26) 8月5日の軽食

第二十六話)　8月5日の軽食

ハジャイ空港でチェックインを済ませると、2015年7月28日と同じように、ターミナル内の軽食屋に入った。
あの日と同じように、バミー (タイのラーメン) とアイスコーヒーのセットを、妙な組み合わせだなと思いながらも頼む。
そしてまた、あの日と同じように、バミーを食べ終えると、アイスコーヒーをテイクアウトのカップに入れ換えて貰い、建屋の外西側の喫煙所に向かった。
2009年11月29日に蘇州の水郷古鎮 同里で買った左手の木変石のブレスレットを眺めながら煙草を燻らせると、南タイ特有の甘く湿った空気がぬめるように頬を通り過ぎて行く。



[バミー (タイのラーメン) とアイスコーヒー，ハジャイ空港，南タイ]　(2018)
Bamii (wheat flour noodle and soup) and iced coffee／Hat Yai


昨夜の内にラップアップを済ませ、南タイツアーは終了した。
ASEAN-T はそれぞれ帰途についている。
夕方までハジャイで過ごしてから移動することにしたので、いつも一緒にバンコクへ戻るメンバーとも別行動としていた。
二本目の煙草に火を点けると、2013年7月28日にパーテームの断崖で聴いた有節歌曲形式の歌がよぎる。

ハジャイ，ソンクラー，ナコーンシタマラート，パッタルン，トラン，サトゥーン ...　　九日間で南タイ 6都市を廻るツアーは、それなりに慌ただしかった。
それでも、2014年に九日間で香港，タイ，シンガポール，マレーシア，シンガポール，インドネシア，シンガポール，タイ，香港と廻った九日間亜州一周ツアーとは、だいぶ心理的負担が違っていた。
2014年の九日間亜州一周ツアーはアウェー感覚だったが、今回の南タイツアーはホーム感が強かった。
ハジャイを基点として、ハジャイから他の都市へという方式を取ったことで、安寧に過ごすことが出来た。



[タイ最大のコーヒーチェーン店 Café Amazon／ハジャイ，南タイ]　(2018)
Café Amazon／Hat Yai


ハジャイは三年振り二回目の訪問で、いずれも友人と行動をともにする時間を多く取ることができた。
それがホーム感覚を醸成したと思う。
見知らぬ土地では、無限に多くの意味の場で、意味の理解がなされぬまま、前景と背景の転換を繰り返す。
友人たちと過ごす内に、多くのことが、理解可能なものとして合一を果たしていた。

ここもまた北回帰線の南だと思うと、"埴生の宿" とその原曲 "Home, Sweet Home" を声に出さずに繰り返す。
胸の内の埴生の宿は、北回帰線の南に在る。


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