長らくこのブログで新刊の紹介記事などを書いてきましたが、今後はnoteに紹介の場を移すことにしました。
いずれは新刊紹介以外の記事も載せていきたいと思っておりますので、もしよろしければときどきのぞいてあげてください。
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道ばたに落ちている変わったものを集めるのが趣味のミッチ。そのミッチのコレクションが不思議な事件を巻き起こす「ミッチの道ばたコレクション」シリーズの第3弾『うたうラッパ貝がら』が発売されました。
今回の新たなコレクションは、ホルンのような形をした虹色に輝く貝がら。ミッチがその貝がらを机に飾って眠ろうとすると、貝がらから女の子のきれいな歌声が聞こえてきます。
「なかにだれかいるの?」と貝がらにむかって声をかけるミッチ。そのとたん、歌声はぴたりと止まってしまいます。
歌声はその後も毎晩のように聞こえてきます。その歌声を、「なんだかちょっとさびしそう」と感じたミッチは、歌をうたっている女の子がさびしくないように、女の子の友だちになってあげたいな、と思うようになります。
けれど貝がらのなかの女の子はとても人見知りのようで、ミッチが話しかけてもなかなか返事をしてくれません。果たしてミッチは歌声の女の子となかよくなれるのでしょうか。そして女の子の正体は……。
ミッチのコレクションにいろいろな種類のものが混ざっているように、この「ミッチの道ばたコレクション」シリーズも、各巻ごとに物語のテイストが変わります。前巻はあやしいまじんが登場するコミカルなお話でしたが、今度の『うたうラッパ貝がら』は、不思議な友だちとの交流を描いた、ちょっぴりリリカルなふんいきの物語です。
けれどミッチのやさしさと、ミッチのことをあたたかく見守るお父さんとお母さんの姿は、シリーズを通して変わりません。そしてもちろん、コマツシンヤさんの描いてくださるキュートでさわやかなイラストも。
コマツさんの絵はいつもほんとうに魅力的ですが、今回は特にクライマックスの見開きのカラー挿絵がとびきりすてきでおきにいりです。
男の子も女の子も、そしてもちろん大人のみなさんもたのしめる、夏にぴったりの物語。夏休みの読書にぜひお読みください。
吸血鬼っぽい不思議な女の子・ノダちゃんが活躍する「なのだのノダちゃん」シリーズの第5巻『おもちゃの国へようこそ』が発売されました! 表紙にはおもちゃに変身したノダちゃんとサキちゃん、そしてその姿にびっくりしている変身前のふたりが描かれています。
前作『おねがい流れ星』では宇宙旅行に出かけたりしていたノダちゃんとサキちゃんですが、新たな物語では宇宙に続いてメルヘンチックなおもちゃの国を訪れます。
収録されているのは「おもちゃやしきで大さわぎ」「ふしぎなドアのむこうには」「おもちゃの国のぼうけん」の3話。物語はサキちゃんが部屋の片づけに奮闘しているところに、ノダちゃんが遊びにやってくる場面から始まります。
「わがはいがてつだってあげるのだ!」と片づけを手伝おうとするノダちゃん。ところがうっかり積んであった箱を落として、サキちゃんのおきにいりだった猫のおもちゃ・ミャーコを壊してしまいます。
古いおもちゃだからもともと壊れてたのかも、とサキちゃんはノダちゃんをなぐさめますが、ノダちゃんは自分のせいで壊れてしまったのだから弁償するといってききません。
そこでサキちゃんはミャーコを直してもらうため、お父さんの知りあいでおもちゃの修理が得意だという「キノさん」の家に行ってみることに。
しかし目的の家はなかなか見つからず、迷子になったふたりがようやくたどりついたのは、おもちゃのブロックでつくったようなへんてこなお屋敷でした。ノダちゃんがそのお屋敷の玄関をノックすると、もじゃもじゃの白ひげをはやしたおじいさんが顔を出します。

「おじいさんは、おもちゃをなおすのがとくいなキノさんでまちがいないのだ?」
「いかにも。世界的に有名なおもちゃの修理人、キノッピオ・モッチャとはこのわしのことじゃ」
ほんとうにこの人がお父さんのいっていた「キノさん」なのか、サキちゃんは不安に思いながらも、ミャーコの修理をお願いします。果たしてミャーコは無事にまた動くようになるのでしょうか。そしておもちゃだらけのお屋敷の奥にあった不思議なドアはいったい……。
本作の見どころはなんといっても魅力的なおもちゃたち。表紙にも描かれている猫のおもちゃのミャーコや、ネズミのバレエ人形のチュチュのほかにも、はたこうしろうさんが描いてくださったかわいらしいおもちゃがたくさん登場します。そのおもちゃたちをちらっとご紹介。

サキちゃんとノダちゃんが訪れるおもちゃの国は、特別なおもちゃたちが暮らす国です。ですが特別なおもちゃって、なにがどう特別なんでしょう。
ほんわか愉快で最後はちょこっとほろりとする新たなノダちゃんの物語、みなさまにたのしく読んでいただけることを願っています。
2021年最初の新刊のお知らせは、児童書ではなくなんと論文です。
中央大学政策文化総合研究所研究叢書『社会のなかの文学』に、「児童書統制と戦時下の児童書出版の実態」と題した論文を載せていただきました。
研究論文が世に出るのはこれが初めて。もともと大学院では日本の近代児童文学の研究していて、いつかは研究も形にして発表したいと考えていたので、とても感慨深い思いでいます。
今回研究叢書に論文を載せていただいたきっかけは、2018年に中央大学で行った講演でした。「戦時下の少年少女雑誌と児童文学」という題目の講演で、概要はこちらの記事でも紹介しています。
このときの講演が思いがけず好評で、講演内容をもとに研究叢書に論文を書いてみないか、とお声がけいただいた次第です。
もとの講演の内容はオリジナリティが乏しかったので、追加の調査をこれでもかと行って、どうにかこうにか短い論文にまとめることができました。
このたびの論文「児童書統制と戦時下の児童書出版の実態」では、いわゆる十五年戦争下での児童書出版について論じています。
ご存知のとおり、戦争末期には国策協力と戦意高揚の意図が露骨な、大変過激な児童書が数多く出版されていました。
そのような児童書が大量に出版されるようになった背景には、政府による厳しい出版統制や軍部の圧力がありました。当時の児童書作家と出版社は、それらによって自由を奪われ、否応なく国策に迎合していったのだ、といわれています。
ところが実際の出版状況をくわしく調べてみると、出版統制の影響が大きかったことはたしかなのですが、ほんとうはもっとべつの要因が、戦時下の児童書出版のありようを変えていったのではないか、ということが見えてきます。
論文は前半で出版統制は始まる前の児童書出版の状況と、児童書統制の展開について整理し、後半では児童書統制が戦時下の児童書出版にどのような影響を与えたのか、当時の出版状況のデータなどをもとに論じています。
戦時下の出版物というと、紙不足でページ数も少なくて印刷も粗悪な本や雑誌をイメージされることが多いかと思いますが、実際そんな状況になるのは戦争の末期も末期で、それまでの日本の出版界は異様な好景気の中にあった、というようなことは、佐藤卓己さんの『キングの時代』などでも語られています。
児童書出版もその例外ではなく、単行本の出版点数も児童雑誌の発行部数も、日中戦争が始まったころから、急速に増え続けています。
日中戦争の勃発が昭和12年、児童書統制の開始が翌13年なのですが、じゃあそういった好景気や統制を受けて、出版社はどのような行動を取ったのか、というのがこの論文のキーポイントになります。
扱っている時期はおよそ80年前ですが、調査をしていて感じたのは、出版統制や軍部の存在がなくても、今後また戦時下のように、児童書出版のありかたが歪んでしまうことは起こりうる、ということです。終戦から長い年月が経ったいまだからこそ、戦時下の児童書出版の変化がなぜ起きたのかを知り、その過ちを改めて教訓とする必要があるのではないでしょうか。
それだけにこの論文は、研究者の方だけでなく、児童書作家や児童書出版社の方々にも広く読んでいただけたらいいな、と願っています。
児童書と比べると非常に値の張る本なので、個人で購入していただくのは難しいかもしれませんが、大きめの図書館などには置いてもらえると思いますので、ご興味のある方はぜひお読みください。
2021年はこの論文に続き、中学年向け、低学年向け、YAとバラエティ豊かな新刊を皆様にお届けできる見込みです。
新年のご挨拶がすっかり遅くなってしまいましたが、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
道ばたに落ちている変わったものをあつめるのが大好きな男の子・ミッチのコレクションが不思議な事件を巻き起こす「ミッチの道ばたコレクション」。そのシリーズ第2作『ドラねこまじんのボタン』が本日発売となりました。
今回ミッチが道ばたで見つけたのは、猫の顔の形をしたボタン。お父さんがそのボタンをミッチのおきにいりの服につけてくれますが、翌朝ミッチが服を着ようとすると、胸ポケットのところに描いてあったアイスクリームの絵がなくなっています。
まさかこのボタンの猫がアイスの絵を食べちゃったんじゃないよね。ミッチはそんなふうに考えて、ボタンをくすぐってみます。するとボタンから青い煙がふきだして、ランプのまじんならぬボタンのまじんが姿を現したのです。
アイスクリームの絵が消えたのは、ミッチが思ったとおりこのまじんのしわざでした。
「ごしゅじんさま、もうしわけないですにゃあ。おいら、ずっとはらぺこで、がまんできなくてつい食べてしまったんですにゃあ」
ボタンのまじんは服に描いてある絵や柄を食べるのだそうです。「おなかいっぱいうみゃいものを食べさせてくれたら、お礼になんでも願いごとをかなえてあげますのにゃあ」といわれたミッチは、まじんのために食べものが描かれた服をさがしはじめますが…。
コマツシンヤさんの描いてくださったボタンのまじんは、とても表情豊かで魅力的です。最初に登場したときは天井に届くほどの大きさでしたが、外にお出かけするときは、下の挿絵のように、服のポケットにはいれるくらいのミニまじんにもなります。

ですがこのまじん、ミッチがお父さんとお母さんにまじんのことを教えようとするのを慌てて止めたりと、なんだかちょっと怪しいところがあります。ボタンのなかにとじこめられていたのにも、なにか理由がありそうです。
ねえミッチ、このまじんのいうことをきいちゃって、ほんとうにだいじょうぶ?
前作『セミクジラのぬけがら』を読んでくださった方からは、物語の最後に出てきたゾウっぽい木のかけらがどうなったのかを知りたい、という声も多くいただきました。そのゾウのことを書こうかな、とも思ったのですが、2作続けて不思議な生きものを育てる話というのも変わり映えしないかと考えて、べつのコレクションの物語を書くことになりました。
ですが、この『ドラねこまじんのボタン』を注意深く読んでいただければ、例のゾウっぽい木のかけらについても、ちょっとした発見があると思いますので、ゾウの続きを期待してくださっていた方も、ぜひ読んでみてくださいね。
ミッチの不思議なコレクションは、今後もさらに増える予定です。『ドラねこまじんのボタン』を読みながら、次のコレクションの物語もたのしみにしていただけたらうれしいです。


