2024年 第8戦 モナコGP | Glass Labyrinth

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僕の視点からF1での Ferrari のレースと Formula1 Grand Prix について書いてみます。

F1第8戦はモナコグランプリでした。いまだにモナコグランプリの週末になると、一瞬木曜日にフリー走行があるんじゃないかとそわそわしてしまいます。モナコも変わりますし、実際変わりましたが、色々な事情で変えられないところもあります。世界3大レースが岐路に立っています。
 

 

/*・・・Preparation:コースとタイヤ・・・*/

シルキュイ・ドゥ・モナコ(モナコ)

 

(Formula 1®から抜粋)

 

コース長:3.337 km

レース距離:260.286 km(78 laps)

特徴:・狭く曲がりくねった低速市街地サーキット

   ・グランプリサーキットで最短のコース長。レース距離は260 kmにされている

   ・路面はバンピーでアンジュレーションもある

   ・ほとんどのコーナーが低速コーナーで、高速コーナーはない

   ・主なオーバーテイクポイントなし

タイヤのコンパウンド:C3〜C5(やや軟らかい〜非常に軟らかい)

 

 

/*・・・Qualifying:予選・・・*/

PP 16 C・ルクレール(フェラーリ)

2位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

3位 55 C・サインツ(フェラーリ)

4位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

5位 63 G・ラッセル(メルセデス)

6位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

7位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

8位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)

9位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

10位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

11位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

DQ 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

12位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)

13位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

DQ 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

14位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

15位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

16位 11 S・ペレス(レッドブル)

17位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)

18位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)

 

DQ:Disqualified/予選不通過。

 

Pole Position Time:1:10.270(170.96 km/h)

Fastest Lap Time Throughout the Weekend:PP Time と同じ

 

 

/*・・・Race:決勝・・・*/

WIN 16 C・ルクレール(フェラーリ)

2位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

3位 55 C・サインツ(フェラーリ)

4位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

5位 63 G・ラッセル(メルセデス)

6位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

7位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

8位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)

9位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

10位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

11位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

12位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)

13位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)

14位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

15位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

16位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)

17位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

Ret 11 S・ペレス(レッドブル)

Ret 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

Ret 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

 

Ret:Retire/リタイア。

 

Winner's Time:2:23:15.554(109.01 km/h)

Fastest Lap Time:1:14.165(161.98 km/h @lap 63)

44 L・ハミルトン(メルセデス)

 

 

/*・・・Summary:念願・・・*/

優勝はルクレールでした。通算6勝目(通算PP数は24回目)。ようやくルクレールはモナコで優勝できました。これまでモナコでは2度PPを獲得しながらいずれも優勝できませんでしたから、本人としても是が非でも勝ちたかったことでしょう。モナコはルクレールの地元ですからなおのことです。

 

ルクレールは、モナコでは毎年フリー走行からいい走りをするのですが、今年も例にもれず、金曜日からPPの有力候補(つまり優勝候補)であることを誇示し続けました。そして注文通りのPPを獲得した後、決勝は実質タイヤ無交換レースとなったことも手伝って危なげなく優勝をさらっていきました。レースペースも良くて、ペースを上げたければいつでも上げられる余裕を見せていました。素晴らしかったです。

 

サインツは3位に入り、フェラーリは1-3フィニッシュを達成しました。サインツは2015年のF1デビュー以来毎年モナコで入賞している、ある意味モナコマイスター(※)ですが、今年も3位という記録を残しました。でもぼくはサインツには2位を期待していたので、そこは少し心残りですかね。おそらく本人も2位以上を狙っていたのでしょうが、それがスタートで少しばかりアグレッシブな動きとなって現れてしまい、サン・デボート(ターン1)でピアストリと接触してタイヤを壊し、カジノ前でコースアウトしてしまいました。危うく入賞記録が途絶えるところでしたが、スタート直後にレッドフラッグが出たことで再スタート位置が元に戻されたために救われました。ある意味、レッドフラッグを出してくれたドライバーたちには感謝したいところでしょう。

 

2位はピアストリでした。ピアストリは本当に予選が得意ですね。あと0.16秒で念願のPPに手が届きそうでしたが、惜しかったです。ただ決勝では、ルクレールのラストスパートについていけなくなり、なんとかサインツに抜かれずに済んだようにも見えました。モナコというトラックがピアストリを守ってくれたのでしょうかね。

 

4位にはノリスが入り、マクラーレンは2-4でした。ノリスもバトル上等感を出していてサインツを攻め立てていて好戦的でしたが、やはり抜くには至りませんでした。でもピアストリとノリスの2人のレースを見る限り、マイアミ以降のマクラーレンは明らかに1段階速くなっていますね。今回はフェラーリに敗れましたが、フェラーリと立場が反対の展開も十分あり得たと思います。

 

5位にはラッセル、7位はハミルトンが入ってメルセデスは5-7となりました。かつての栄光の時からすると大したことのない結果ですが、まさかレッドブルに勝てるとは思いませんでした。メルセデスの2人はレッドフラッグ後、ミディアムタイヤでの再スタートとなりました。これを見て正直、この人たちは途中でタイヤ交換もあり得るかなと思いましたが、ラッセルはトップの4人をはるかに下回るレースペースでドライブし、無交換で完走してしまいました。一方ハミルトンは途中でタイヤを交換し、フェルスタッペンもそれに続いたのでアンダーカットできそうでしたが、タイヤ交換直後まったくペースを上げる素振りはなく、不思議な戦略でした。

 

6位はフェルスタッペンでした。フェルスタッペンは、今回は予選までにマシンをまとめ上げられなかったことに尽きますね。いつもなら土壇場でマシンを合わせ込むのが得意なはずなのですが、何をやってもマシンがモナコにまったく合わなかったようで、Q3の最後のアタックもサン・デボートの出口でガードレールに接触して終わってしまいした。レースでもラッセルを追走するだけで、他には何もできなかったようですね。

 

(※)モナコマイスター

モナコを得意とするドライバー。通常は、モナコで複数回の優勝(通例では3勝)を飾ったことのあるドライバーを指す。個人的には、その基準は4勝以上が適切だと考えているが、それを満たしているのはアイルトン・セナ(6勝)、グラハム・ヒル(5勝)、ミハエル・シューマッハ(5勝)、アラン・プロスト(4勝)のわずか4人しかいない。基準を3勝以上とすると、スターリング・モス、ジャッキー・スチュワート、ニコ・ロズベルグ、ハミルトンの4人がそこに加わる。

 

 

/*・・・Topic:世紀の凡戦・・・*/

まず最初に言っておきますが、今回のレースがどんなレースだったとしてもルクレールの優勝の価値が失われることはいささかもありません。その上で、このレースが少々残念だったことも隠すことはできないでしょう。

 

結果を見れば分かるように、今回はトップ10の予選結果とレース結果がまったく同じという珍事が起こってしまいました。オーバーテイクはもちろん、順位変動すらなかったのです。上でも触れたように、スタート直後にレッドフラッグが出たことで、ほぼすべてのドライバーが再スタートでタイヤ交換義務を果たしてしまい、実質タイヤ無交換レースとなってしまったことがその最大の原因です。もし通常のレース展開であったならば、少なくともオーバーカットなりアンダーカットなりが行われて順位の逆転もあり得たと思うのですけどね。

 

それでなくてもモナコは十分遅くドライブしても抜けないコースなので、マンダトリーのピットストップでも設けなければこういったことは起こり得ることでした。これでもマニアックな見方をする人なら楽しめたかもしれませんが、それ以外の多くの人にとってはまったく面白みが感じられなかったと思います。ただでさえ高いモナコの観戦料あるいはホテルのルームチャージを払った人は不満だったかもしてませんね(もちろん週末通しで100万円以上はします)。まあ、モナコの常連の富裕層の方々には、そんなことでぐちぐち文句を言うような金払いの悪い人はいないでしょうけど。

 

まあ、今後もモナコでグランプリを開催するとすれば、今回のことを教訓に何かを変える必要があるのは明らかでしょう。レース距離も、グランプリで唯一305 kmを下回る260 kmで行われているので、モナコだけ特別なルールを作ることにはそれほど抵抗感はないはずです。モナコ専用ルールを設けるのは悪くないと個人的には思います。

 

では、具体的にどこに手を入れるか。例えば手っ取り早いのはタイヤでしょう。モナコだけに限らないですが、市街地レースが増えているので、パーマネントサーキット用のタイヤセットと市街地トラック用のセットを分けて用意するのです。パーマネントサーキット用のC5(最も軟らかいタイヤ)と市街地の最も硬いタイヤ(CC1 = Compaund for City circuits)と同じにしてCC1〜CC4を用意するとか。この場合は、モナコだとCC2〜CC4がアロケートされることになるでしょうかね。CC4は平均時速150 km/hで走行してもデグラデーションが相当大きなものにするとかに設定したら、タイヤ交換を含めた見所は増えると思います(タイヤ交換はF1の大きな見所の1つです)。ただ、ピレリの負担は増えてしまいますけどね。

 

でも、これでは根本的な解決になっていないというか、追い抜き自体が増えるとは限らないので不満だと思われる方もいると思います。追い抜きを増やすにはもうコースを見直す、つまり伝統的なトラックとの決別が必要になるでしょう。とは言っても、ぼくの知る限り、現行でピットが隣接するアルベール1世通り(ホームストレート)を使うことをデフォルトとすると(あの辺りはモナコにしては広大な土地なので、ピットを設営するにはうってつけの敷地です)、最終コーナー側にストレートは延長できないですし、やはり大きな追い抜きポイントを設けるコースを造るのは難しいかもしれません。王宮のあるモナコ市街地区を含めてアルベール1世通りよりも広い通りはどこにもない上、ずっとトンネルの中でレースすることもできませんからね(モナコで広い道はほとんどトンネルです)。

 

モナコでのグランプリ存続自体もそうですが、レーストラックの再考についても本当に難しい問題です。まあ、誰もコースを変えなければならないと言っている訳ではないんですけどね。

 

 

/*・・・Next:カナダ・・・*/

次回は再び北米へ飛んで、カナダグランプリです。舞台はジル・ヴィルニューヴ・サーキットです。公道を利用したトラックですが、モナコとは反対に長いストレートが複数あり、比較的バトルも見られます。またモナコと違ってコース脇はコンクリート・ウォールがそびえているので、接触は即リタイアとなり得ることもあって、セーフティカーが入ったり荒れる展開になることが多いです。

 

また、ここはストレートをヘアピンやシケインで繋いだようなレイアウトなので、いわゆるストップ・アンド・ゴーの性格が色濃いです。ただ、ストップ・アンド・ゴーということは必然的に燃料使用量が多くなるので、フューエルマネジメントが入るとあまり楽しくない展開となってしまいます。そういう意味で、長いストレートがある割にはオーバーテイクはそこまで多く期待できないかもしれません。

 

** 2023年シーズン結果 ******

Pole-sitter:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

Winner:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

Fastest lap:11 S・ペレス(レッドブル)

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昨年はフェルスタッペンが雨がらみの予選を制し、決勝も無難にこなしてポール・トゥ・ウィンを決めました。圧倒的なPPタイムを刻んだ割には、レースで2位以下を10秒以上突き離すことはできませんでした。2位以下を何秒離したかを問題にしている時点で、つくづく昨シーズンは異常なシーズンだったなと感じます。ただ、ポディウムに上がった3人が全員チャンピオン経験者で、特にアロンソとハミルトンのバトルはとても切迫感があって面白かったなと思います。

 

オーバーテイクやバトルがたくさんあるレースが見られたらいいなと思います。