第三章 開戦前 1 | Beyond Despair

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

「ん……」

ふんわりした感触。 

どうやら私はベッドの上に居るらしい。

目を開けると、見覚えのない天井。

あの学生寮とは違う感じ。

私はゆっくり身体を起すと、周りを見渡した。

「ここ……は、どこだ?」

頭の中がまだ上手く働いてくれない。

そもそも何で私はこんな見覚えのない部屋で眠っているのだろう。

額に手をあて、記憶を巡る。

そう、確か……昨日は――。

その時、部屋のドアがガチャリ、と音をたたてながら開く。

私は反射的にドアの方へと視線を向けた。

「お目覚めですか、ライト・クライス」

そこには金髪のロングヘアー、白い軍服を来た女が立っていた。

確か、名前は……。

「エリーカ・バードン……だったか?」

「覚えていてくれたとは光栄ですね。それよりも、体調はいかがですか?」

開けたドアを閉めるなり、エリーカは私がいるベッドの側まで近づいてくる。

そしてベッドの横に置かれたパイプ椅子に腰を降ろした。

「あぁ、平気だよ……」

「それは何よりです。しかし、余程疲れていたのですね、丸二日間眠っているなんて」

「――はぁ?」

「おや、聞こえませんでしたか? 貴方は丸二日間、ずっと眠っていたんですよ」

……丸二日間、眠っていた……だと?

「信じられませんか? まぁ、コチラとしても少し不安でした。なんせ、貴方は飲み食いもせずに眠っていましたから」

「……起こせよ、不安になるくらいなら」

「普通の人間なら自然に起きると思いますが」

この女は遠まわしに私は普通じゃない、とでも言いたいのか。

まぁ、別にその辺りに関しては否定しないけど。

「それで、ここはどこなんだ?」

「ここは我が騎士団が経営する病院です。と言っても、騎士団司令部内にあるので病院と言う言い方はおかしいですが」

つまりここは騎士団の司令部と言うわけだ。

そしてエリーカの話によると私は二日間眠っていたとのこと。

つまり今日は四月十三日になる。

と、私の脳内で一昨日の事件が再生される。 

言語を話すアヴェンジャー、そしてそれと殺し合いをした自分。

神崎護とその仲間たち。

私はエリーカに慌てて顔を向けた。

「おい、アイツ等は! アイツ等はどうしたんだッ!?」

「アイツ等とは、あの学生達の事ですか?」

慌てる私に冷静な声でエリーカは答える。

「そうだ、今どこにいる!」

騎士団の車に乗り込んだ後、私は神崎護と会話をした覚えがある。

内容は、あまり覚えてないけど。

でも会話の途中で視界がクラついて、そのまま眠ってしまったのだ。

そして気がついたらこの病室。

そのため、アイツ等が今どうしているのかは知らないのだ。

「彼らは昨日から、司令部の待機室に身を置いています。今は取り調べを行なっている時間帯ではないでしょうか」

と、エリーカは病室にある時計を見つめながらそう答える。

けどまぁ、無事ならよかった。

が、私はエリーカの今の言葉に引っかかる物を感じた。

「おい、昨日からって……アイツ等、学生寮に帰ってないのか?」

私がそう質問するとエリーカの表情が曇る。

彼女は唐突にパイプ椅子から腰を上げる。

そしてそのまま病室の窓まで歩き、外の風景を見つめた。

「………」

エリーカは何も言わず、ただじっと外の風景を見つめる。

「おい、聞かれた事くらい答えろよ」

いい歳の大人のクセに答えられないのか。

私は舌打ちをながらエリーカから顔を背ける。

「――追い出された、のだそうです」

「――え」

その小さな呟きに私はエリーカに顔を向ける。

彼女は変わらず、じっと外を見つめている。

が、拳を握り締めている手が微かに震えている様に見えた。



/続く




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