当店で取扱の多いレッドウイングもシーズンが終わり変わってビジネスシューズが増えています。
コロナの影響はアパレル関係を含めクリーニング店や我々靴修理業も大きな影響を受けました。
そしてまだ影響は残ったままですね。
在宅勤務も企業によっては継続しているようでまだまだ影響は続くでしょう。
そんなわけでビジネスシューズやパンプスなどいわゆる通勤靴の修理は減ったままですが徐々には回復基調のようです。
前は履いていた靴でも色具合が合わず履かなくなってしまったような靴も外出の頻度が増えたら再登板!です。
そこで黒染めを多くお預かりします。
まずはトリッカーズのボールトン お色は定番のエイコンアンティークです。
よく見る人気のカラーで店主の持っているトリッカーズも半分はこの色です。
ブラックにするとトリッカーズらしさが消えてしまいますがこれはこれで良いと思います。
オリジナルのトリッカーズの黒はカーフをツヤツヤにしてありますがこちらは若干マットに仕上げました。
そしてスコッチグレインのダブルモンクストラップ
こちらもいいお色なんですがブラックに変更です
これ、凄く普通に黒塗りしたように見えますがちょっと違うんです。
よくあるそこらのショップの黒塗りは軽く染料を染み込ませてから顔料を上塗りしています。
それは染料を入れると染料独特の虹色が表面に出てしまうのと染料が雨等で流れ出さないように顔料(いわゆるペンキ)を上から被せて仕上げます。
そうすることで見た目も綺麗で色褪せも少ない仕上がりになります。
でも、顔料が乗っていると靴磨きが出来なくなるんです。靴ブラシで擦ると顔料が剥がれてしまうのでお手入れ出来無くなっちゃいます。
これは致命的ですよね。
まあそんなに直ぐに剥がれませんが塗装皮膜が割れないよう樹脂系の顔料を使っていると後日薄皮がめくれるようになってえらく汚くなるので再塗装になっちゃいます。
そこで当店はちょっと違った染め方をします。
染料を入れる前に乳化剤をまず革に染み込ませます。こうすることでより深く染料が浸透しますのでちょっとくらいぶつけても下地の色が出にくくなります。
乳化剤が乾いたら(正確には半乾き)染料をスプレーガンで吹き付けること数回。
よりムラが出ないよう薄塗りを重ねて濃くしていきます。
そして革のタンナーが使う黒染め染料を重ねます。うっすらと複数回。
このままですと染料の虹色が出てきますので当店独自の最終加工を施すと虹色は消えてしまいます。
この最終工程を踏むので顔料を使わずに仕上がります。
最後に靴クリームで磨いて完了です。
そう、普通にクリームをつけてブラシでゴシゴシです。
カラーリングしたのに靴磨きができるんです。
その辺のショップのカラーリングは皮膜保護のために磨かないで下さいって言われちゃいますが当店の黒染めはガンガン磨いていただけます。
靴磨きをすることで当然革の保護になりますが、磨いているとかかとの摺り減りや糸のほつれなどに気がついて早めに修理に出せるんです。
革の保護と早期の修理で靴の寿命は確実に延びますので靴磨きはとても重要です。
これをご覧の皆さんも是非靴磨きして下さい。
磨き終わると靴が喜んでいるのがわかります。