珍しく原作を読んでから、映画を見た作品。

逆の方が良かったかも。

そんな気もしますが、穏やかな作品です。

映画「きみにしか聞こえない」


とりえず、原作とは全く違った作品です。

ただし大枠は同じです。

小出恵介演じる「シンヤ」の話が盛り込まれている感じです。

あとは、ピアノが非常に素敵な演出の道具になっています。

でも、特筆すべきはやはり役者の演技力かと思います。


耳が聞こえない役柄と言うことで、小出恵介の役どころがとても難しい。

成海璃子演じる「リョウ」も、決して目立ったキャラ付けがない普通の子が少しずつ雰囲気が変わっていくのを表現しなければいけない。

多少不自然なところもあったけれど、とても上手だったと思います。

お陰で、話に入り込みやすい。

脇役もベテランが脇を固めて、盛り上げます。


この作品では、携帯を通じて離れて暮らす二人がお互いを変えていく話です。

ただし、携帯は実在のものではなく、想像のものでテレパシーに近いものです。

だけど、電話なので相手に掛けられるし、取らないこともできる。

そこが、単純に通じ合うのと少し違うところです。


心情の変化を「リョウ」側では、ピアノが効果的に伝えていきます。

他にもいろいろちりばめられますが、これが一番分かりやすく伝えていると思います。

近づくことすらなかったピアノにどのように触れていくか、それはとても素敵に流れます。

「シンヤ」の耳が聞こえないことも、この作品の「音」が持つ意味を与えています。


一部、残念だったのは少し間延びしたこと。

元々が短編のものを引き延ばしているので、もちろんエピソードは足されています。

しかし、やっぱり感情表現が長かったり、風景多かったりしました。

良く言えば、日本映画の色彩感なのですが・・・。

それが少しテレビドラマ感を出してしまった気がします。


原作の緩い光がちりばめらた空気感を壊さないレベルでエピソードが足されている。

そんな珍しい作品になっています。

そして、しっかりとした純愛物語にもなっています。

センセーショナルな作品に疲れたころに、穏やかに観てみるのはどうでしょうか

最近、ドラマの視聴率が落ちているらしい。

つまらなくなったと言うより、出尽くし感から、奇をてらいすぎている感が強いからな気もする。

まぁ、そんなどうでもいいことは、無視して、これぞ青春ドラマの決定版

ドラマ「Q10」


最初は、やはり流行に乗って観てしまった感じだったのですが、とにかくセリフが良い。

演技も、もしかしたら冷静に見るとそうでもないかもしれないけど、安定している。

特に、佐藤健演じる「へいた」と前田敦子演じる「Q10」が、全てにおいて良い。

二人とも、演技が上手なんだな改めて思いました。


これは、青春ドラマです。

でも、スーパースターも熱血教師も出てきません。

意地悪教師もいません。

ただ、異様に貧乏だったり、バンドマンだったり、不思議少女だったりはいます。

ちなみに、主人公は昔に心臓の手術をした経験があり、友達は今でも入退院を繰り返している。

そこに、ロボットが入ってくる。

当然、それらがアクセントになっているし、ドラマを展開させる。

だけど、それはあくまで作品としてみせるために少し誇張しているレベルに抑えてある。

そのバランス感にはまってしまう。


この作品の良いところは、冒頭にも書いたけれど「セリフ」だと思います。

金八やら、ドラマ版のGTOみたいなご立派全開の人生訓があまり好きじゃない。

この作品は、子供も大人もすごく立派な人がいない分、ホントにしみる言葉が溢れている。

今週だけでもいっぱいあるけれど、その中で選ぶなら「好きな方を選び続けて、今がある」です。

選べなかった道もあると思うかもしれないけど、挑戦するかどうかも含めて実は自分で決めてる。

少なくても、今の日本では自分が選んだ道の結果に今がある。

実際はそうなってるんだなと感じました。

他にもいっぱいあるんです。


また、ロボットの設定が絶妙。

教えたことを覚えていくだけなので、素直。

そこに少しひねた主人公がはまっていく。

そこまでは、ありがち。

心臓の手術を経て自分の命に危うさを感じている主人公の設定がそれを特別にしている。

ロボットという、魂のないものがそこに溶け込んでいく感じがします。

二人の関係性が、この作品の雰囲気を綺麗にしていきます。

命の有無や、根源の違いを超える何かが描き出されています。


本当は、終わってから総括で書くつもりだったのですが、どうしても今書きたくなりました。

これから、謎の組織的なものが絡んできて、SF感が強まるかもしれません。

でも、役者のインパクトだけではない良さはなくならないと思います。

これからも見逃さず観て行きたいと思います。


P.S.

最終回でしたね。

切ないけど、ハッピーエンドで良かった。

前回だったかな、キュートの素性が判明した時点で、落ち自体は予想できた。

でも、それだけで終わらないのがこの作品でした。

ホントに良いセリフ満載。

世界を愛するなんて大それてそうで、当たり前なんだよね。

そして、リセットすると決心したあとに、みんなに年賀状を書いてるのだけど、

そこが普通の日常みたいになってて、そこがとても僕は好きです。

そして、ドラマで最後のフィクションの文章初めてちゃんと読んだら、素敵過ぎる言葉が書いてある。

全ての作品の登場人物はそれを観た全ての人の中で生きているということを感じました。

心の中で生きてるなんて、誤魔化しだといつもは感じてしまうのに、

こんなに素直に受け入れられたのは初めてです。

昔は途中で挫折したけど、今なら最後まで観れました。

映画「dolls」


とにかく、難解な映画です。

北野映画らしく人も死ぬし、時間もゆっくり流れる。

でも、それだけではない。

二人が歩く先にいろんな人間模様がある。

その二人にも、歩きながら長い時間が現れてくる。

そして、これが全て。

北野武の複雑さを一挙に入れた感じになってます。


そして、初期の北野映画といえば『色』。

北野ブルーやdollsでは北野レッドと言われた。

これは、中国のチャン・イーモウも敬愛したと言われている。

でも、決定的な違いがあるのは、北野映画の色は自然の色なこと。

ブルーは空、レッドは紅葉。

他にも、雪のホワイト、木々のグリーン、桜のピンク。

この作品では、四季の移り変わりも表現されるから、それがとても強く表現される。

その中に、人が溶け込んで行ったり、人工物が入り込む。

それが、北野映画の色だと思う。


この作品は、最後までなんとなくモヤモヤが残る。

これは、きっと良い日本映画では良くあることなのだと思う。

良い日本映画は、人間をそのまま描き出す。

それが得意だから。

でも、そのまま描き出される人間は、全てすっきりさせられるほど単純じゃない。

だから、日本の映画はすっきりしないのだと思う。


人形浄瑠璃にもなぞられているのかもしれないけれど、演目とか知らないので分からない。

でも、四季の移り変わりによる色、時の流れ、人間、それが混ざり合う映画です。

難解だし、観る人に優しくない、観終わっても良く分からない部分もある、そんな映画です。

でも、一度観てみると、何かを感じれる映画になっていると思います。


久しぶりに本です。

とにかく、すさまじい設定の話です。

小説「スイッチを押すとき」


あとがきを言葉を借りるなら、基本設定だけで十分な仕掛けであり、いくらでも話を派生できる。

この言葉には同意するとしか言えない。

山田悠介氏の小説は、多くがその要素を持っているように思える。

(ちゃんと読んだの3冊くらいだけど)

この小説の基本にあるのは、「心臓に埋め込まれた自殺スイッチ」である。

この仕掛けが、小説の全ての場面を深遠なものにしている。


さて、この作品の世界はわれわれと変わらない世界。

ただし、一つの法律が施行されている。

「無作為に選ばれた人間は、5歳のとき爆弾を心臓に埋め込まれる」

そして、「10歳になると、監禁されスイッチを渡される」

「そのスイッチを押すと自殺できる」

これが、この作品に雰囲気をあたえる。


この法律の狙いは、自殺が増えていくなか、その心理を解明しようというもの。

現実に、そんな検証方法がまかり通るわけがない。

でも、この小説内では、まかり通ってしまっている。

法律という絶対性、無作為という偶然性、自殺という自主性・・・。

バトルロワイヤルにも似ているのだけど、自殺という部分が大きく違う。

逃げることのできない絶対的な死は、自らスイッチを押すことによって訪れるのである。

押さなければ、全てを奪われた状況で、行き続ける現実を受け入れなければいけないのだ。


この作品は、スリリングな要素を取り入れている。

周囲のミステリアスな対応とスリリングさが、小説でのエッセンスだ。

最初に書いたが、この小説に付加するエッセンスはどんなものでも良い。

ただ、基本設定である「絶対的な死」という事実だけ曲げなければ。

本当にそれほど強力なものだと思う。

決して、自分に置きかえれるものでもないのに、引き込まれてしまう。

ただ壊れているのでも、その理由があるのだ。


どこまでもの深遠さを持つ小説です。

この設定がどのように活かされているのか、読んでみてください。

時期ずれてるけど、戦争2連続。

映画「私は貝になりたい」


なんと言うか、日本映画の起こしやすい間違いが多い映画なきがします。

まず、テーマが多すぎる。

目に付くだけでも、戦争の狂気、東京裁判、古きよき時代、偏見との戦いなどなど・・・。

どれか一つに絞るなり、せめて重点化して欲しかった。

あと、CGがアニメっぽいので、実写の中に混じると難しいよね。

日本映画がCGが下手なのは、技術がアニメに偏ってるからだと最近思ってます。

まぁ、実写でのCGはハリウッドが上手すぎるというのが正しいのかも知れないけど。

前回の「明日への遺言」と違って、フィクションなんだからもっと創作感が強くてもいいじゃないかと思いました。

とりあえず、1クールの連続ドラマでやっと消化できるくらいの盛りだくさん感です。

映画だと多いけど。


この作品、これだけの内容を含めるために役者さんが頑張った。

演出が「やりすぎじゃね?」と思えるところを、不自然になりすぎず、ただ展開がちゃんと伝わるようになってた。

改めて、中居くんがただの芸人じゃないと思えました。

正直、ジェットコースター過ぎて、心理描写が難しい中、感情移入できるのは役者さんの力です。

あと、岡田中将ばりの反抗を見せる矢野さん役の石坂さんも素敵。

仲間さんは、無茶するなぁと思わせる場面を、ありかなと思わせてくれます。


全体構成には少し不満が残りますが、役者さんの演技力の大切を改めて感じさせてくれる映画です。