Beyond Despair -20ページ目

Beyond Despair

― 絶望の底に落ちた少女の先に待つ運命 ―

と、そんな事を頭の中で考えていると――。

「ってか、ライト。その話なんだ?」

今まで黙っていた護がそんな言葉を口にした。

「その話?」

「あぁ、お前今この事件の誘拐犯はアヴェンジャーを従えてるって言ってたよな?」

そう言われて私はハッとある事に気づいた。

この二人が誘拐犯とアヴェンジャーの関係について知らなかった事に。

護の言葉を聞いてか愛花は私に不安そうな視線を向ける。

「どういう事? この事件の誘拐犯がアヴェンジャーを従えてるって。って事はなに、エレナは今……化け物に捕らわれてるって事ッ!?」

愛花は私の首元を掴み、グイっと顔を寄せてきた。

「答えて、どうなのッ! 今の話は本当なのライトッ!!」

物凄い力で首元が掴まれているせいか、息が苦しくなってくる。

私はそんな愛花の腕を振り払う。

「あぁ、お前らと会う少し前に変なオッサンから聞いたんだよ。まぁ、その情報を教えくれたオッサンはその数分後に殺されてたけどな」

荒い息のまま、今までの事を話す。

するとさっきまで強気だった愛花の身体が震えている。

「……エレナ、エレナ……」

今の話を聞いてか、ますます愛花の表情が曇っていく。

うかつだった、出来ればコイツらには話したくなかった事だったけど。

身体を震わす愛花の頭を、私の話をただ黙って聞いていた護が優しく撫でる。

そして私に顔を向ける。

さっきのアイツからは想像出来ない程の真剣なその視線に私は少し身体を震わせた。

「な、何だ。黙ってたのは悪かったけど、お前らに話さなかったのは――」

「分かってる。気遣ってくれてたんだろ。けど、それでもこうなっちまった以上、俺達にも無関係な事じゃない」

愛花とは対照的に護は驚くほどに冷静だった。

何でだ、どうして冷静でいられるんだ。

昨日なんて恐怖のあまり嘔吐してたのに。

なのに、そんな奴がどうして、こうも冷静でいられるんだ。

「ライトの言うことには一利ある。けど、もう少しこのマンションを調べてみても良いだろ。何ならライトは別行動しても良いぞ」

震える愛花をしゃがませると、護は私に身体を向ける。

アヴェンジャーが関わっているのに、どうしてそうしていられるんだ。

ますますこの男の事が理解出来ない。



/続く



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「何か気味悪いわね、ここ」

後ろにいる愛花もどこか息苦しそうな声音でそう呟いた。

マンションの部屋はどこも明かりはついていない。まるで心霊スポットだ。

「ここにエレナが居る……」

心配そうな声で愛花はそう言うと、私を横切り早足でマンションへと向かっていった。

私もそれに続いてマンションへと足を運ぶ。

そんな私達を待ち構えていたのは、ボロボロになったエントランスだった。

「何でこんな所何年も放置してんのよ」

散らばったガラスの破片を踏みながら愛花は一階の部屋を当たり次第に調べて行く。

正直、私よりも調査って面では優秀だと思う。

と、後ろから足音が聞こえてきた。

振り向くとそこには涙目になっている神崎護の姿。

「お前ら、少し待っててくれてもだな……」

ブツブツと文句を言いながらエントランスへと入ってくる護。

コイツはこの空気の変化に気づいていないのだろうか。

よっぽどの鈍感か、単なる馬鹿か。

そんな男を前に私は呆れてため息をする。

「む、何だそのため息」

「いや、ただ緊張感がまるで皆無だと思ってな」

「そんな事ねーぞ、これでも緊張してる」

どうだか、と私は呟きながら愛花の方へと視線を戻す。

すると愛花は息を荒くしながら私達の方へと戻ってきた。

「ダメ、この階には居ないみたい」

「と言うか、今でもこの廃墟に居るのか?」

「だって、あのチンピラ共がここに向かってったって」

「考えてみろ、この事件の誘拐犯はどうゆう訳かアヴェンジャーを従えている野郎だ。そんな奴が私達が自分の隠れ家に侵入した事に気づかない訳が無いだろ。実際、ここに居るのなら私達がエントランスに入った瞬間に何らかのアクションを起こすはずだ。けど、私達がこの廃墟に侵入してから約五分、なんの動きも見せていない」

逆にここまで静かだと不気味に思えるくらいだ。

私の話を聞くなり、愛花は表情を曇らせる。

けど実際、犯人がいる確立は極めて低いだろう。

アヴェンジャーを従えているのなら、一匹や二匹エントランスに居てもおかしくない筈だ。



/続く



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路地裏を急ぎ足で走る。

さっき男達から聞いた話ではスマイル女はこの先にあるオンボロのマンションに連れて行かれたらしい。

「はぁ、はぁッ! ん、クソ! もっと早く走れねーのかッ!!」

今更ながら自分の運動神経の悪さに後悔している護の声が後ろから聞こえてくる。

「文句言ってる暇があったら走れ」

そんな護に私はそう言いながら走るスピードを上げる。

あの男達の話が正しければ次の十字路を右に曲がったとこのすぐ近くにあるはずだ。

「護! アンタもう少し早く走れないのッ!?」

私の走るスピードに順調に付いてきている愛花が後ろにいる護を怒鳴りつける。

「うっせッ! お前ら本当に女かよッ!!」

愛花の怒鳴りに護は意味深な反発をする。

アイネはと言うと、騎士団に連絡を入れてもらう為に今は別行動をしているのだ。

その為、今この場に居るのは私と愛花、そして護の三人になる。

本当はコイツらの事は連れてくるべきでは無かったのだが、愛花が――。

『嫌よッ! あの子が怖がってるかもしれないのに、私だけこんな安全な場所に居るなんて絶対に嫌ッ!!』

と、私の意見を華麗に却下したのである。

護は言うまでもなく元から私と行く気だったらしい。

また昨日みたいになっても知らないぞ、と言ったが――。

『それでも構わない。エレナが危ないってのにじっとしてる方が吐き気がするんだ』

と、そう答えたのである。

正直ここまで仲間想いの人間は居ないのではないかと思ってしまう程だ。

「ライト、あそこ右でしょッ!?」

ふと、既に十字路が目の前にあった。

私は急ブレーキを掛け、そのまま右に曲がる。

その後を愛花も続く、が――。

「って、そっちかよッ!!!」

ガシャン、と護が何かにぶつかる音が聞こえる。

しかし私と愛花はそんな馬鹿に構わず誘拐犯が居ると思われるマンションに向かう。

しばらく走っていると、今まであちこちにあった街灯が無くなっていた。

気のせいか、空気が、重く、感じる。

「何だ……これ」

私は走るスピードを緩め、その場に立ち止まる。

あまり全力で走ってもいないのに私は息を乱していた。

胸を手で抑え、真っ暗な一本道の奥を見つめる。

そこにはポカンと、周りから忘れ去られたマンションが建っていた。

何年前に建てられたマンションなのか、今では廃墟と化している。



/続く



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