細胞増殖してテロメアの長さが短くなると細胞は増殖できなくなり老化します。これが老化のテロメア仮説です。
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ミトコンドリアは代謝に伴ってできる活性酸素により機能不全をおこしてエネルギー代謝が破綻します。老化のミトコンドリア説です。
https://ameblo.jp/radonrooom-rara/entry-12678927464.html
放射線があたるとテロメアが不安定化します。染色体DNAの損傷が進みp53が慢性的に活性化します。ミトコンドリアDNAも変異して機能不全が進みます。放射線による生体の老化が進みます。
p53は染色体が不安定化して形質転換した細胞の増殖をとめ、自殺機構であるアポトーシスを発動してがん細胞を除去してくれます。こうしてp53は癌の発生を抑えてくれます。
p53はPGC-1を抑制することによりミトコンドリアの老化も促進します。DNA損傷によりゲノムが不安定化した細胞は老化して増殖が停止します。老化は発がんを抑制する防御機構でもあるのです1,2)。
ですからテロメア合成酵素を壊してヒトと同じ老化形質を示すようになったマウスのp53を壊すと老化が抑制され、ミトコンドリアの数が増え、心臓機能の衰えや糖尿病の発症が抑制されます2)。
このマウスは長生きするかというと癌で死ぬので結局は寿命は延びません3)。癌で死ぬのがいいか、老衰で死ぬのがいいのか、p53は究極の選択を迫ります。
癌を防ぐp53は人生を全うして老衰で大往生するための遺伝子でもあるのです。
1) Kelly, Nature 470: 342 (2011)
2) Sahin et al, Nature 470: 359 (2011)
3) Artandi et al, Nature 406: 641 (2000)
馬替生物科学研究所 所長
第1種放射線取扱主任者
馬替純二