梅雨本番です。関東は毎日ジメジメとしたお天気なのでちょっと憂鬱になりがちですがこの時期があるからギラギラした夏の元気な太陽の輝きが映えるんですね。
そして美味しい夏野菜たちもこの時期にしっかり養分を蓄え、より美味しくなってくれます。
さて今日はエンジニアブーツのヒール交換です。
お預かりする沢山のエンジニアブーツの多くはオールソール交換ですがヒール交換のみのブーツもあります。
エンジニアブーツは一般的に脱ぎ履きが大変なのでタイトなフィッティングではなくちょっとルーズ気味なサイズを選ぶ方が多いようです。
そのせいで足は上がっているのにブーツは落ちてしまいヒールを引き摺り気味になる事が多いようです。
引き摺るとヒールの摩滅が進むのでヒール交換になりますが、一般的な靴と違ってエンジニアブーツのヒールはちょっと特殊です。
工場で働く人々向けに作られたエンジニアブーツですがハードな労働環境に耐えるべくヒールの固定もかなり強固です。
1本の太くて長い釘でトップヒール、ヒールブロックをまとめて固定しています。
ですから通常のゴムヒールでは釘が固定できず突き抜けてしまうのでヒールの釘穴にはワッシャーが内封されています。
削ってみるとこんな感じ。このワッシャーがあるお陰で釘がきっちり打ち込めます。
こんな長いんですね。 先端が曲がっているのはブーツ内部の中床で釘を曲げて留めているからです。
これを引き抜くので中床には大穴が空いていますから交換の際には中床は必ず補強が必要です。特にレッドウイングのエンジニアブーツ、PTシリーズは中床が合成素材なので確実な補強または交換は必須です。
交換にはビブラムソールの#700または#430を使いますがそれは純正と同様の耐油素材でワッシャーも入っているからなんですね。
ちょくちょく一般のビジネスシューズに使うヒールを使われてしまっている、あるいはこの長い釘を抜かずに削り取ってしまってベージュのヒールブロックを外さずに修理されてしまっているのを見かけます。
一般用のヒールはワッシャーが入っていないので強く釘を打ち込むとあっさり抜けたりちょっとした衝撃でトップヒールが外れます。また、釘を切ってしまっている場合は釘の頭が無いので釘が浮き上がったりヒールブロックが緩んできます。
知らないとはいえこういう修理をするショップは早く消えてしまって欲しいところです。
そしてソールの固定とヒールの取付。
ソールはしっかり中床に固定します。次にヒールブロックは樹脂製なので通常の接着剤は効かないので樹脂に浸透するプライマーで処理してから接着、固定します。
元々の釘穴をよけて固定釘を打ち込んで中床に固定しています。当然ですが元の釘穴は拡がってしまっているので避けるのが普通です。ソールは元釘の外、ヒールブロックは内側にそれぞれ釘を打ち込みます。
しっかり固定されたヒールブロックにトップヒールを接着しますがヒールの接着面は湾曲してしますのでフィッティングを合わせるためにヒールブロック、トップヒールそれぞれの接合面を削ります。画像のヒールブロックの縁1㎝ほどの部分の色が変わっているのは若干テーパーをかけているからです。
また、釘も埋没していますがしっかり追い込んで固定させているからですね。
この面もしっかりプライマーで処理してからトップヒールを接着、釘固定してまわりを削り取って完了です。
トップヒールも元釘を避けますがピッチが同じなので若干前にずらして固定しています。
上記ご案内のようにエンジニアブーツはとても手間がかかりますのでクイック修理は不可能ですね。
ストアインのショップでお買い物している間に仕上げますって修理している所も多いようですが安かろう悪かろうの見本です。
しまいには樹脂ヒールに接着出来なくて瞬間接着剤や木ねじで留めちゃうショップも結構見かけます。
留まってりゃOKなわけないでいからね。そういった修理は後日確実にヒールが取れちゃいます。
一つ一つ手間をかけて仕上げるので時間はかかりますが安心してお渡し出来る方がいいので店主は手間を掛ける方を選んでいます。