内容は、あまり覚えてないけど。
でも会話の途中で視界がクラついて、そのまま眠ってしまったのだ。
そして気がついたらこの病室。
そのため、アイツ等が今どうしているのかは知らないのだ。
「彼らは昨日から、司令部の待機室に身を置いています。今は取り調べを行なっている時間帯ではないでしょうか」
と、エリーカは病室にある時計を見つめながらそう答える。
けどまぁ、無事ならよかった。
が、私はエリーカの今の言葉に引っかかる物を感じた。
「おい、昨日からって……アイツ等、学生寮に帰ってないのか?」
私がそう質問するとエリーカの表情が曇る。
彼女は唐突にパイプ椅子から腰を上げる。
そしてそのまま病室の窓まで歩き、外の風景を見つめた。
「………」
エリーカは何も言わず、ただじっと外の風景を見つめる。
「おい、聞かれた事くらい答えろよ」
いい歳の大人のクセに答えられないのか。
私は舌打ちをながらエリーカから顔を背ける。
「――追い出された、のだそうです」
「――え」
その小さな呟きに私はエリーカに顔を向ける。
彼女は変わらず、じっと外を見つめている。
が、拳を握り締めている手が微かに震えている様に見えた。
/続く