「何か気味悪いわね、ここ」
後ろにいる愛花もどこか息苦しそうな声音でそう呟いた。
マンションの部屋はどこも明かりはついていない。まるで心霊スポットだ。
「ここにエレナが居る……」
心配そうな声で愛花はそう言うと、私を横切り早足でマンションへと向かっていった。
私もそれに続いてマンションへと足を運ぶ。
そんな私達を待ち構えていたのは、ボロボロになったエントランスだった。
「何でこんな所何年も放置してんのよ」
散らばったガラスの破片を踏みながら愛花は一階の部屋を当たり次第に調べて行く。
正直、私よりも調査って面では優秀だと思う。
と、後ろから足音が聞こえてきた。
振り向くとそこには涙目になっている神崎護の姿。
「お前ら、少し待っててくれてもだな……」
ブツブツと文句を言いながらエントランスへと入ってくる護。
コイツはこの空気の変化に気づいていないのだろうか。
よっぽどの鈍感か、単なる馬鹿か。
そんな男を前に私は呆れてため息をする。
「む、何だそのため息」
「いや、ただ緊張感がまるで皆無だと思ってな」
「そんな事ねーぞ、これでも緊張してる」
どうだか、と私は呟きながら愛花の方へと視線を戻す。
すると愛花は息を荒くしながら私達の方へと戻ってきた。
「ダメ、この階には居ないみたい」
「と言うか、今でもこの廃墟に居るのか?」
「だって、あのチンピラ共がここに向かってったって」
「考えてみろ、この事件の誘拐犯はどうゆう訳かアヴェンジャーを従えている野郎だ。そんな奴が私達が自分の隠れ家に侵入した事に気づかない訳が無いだろ。実際、ここに居るのなら私達がエントランスに入った瞬間に何らかのアクションを起こすはずだ。けど、私達がこの廃墟に侵入してから約五分、なんの動きも見せていない」
逆にここまで静かだと不気味に思えるくらいだ。
私の話を聞くなり、愛花は表情を曇らせる。
けど実際、犯人がいる確立は極めて低いだろう。
アヴェンジャーを従えているのなら、一匹や二匹エントランスに居てもおかしくない筈だ。
/続く