かつて中判フィルム用のカメラは、プロやハイアマ御用達だった。
しかしすでにポラロイドもなく、広大なイメージサークルを誇る高性能レンズも出番を失いつつあると言える。

レンズの描写性能は、一般的には「画面の中央部付近」で最高レベルになる。
レンズが広大なイメージサークルを持つということは、35mmフルフレームで使えば、イメージサークルの中央部付近しか使わないことになるので、周辺部まで安定した高画質が期待できるのだ。


それなら中判用レンズも、使えるものなら使ってみたい。
しかしもちろん、そのままではEマウントのカメラボディに取り付かない。マウントアダプターが必要になる。


中判レンズ対応のマウントアダプターも種々存在するのだが、「マミヤプレス用レンズ」を「ソニーEマウント機」で使うマウントアダプターが見当たらない。
そこで、簡易版だがマウントアダプターを自作することにしたのだ。



1.準備品

必要なものは、特殊なものは次の3種。

超薄型のEマウント
SONY α用の、中国製中間リング
ニコンの金属製レンズフード HN-24
それぞれクリックすると、リンク先に飛ぶ。
いつまで有効なURLなのかは不明だが、Eマウントや中間リングは同等品がいろいろと出ている。

ほかに必要なものは「ビニールテープ」、「エポキシ接着剤」、「反射防止塗料(アクリルガッシュのジェットブラック)」だ。
これらは大手のホームセンターなどで普通に売られている。


上記の各パーツの細かい説明を次の記事で行っている。こちらの記事も、ぜひご参考にしていただきたい。

 

 


今回の大きな?ポイントは、アダプターのボディに「金属製レンズフード」を使っているということだ。
上記のニコンのレンズフードは、マミヤプレスのマウント部と径がうまく合う。

しかしもちろん、フランジバックまでいきなりぴったり合うほど、世の中うまくはできていないw
そこで、フランジバックを合わせるために中間リングを使うのだ。
安物の中間リングをそろえておくと、いろいろと応用がきくだろう。



2.製作

ここからいよいよ製作開始だ。
ビニールテープでフードと中間リング、Eマウントを、写真のように仮り止めし、接続部の内周側をエポキシ接着剤で接合する。

「全長7mmの中間リング+切り欠き加工(「4.」にて詳述)」の組み合わせで、ほとんどオーバー・インフィニティなしにフランジバックが合う。
接着前に、まずこの状態で大まかなピントチェックをするとよいだろう。ややオーバー・インフィニティぐらいならokだ。


 

イメージ 1




内側だけの接着でもまず剥がれることはないが、万全を期して、内周の硬化後にビニールテープを剥がし、外周部も接着する。


なお、次の写真で、内側にわずかに見える接着剤の色が茶色なのは、真鍮粉をフィラーとして混ぜ込んでいるためだ。必須ではない。
エポキシ接着剤は硬化時間がそれなりに長い。その間に接着剤が流れ出しやすいのだ。フィラーによって流れ出しをかなり抑えられる。


 

イメージ 2




3.仕上げ

下の写真で、フード内部がとてつもなく汚く見える。
これは、黒い毛糸を接着剤で円周上に貼りつけ、アクリルガッシュで染色したためだ。


圧倒的なイメージサークルの広さを誇るマミヤプレスのポラロイド対応レンズは、レンズ後端側の光の拡散が35mmフルフレームをはるかに越えて大きい。
そこでの乱反射は描写に影響をおよぼすだろう。

そのため、内面反射防止処理はどうしても実施しておきたい。表面状態をこのように荒くすると、内面反射防止の効率がぐっと上がるのだ。

 

 

イメージ 7

 

 

※1. ここで使う接着剤は、木工用ボンドが良い。今回、対象が金属と毛糸だが接着可能だ。ゴム系接着剤はベタついて扱いにくい。
※2. 「アクリルガッシュのジェットブラック」は漆黒度がかなり高い。一般市販のマウントアダプター内部に使用しても、内面反射を抑えるのにかなり有効だ。水で薄めずにコテコテに塗り込むのがコツだ。



4.補足事項

今回、対象としたレンズは、マミヤプレス用「127mm f=4.7」だ。
このフードの先端は上の写真でもわかるが、深さ3mmほど、謎の?切り欠き加工を行った。

しかし以前作った「75mm f=5.6」用のアダプターでは、こんな加工をする必要がなかった。
参考までに、次の写真が75mmポラロイド用レンズ+アダプターだ。


 

イメージ 3



ピント確認をしてみると、この2種のレンズはフランジバックがかなり違う。
今回対象にした127mmレンズ(+他のマミヤプレス用レンズ)は、この75mmレンズと比較してフランジバックがかなり短い。
マウント部の直径や爪形状は同じなのに、なぜか「75mm f=5.6」に限ってフランジバックが違うのだ。

 

あるいは75mmレンズはマミヤ製ではあっても、「マミヤプレス用」ではなく、「ポラロイド 600SE」用だったのかもしれない。??

そのため今回はフランジバックを短くする方策が必要になった。

フード先端を切り欠いてレンズマウントの爪部をかわし、フード全体を押し込んで取り付け、結果、フランジバックを短くしたのだ。

※1. 切り欠き加工は、ホームセンターに売っている小型グラインダー+仕上げ用の金ヤスリを使って容易にできる。

※2. 切削による金属粉が悪さをする可能性があるから、事後の清掃はしっかりやっておく。

 

5.カメラへの取り付け

次の写真が、カメラ本体にアダプター経由でレンズを取り付ける様子だ。


 

イメージ 6


切り欠き位置を合わせ、押し込む。

イメージ 4



ガタがなく、しっくりと取り付く。カメラ側から、薄型Eマウント、中間リング、レンズフード、レンズ本体だ。

イメージ 8



切り欠き部位置で、レンズマウントの爪をかわして取り付ける。
簡単には外れないほどに、「しっくり」と取り付くのだが、もちろんこれだけでは抜け落ちてしまう。

これが「簡易版」の理由なのだが、漏光防止も兼ねてビニールテープで固定すれば、勝手に抜け落ちる心配はなくなる。

ここでは分かりやすくするために赤テープを使ったが、実使用時は漏光防止効果が高いであろう黒にする。
どうしても黒はイヤだということなら、好みの色を選ぶとよいだろうw


 

イメージ 5

 

 

 

下が実際に使っている状態のものだ。謎の?フードまで付けると、なかなかカッコ良い。

 

 

 

このマウントアダプターを使って、マミヤプレス用レンズで撮影した写真記事が増えてきた。
こんな簡易版で本当に撮れるのかと、懸念される方も多いかと思う。

次のリンク先記事の後半で、撮影レンズや写真をリスト化してご紹介している。マミヤプレス用トポゴンなども含まれる。

 

 

 

 

※1. ゼンザブロニカETRシリーズもマウントアダプターを見かけないので、純正の中間リング + レンズフードを使って自作した。

 

※2. マミヤRB/RZシリーズも同様にマウントアダプターを見かけないので、純正の専用中間リング + Eマウント用ヘリコイド付きマウントアダプターを使って自作した。

 


6.結び

ここまで読んでいただいたお礼に。

マミヤプレス用レンズと同時代に活躍したトランぺッター、ニニ・ロッソの演奏集だ。同時代の雰囲気に満ちていると思う。

 

 

LPレコードでニニ・ロッソ ”雪が降る” ”シバの女王” 他 全5曲

 - Golden Nini Rosso "Tombe La Neige" "La Reine De Saba" - VINYL