旅行記
2007 ①ベトナム縦断 ②マレー半島南下
2008 ③USA~茶色い波頭・青い水平線~ ④青い朝焼け~タイ再訪~
2009 ⑤夢の丘~チェンマイ~ ⑥路地裏のコスモポリタン~バンコク・パタヤー~ ⑦明月照,路迢迢・中国江南
2010 ⑧精彩的城里・中国西塘 ⑨風神雷神~チェンラーイ~ ⑩アユタヤ満月記 ⑪バンコクの休日
2011 ⑫休みの国 ~シンガポール・マレーシア・タイ~
2012 ⑬修羅の郷~ヤソートーン~ ⑭経済成長の彼方~ホーチミン~
2013 ⑮修羅の郷~ヤソートーン~ Pt.2 ⑯ラマダーン月の路地~バンコク~
2014 ⑰八日間亜州一周 (香港⇒タイ⇒シンガポール⇒マレーシア⇒シンガポール⇒インドネシア⇒シンガポール⇒タイ⇒香港)
2015 ⑱中庭のキッチン~南タイ,ハジャイ~ ⑲南へ行こう~シンガポール~ ⑳バンコクの休日 Pt.2
2016 ㉑アウトロー・カントリー~北タイ紀行~
2017 ㉒重力の都 ~カトマンズ~ ㉓ディープなタイに触れる旅 ㉔経済成長の彼方~ホーチミン~ Pt.2
2018 ㉕晝の夢 ~南タイ~
2019 ㉖旅をなぞってはいけない ~チェンマイ・パタヤー~
2020 ㉗終わりから見た夢のように
2022 ㉘エンデミックへの渇望 ~タイ紀行~
2023 ㉙南へ行こう ~シンガポール~ Pt.2 ㉚三度目の暑季 ~タブラ・ラーサ~
音楽記事 … Music Magic Rich Tapestries
RW-25, A Week in the Real World - Part 1/Various
[A Week in the Real World - Part 1/Various] (1992)
1. On the Wing/The Grid
2. Tang Uru/Ayub Ogada
3. I Want Jesus to Walk with Me/The Holmes Brothers
4. It šat Duolmma Mu/Mari Boine and Band
5. Omanarzy/Rossy
6. Picoro/La Bottine Souriante
7. Hibrido/Juan Cañizares
8. Lubanga/Geoffrey Oryema
9. Dodoma/Remmy Ongala & Orchestre Super Matimila
10. Slow Down/The Grid
11. Soledad/Totó La Momposina Y Sus Tambores
12. Mother and Son/Pól Brennan, Joji Hirota, Guo Yue
13. Variations on Tong Sal Puri (Eastern Exorcism)/Samulnori
14. Wuming Wuyi (No Name No Meaning)/Sola
15. The Legend of the Old Mountain Man/The Terem Quartet
[Real World Studio] (1991)
『 これは凄いコンピレーション盤だ 』
本作は、’91年 8月に 20箇国・75人以上のミュージシャンが参加して、英国 Box 郊外に在る Real World スタジオで行われた、”Real World レコーディング・ウィーク”で収録されたコンピレーション盤。様々なバックグラウンドを有するミュージシャン,エンジニア,プロデューサーに作詞家までが集合して、新たなる創造に燃えた一週間の記録である。この作品集でしか聴けない、次のように貴重な楽曲が多数収録されている。
① 初めての組み合わせでレコーディングされた新曲
② 初めてのゲストを迎えて演奏された既存曲
③ 野外の芝生で行われたガラ・コンサートでのライブ録音
④ 純粋なる新作のスタジオ・レコーディング
[ear Cover, A Week in the Real World - Part 1] (1992)
それでは、代表的な楽曲を紹介して行こう。
① 初めての組み合わせでレコーディングされた新曲
・Track-1: イギリスのテクノ・ユニット 2人組 The Grid が、フラメンコ・ギタリスト Juan Cañizares や、元 PIL のベーシスト Jah Wobble、キーボード, サックス奏者 Alex Gifford 等、多くのゲストを迎えて収録した楽曲。
エレクトロニカをバックに、Juan Cañizares がアコースティック・ギターを弾きまくる。この曲を聞けば、生楽器がどれほどエレクトロニカと相性が良いかが分かるだろう。ワールド・ミュージックとテクノが急接近して行く近未来を、暗示した楽曲と言える。正にオープニングに相応しい楽曲だ。
[Juan Cañizares (L) and Arona N’diaye (R)] (1991)
・Track-10: Track-1 同様 The Grid + ゲストによる演奏で、Wendell Holmes (The Holmes Brothers) の歌唱をメインで聴かせる楽曲。テクノ楽曲でこのような歌唱を聞かせるとは、Holmes の懐の広さ深さには全く恐れ入る。レコーディング・ウィークでの The Holmes Brothers の活躍ぶりを示す一曲。
・Track-2: ケニア出身 Ayub Ogada の新曲は、何と The Holmes Brothers を迎えて収録された。東アフリカのバラードに、Holmes のギター,ベース,バック・コーラスは、自然に溶け込んで未体験の音世界を形成している。The Holmes Brothers 恐るべし。
[Ayub Ogada at Gala concert] (1991)
② 初めてのゲストを迎えて演奏された既存曲
・Track-8: タンザニア出身 Geoffrey Oryema の既発楽曲に、ウルグアイ出身の Carlos "Pajaro" Canzani がアコースティック・ギターで参加したライブ演奏。Geoffrey の親指ピアノ Lukeme と Pajaro のギターとが、信じられない程の効果を上げている。楽曲は、初めからこの姿で演奏されるために、存在していたかのようだ。この演奏を聴いてしまったら、既発のスタジオ・バージョンは色褪せてしまった。それほどこの演奏は素晴らしい。
③ 野外の芝生で行われたガラ・コンサートでのライブ録音
・Track-4: Mari Boine and Band のライブ。『なんというビッグ・ボイスの持ち主なんだろう』と驚愕した一曲。これまでに聴いたことが無い唱法で、ppp の囁きから fff での雄叫びまで歌い上げる Mari に、度肝を抜かれたのだ。ノン・ビブラートで数小節間を引っ張り続けるシャウトは衝撃的だった。
その後、この曲のスタジオ・バージョンを聴いたときには、ライブ並みの迫力を期待していたので、少々抑制が利いた歌唱に拍子抜けしてしまった。良いのだけれども物足りない。それは、Deep Purple の “Live in Japan” を先に聴いてから、”Machine Head” を聴いたときと同じ感覚だった。ライブの迫力の方が勝っていたのだ。
・Track-11: Totó La Momposina Y Sus Tambores のライブ。レコーディング・ウィーク後に出演した WOMAD ’91 横浜でのパフォーマンスの記憶が蘇る。観客たちが、すぐ近くで歌い踊る姿が目に浮かぶ。彼女たちの、最盛期のパフォーマンスを観られた幸運に感謝する。
[Mari Boine and Band at Gala concert] (1991)
[Guo Yue (L) and 廣田丈自 (R) at Gala concert] (1991)
④ 純粋なる新作のスタジオ・レコーディング
このレコーディング・ウィークからは、6つの新作と、1つのコンピレーション盤 (本作) の、7つのアルバムが誕生した。
新作
・RW-21, Jubilation by The Holmes Brothers
・RW-22, Mambo by Remmy Ongala & Orchestre Super Matimila
・RW-23, Terem by The Terem Quartet
・RW-29, Majurugenta by Ghorwane
・RW-31, La Candela Viva by Totó la Momposina
・RW-32, Trísan by Trísan
[The Terem Quartet and Peter Gabriel (bottom)] (1991)
これらの作品中で、レコーディング・ウィークのメリットを最も活用しているのは、The Holmes Brothers “Jubilation” だと思う。
Holmes は、タンザニアの Remmy Ongala バンド のギタリスト 3人を迎えて、ゴスペルを披露している。スーク―ス・ギターとの共演は、アルバムのハイライトとなっている。観衆を入れたスタジオ・ライブでのギター・ソロの応酬は、大いに盛り上がっていた。
さらには、サミー・ノルディック Mari Boine, UK インディア Sheila Chandra によるコーラスを収録した楽曲や,Guo Yue の中国の横笛との共演も収録されており、異色のゴスペル楽曲が聴ける。
前出①の The Grid,Ayub Ogada の新曲や、自らのアルバムでの他のミュージシャンとの交流等、The Holmes Brothers はレコーディング・ウィークで最も活躍し、且つ最も恩恵を受けたミュージシャンだと思う。ワールド・ミュージックのイベントで、ゴスペル・グループの活躍が際立っていたとは、いかにも Real World らしいエピソードだ。
以上のように、20箇国・75人以上のミュージシャンが、新たなる創造に燃えた一週間の記録を、是非とも聴いていただきたい。
[The Holmes Brothers & Congolese guitarists] (1991)
[Peter Gabriel on Keyboard] (1991)
Real World #01~25 の紹介記事のあとがき
ワールド・ミュージックの洗礼を受けた日々を思い出しながら、この夏は ’89~’92年の Real World 作品を聴いて過ごした。初期の 25作品の一つひとつを手に取る度に、初めて聴いた日の感覚が蘇って来た。自身の音楽に対する関心の対象領域が、加速度を上げて拡がって行くことへの期待感と高揚感を思い出したのだ。
初期の Real World 作品は、世界各地の音楽を世の中に紹介する役割が強かったと思う。既存音源そのもののリリースや、欧米向けに少々モディファイした作品のリリースで、その役割を果たしていたと思う。その流れが変わって来たと感じたのは、’91年の Real World レコーディング・ウィーク以降の作品だった。RW-25, “A Week in the Real World - Part 1” 収録の ①初めての組み合わせによる新曲や ②初めてのゲストを迎えた既存曲で聴ける新しい音楽の創造が、さらなる存在理由になったと感じたのだ。最初から意図されていたことが、その時期にリスナー側からも見えるようになったのだと思う。
Real World レコードのカタログ・ナンバーは、2024年 5月にリリースされた Bab L' Bluz の新作で、259番に達した。又機会を作って、RW-26 以降の作品も紹介していきたい。
[#1402]
RW-24, … My Ancestors' Voices/Sheila Chandra
[Weaving My Ancestors' Voices/Sheila Chandra] (1992)
1. Speaking in Tongues I 2. Dhyana and Donalogue
3. (a) Nana, (b) The Dreaming
4. Ever So Lonely / Eyes / Ocean
5. The Enchantment 6. The Call 7. Bhajan
8. Speaking in Tongues II 9. Sacred Stones
10. Om Namaha Shiva
『 本人による詳しい曲解説があるのは、とてもありがたい 』
ライナーノートには、Sheila Chandra 本人による全曲の解説が載っていた。曲の成り立ち,その曲で用いた唱法,どのような思いが込められているか等、詳しく記述されている。歌手以外には書けない専門的な内容が、初心者にも分かり易く記述されているのだ。今になって思えば、2009年に歌手を引退した後、文筆業に転身しただけのことはある。
[Third Eye/Monsoon] (1983)
Sheila Chandra は、ライナーノートに 「声は最初にして究極の楽器である」,「声は血流とつながっている」,「声は生物学的に全ての人に共通するものである」 と書いていた。楽器とは異なる声の特性について、ご自身の言葉で力強く記している。その記述通り、本作全曲を通じて、Sheila Chandra の声が堪能できる。伴奏は控え目なドローンだけで、正に歌を聞かせる作品なのだ。邦盤には、Seila の意を汲んだかのようなサブタイトル "遠き彼方の記憶を呼び覚ます10の歌声" が冠されていた。
プロデューサーは、Monsoon 時代からのパートナー Steve Coe。10曲中 8曲は Sheila Chandra と Steve Coe の共作である。Monsoon 時代の楽曲 "Ever So Lonely / Eyes" の再演が収録されているのには、アルバム中での曲配置を含めて、込められた意味が有るのだろう。
[Ever So Lonely/Monsoon] (1981)
Sheila Chandra は、WOMAD '92 横浜で来日を果たした。そのときは都合がつかず、残念ながらステージを観ることは叶わなかった。その後、WOMAD 横浜はいつの間にか開催されなくなり、Sheila Chandra の Real World 三部作が '96年の "ABoneCroneDrone" をもって完結してからと言うもの、消息を聞くことは殆ど無くなった。
そんなある日、英国で "Ever So Lonely" の Jakatta (DJ Dave Lee) によるカバー "So Lonely" がトップ 10ヒットとなった。何と、このバージョンには、Sheila Chandra のオリジナル・バージョンでのボーカル・トラックが使われていた。"So Lonely" を聴く度に、機会が有れば Sheila のステージを観に行きたいという気持ちが、沸々と湧き上がって来たのだった。
[So Lonely/Jakatta] (2001)
WOMAD 2007 シンガポールに Sheila Chandra が出演すると知り、丁度都合が付くので観に行くことにした。とても楽しみにしていたのだが、会場に付いた私を待っていたのは、Sheila 病欠の知らせだった。
病気とは BMS (burning mouth syndrome, 舌痛症) で、それがもとで Sheila Chandra は 2009年に歌手活動からの引退を決めてしまった。何とも残念だ。
[Womadness Singapore 2007: Ten Years of Real Music] (2007) "Ever So Lonely / Eyes / Ocean" 収録
Sheila Chandra は、歌手引退後は文筆業に転身して、Self-Help Books (いわゆる自己啓発本) を執筆している。"Banish Clutter Forever – How the Toothbrush Principle Will Change Your Life" (2010) は、邦訳本 "歯ブラシの法則" が出版されているので、いつか読もうと思っている。
[#1401]
RW-23, Terem/The Terem Quartet
[Terem/The Terem Quartet] (1992)
1. Lyrical Dance 2. Fantasy
3. The Legend of the Old Mountain Man 4. Cossack's Farewell
5. Toccata 6. Variations on Swan Lake 7. Simfonia Lubova
8. Old Carousel 9. Two-Step Nadya 10. Tsiganka
11. Letnie Kanikuli 12. Country Improvisation
13. Valenki 14. Barnynia
『 Real World にしては、いいジャケットだな 』
楽器を掲げたメンバーの逆光写真が気に入った。これまでの Real World 作品のジャケットは、良いデザインだと思えなかった。皆既日食や地表の写真,ミュージシャンや動植物の不自然なアップ,そして両者の組み合わせは、全く良いと思えなかったのだ。許容できたのは、Papa Wemba と The Saburi Brothers 作品ぐらい。今回の “Terem” は、Real World 作品にしては、いい写真だと思った。
[Inner Photo, Terem/The Terem Quartet] (1992)
The Terem Quartet は、ロシア,サンクトペテルブルグ出身の 4人組。バヤン (ロシア式アコーディオン) が 1台,ドルマ (リュート系,3~4弦) がアルトとソプラノ各 1台,低音担当のバラライカ 1台のカルテット編成。
バヤンは、トレモロ・リードの無い、ロシア式のクロマティック・アコーディオン。本作では多彩な音色を聞かせてくれる。
ドルマは、バラライカの三角ボディに対して、丸いボディが特徴的だ。バラライカは指弾きだが、ドルマは主にピックで弾くそうだ。バラライカ同様に、トレモロ奏法やピチカート奏法が聞ける。ピック弾きのバラライカという印象を受けた。
低音担当のバラライカは、底部にエンドピンを備えたコントラバス・タイプ。このように巨大なバラライカがあるとは知らなかった。とても持ちにくそうなので、どうしても三角形じゃないと駄目なのかなと、少々疑問を感じてしまった。アコースティック・ベース・ギター然とした音が聞ける。
[The Terem Quartet] (1991 or 1992)
収録曲は、ロシア民謡にクラシックから,ポピュラーまで幅広い。このカルテットには、オリジナル曲ですら、どこかで聞いたことがあると感じさせる何かが有る。ペンタトニックでの下降メロディーに長二度音程を重ねて弾いたフレーズにも、ロシアを感じる。カルテットが使うロシア楽器の響きが、聴く者にロシアを感じさせるのだろう。
それにしても、ザ・ピーナッツ “恋のバカンス” が収録されているのには驚いた。この曲は度々ロシアでカバーされていて、”恋のバカンス” を直訳した曲タイトル ”カニークルィ・リュブヴィー” として、スタンダードになっているそうだ。作曲者のクレジットを見ると、宮川泰氏のローマ字表記が Miagava になっている。ロシア語のキリル文字表記をラテン文字に置き換えるとそうなるのだろうか。致し方ないとしか言いようがない。
[Rear Cover, Terem/The Terem Quartet] (1992)
“Terem” は、’91年 8月の Real World レコーディング・ウィークに製作された。’91年 8月と言えば、The Terem Quartet の母国でクーデターが発生した月だ。彼らは、どのような思いでレコーディングを行っていたのだろうか。私にはそれを聴き取ることはできないが、母国の人々にとっては特別な作品に聞こえることだろう。
[2000th Concert Live/The Terem Quartet] (2008) 彼ら自身のレーベルからのリリース.まるで Real World 作品のようなデザイン
Terem Quartet は、メンバー・チェンジを経て、現在も活動を続けている。将来、彼らの来日公演が楽しめる日が来ることを願う。
[#1400]
RW-22, Mambo/Remmy Ongala
[Mambo/Remmy Ongala & Orchestre Super Matimila] (1992)
1. Dodoma 2. One World 3. I Want to Go Home
4. Inchi Vetu 5. What Can I Say? 6. No Money, No Life
7. Living Together 8. Mrema 9. Kidogo Kidogo
『 去年の WOMAD '91 横浜でやった新曲が入ってるな 』
タンザニアの Remmy Ongala & Orchestre Super Matimila が ‘92年にリリースした新作には、前年の WOMAD 横浜で披露した新曲 “One World”,”I Want to Go Home” が収録されていた。
この二曲は英語歌詞だったのと、Bob Marley を思わせるレベル・ミュージックだったので、記憶に残っていた。洗練されたスーク―ス・サウンドと、腰蓑ルックに瓢箪ネックレスのいで立ちのコントラストとともに、理想を歌う姿は、一年を経ても印象に残っていたのだ。
[WOMAD '91 横浜] (1991) 二日目 8月31日のメイン・ステージに出演
本作では、英語歌詞の楽曲が半数を占めている。‘91年の WOMAD ツアーと Real World レコーディング・ウィークでの経験が、英語歌詞に向かわせたのだろうか。
それは、より多くの聴衆,ミュージシャンとコミュニケーションをとるための手段に思えた。
[RW-224, Worldwide: 30 Years of Real World Music] (2019) Remmy Ongala は Real World レコード 30年の歴史を代表するスター
一作目と比べると、スーク―ス・ギター・アンサンブルを、よりくっきりと聴き取ることができる。3人のギタリストをシンプルに左・右・中央に定位させた音像は、リスナーの期待に応えたものと言える。プロデューサー Rupert Hine の作り出した音からは、音数の多いバンド演奏をすっきりと聴かせる巧みさを感じた。
Rupert Hine は、本作の前に Rush 作品をプロデュースしている。当時の Rush は、キーボード中心の音作りが過剰気味だったが、Rupert プロデュースによる “Presto”, ”Roll the Bones” で、すっきりしたギター中心のサウンドに整えられた。Remmy Ongala 及び Rush ファンの自分にとって、Rupert Hine は名プロデューサーだ。
[Roll the Bones/Rush] (1991) Rupert Hine プロヂュース作品
“Mambo” に続く Remmy Ongala 作品 “Sema” は、Real World ではなく、WOMAD Select レーベルからリリースされた。このレーベルは、WOMAD フェスティバルを代表するアーティストを紹介する目的で設立されたもので、よりコレクター向けと言える。そのレーベルの第二弾として、”Sema” がリリースされた。
第一弾は WOMAD 出演者の作品を集めたコンピレーション盤だったので、”Sema” は実質的に最初のリリース作品と言える。新レーベルをスムーズに立ち上げるために、Remmy Ongala を移動させたのではないかと思った。その後、WOMAD Select レーベルは2001年をもって残念ながら解散したが、”Sema” は iTunes ショップで Real World 作品として購入することができる。
[Sema/Remmy Ongala & Orchestre Super Matimila] (1995)
Remmy Ongala は 2010年にタンザニア,ダルエスサラームの自宅にて、63歳で逝去された。その後 2012年のタンザニア・ミュージック・アワードで、殿堂入りトロフィーが授与された。レベル・ミュージックの Remmy Ongala が、祖国で殿堂入りを果たしたのだ。WOMAD ’91 横浜のステージを思うと、とても感慨深かった。
[#1399]