F1第5戦は中国グランプリでした。2019年以来、5年ぶりの開催となります。この5年間、何度も復活すると言われては潰えてきましたが、とうとう開催できる運びとなりました。そんな中での、今シーズン初のいわゆるスプリント・フォーマットでの開催となりました。何年もドライブしてない上にマシンも変わったことでチームにも使えるデータがない中、マシンのセッティングに使えるフリー走行は60分1回のみです。なかなか無茶するものですね。そこまでして不確定要素を演出しなくてもなぁ、とも思います。それとも、ここまでしないと面白い展開が見られないのでしょうか。
/*・・・Preparation:コースとタイヤ・・・*/
シャンハイ・インターナショナル・サーキット(シャンハイ)
(Formula 1®から抜粋)
コース長:5.451 km
レース距離 :305.066 km(56 laps)
特徴:・主に中低速コーナーで構成される中速サーキット
・長時間ハンドルを切ったまま回り込むコーナーが多い
・開催時期的に低温になることが多い
・グランプリサーキットでも屈指のロングストレートがある
・主なオーバーテイクポイントはターン6とターン14
タイヤのコンパウンド:C2〜C4(標準的なセット)
/*・・・Sprint Qualifying:スプリント予選・・・*/
TOP 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)
2位 44 L・ハミルトン(メルセデス)
3位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)
4位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)
5位 55 C・サインツ(フェラーリ)
6位 11 S・ペレス(レッドブル)
7位 16 C・ルクレール(フェラーリ)
8位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)
9位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)
10位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)
11位 63 G・ラッセル(メルセデス)
12位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)
13位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)
14位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)
15位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)
16位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)
17位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)
18位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)
19位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)
20位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)
SQ3 Top Time:1:57.940(166.39 km/h)
/*・・・Sprint:スプリント・・・*/
WIN 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)
2位 44 L・ハミルトン(メルセデス)
3位 11 S・ペレス(レッドブル)
4位 16 C・ルクレール(フェラーリ)
5位 55 C・サインツ(フェラーリ)
6位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)
7位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)
8位 63 G・ラッセル(メルセデス)
9位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)
10位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)
11位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)
12位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)
13位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)
14位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)
15位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)
16位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)
17位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)
18位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)
19位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)
20位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)
Winner's Time:32:04.660(193.37 km/h)
Fastest Lap Time:1:40.331(195.59 km/h @lap 3)
1 M・フェルスタッペン(レッドブル)
/*・・・Qualifying:予選・・・*/
PP 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)
2位 11 S・ペレス(レッドブル)
3位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)
4位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)
5位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)
6位 16 C・ルクレール(フェラーリ)
7位 55 C・サインツ(フェラーリ)
8位 63 G・ラッセル(メルセデス)
9位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)
10位 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)
11位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)
12位 3 D・リカルド(RB・レッドブル)
13位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)
14位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)
15位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)
16位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)
17位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)
18位 44 L・ハミルトン(メルセデス)
19位 22 角田裕毅(RB・レッドブル)
20位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)
Pole Position Time:1:33.660(209.52 km/h)
Fastest Lap Time Throughout the Weekend:PP Time と同じ
/*・・・Race:決勝・・・*/
WIN 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)
2位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)
3位 11 S・ペレス(レッドブル)
4位 16 C・ルクレール(フェラーリ)
5位 55 C・サインツ(フェラーリ)
6位 63 G・ラッセル(メルセデス)
7位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)
8位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)
9位 44 L・ハミルトン(メルセデス)
10位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)
11位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)
12位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)
13位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)
14位 24 ジォ・G(キックザウバー・フェラーリ)
15位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)
16位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)
17位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)
Ret 3 D・リカルド(RB・レッドブル)
Ret 22 角田裕毅(RB・レッドブル)
Ret 77 V・ボッタス(キックザウバー・フェラーリ)
Ret:Retire/リタイア。
Winner's Time:1:40:52.554(161.27 km/h)
Fastest Lap Time:1:37.810(200.63 km/h @lap 45)
14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)
/*・・・Summary:失望・・・*/
優勝はフェルスタッペンでした。オーストラリアで土がついた後、日本で復活してまた連勝街道に乗っていきそうですね。しかも今シーズンまだ1度もPPを逃したことがないというのも素晴らしいです。この点においては昨シーズンよりもかなり進歩していますね。昨年ぼくが注文をつけたことを気にしている訳ではもちろんないでしょうが、この調子で行くと勝率はともかく、PP奪取率は昨シーズンを遥かに上回り、名実ともに1988年のマクラーレンの記録を凌駕しそうな勢いです。フェルスタッペンは本当に実直と言うか、真摯で努力を惜しまない素晴らしいドライバーですね。
ちなみにチームメイトのペレスは3位でした。レッドブルの2人ともがスプリントとグランプリレースで同じ順位だったのは面白いですね。ペレスはルクレールを抜くのに手こずり、ノリスを追いかける頃にはタイヤが残っていなかったようです。裏を返せば、ペレスはタイヤを使わないと抜けないオーバーテイクをしているということです。反対にフェルスタッペンは、極力タイヤを使わないで抜くことができるので、後方からのスタートでも余裕でトップに立つことができるんだと考えられます。タイヤのライフの総量は誰にとっても同じですからね。この辺りにも、彼らの間にまだまだ大きな差があるように感じられます。
2位はノリスでした。今回はスプリント予選でも見せてくれましたし、グランプリレースでも輝いていました。とは言っても、フェルスタッペンから14秒弱ほど引き離されてはいましたけどね。やはり現状、フェルスタッペンがいる限り、ノリスの初優勝はまだまだ先の話となってしまうんでしょうか。他にノリスにできることは、今よりもミスをできる限り少なくして、いざというときに勝てる位置にいることくらいです。それがいつになるか、楽しみに待っておくことにしましょう。
同じマクラーレンのピアストリは8位でした。やはり速さはあるものの、305 kmのレースとなるとまだまだに感じます。彼の高い評価からするともうそろそろレースでの強さの片鱗を見せてもいい頃合いですが、なかなかそうはいかないようですね。近年はシミュレーションでたくさんドライビングが経験できるようになったとはいえ、実走でないと掴めない「コツ」のようなものもあるのでしょうか。例えばぼくはタイヤの使い方に関しては、シミュレーションで学ぶのは難しいように感じます。確かに最近はシーズン中のマシン開発テスト走行は基本できなくなっただけでなく、スプリントやら何やらでフリー走行の時間まで減っていますから、実走で掴めるものも掴みにくくなっている可能性はあると思います。
そしてフェラーリですが、ルクレールが4位、サインツが5位となりました。予選もルクレールが6位、サインツが7位と、仲良くマクラーレンの2人の後塵を拝しました。スプリントではマクラーレンを下しましたが、ノリスのスタート直後のミスがなければ、おそらくフェラーリのどちらも彼を上回れなかったんじゃないかな、と思います。
確かに今シーズンのフェラーリはデグラデーションが減り、タイヤのコントロールが容易になったように見えます。でも、これはより正確に言えば、タイヤ温度の上限の管理がしやすくなっただけということではないのでしょうか。つまり今回のような低温環境だと、タイヤの作動温度の下限に収められず、タイヤのフルパフォーマンスが発揮できなかったのかもしれません。反対にマクラーレンは低温は苦にならなかったので、ノリスの好走に繋がったという訳です。ざっくり言えば、マシン特性の差が出たんですね。でもレッドブルとフェルスタッペンがどんな環境でも速いことを考えれば、フェラーリにはまだまだやるべきことが多いということです。
それはともかく、今回最も失望したのはサインツでした。それはもちろん、スプリントでチームメイトのルクレールをコース外に押し出すように接触したからです。運よくルクレールは走行を続けることができましたが、1つ間違えばクラッシュしてフェラーリの2人ともリタイアということもあり得ました。他のチームのドライバーにならしてもいいという訳ではもちろんありませんが、よりによってなぜチームメイトに意地を張ってチームの努力を水泡に帰すようなことをするのか、意味が分かりません。しかもこの接触した時のサインツは手負いの状態であったにもかかわらず、すぐ背後のルクレールに道を譲るどころか、対抗心剥き出しで抜かせないようにしたことはまったく無意味でした。
ぼくは接触しない限り、チーム内で激しいバトルをしてもいいと思います。昨シーズンのモンツァ(イタリア)なんかはすごく面白いバトルで、見ていて興奮しました。ぼくはフェラーリに来る前からサインツの活躍は高く評価していましたし、来ると分かった時はフェアで速く勝負強いドライバーが加わると思って嬉しく思いました。それだけに今回の一件でぼくは本当に失望しましたし、正直これを書いている今でもまだ頭にきています。
でも、そんな優秀なサインツがどうしてこんな愚行をしてしまったのか。これはぼくの推測ですが、サインツは単にプライドで負けたくなかったというだけではなく、来シーズンの「就職活動」の一環として就職先に「俺はルクレールよりも速いんだ」とアピールしたかったのかもしれません。でももしそうだとすると、今回のこの振る舞いは逆効果になるでしょう。なぜなら、自分の利益のためならチームメイト、ひいてはチームとその家族をも犠牲にしてしまえ、という自己中心性が見えるからです。これはチームにとっては単なる危険因子です。いくら速さがあるとはいえ、今日日そんな火種を持ったドライバーを欲しがるチームがあるでしょうか。老婆心ながら言っておきますが、もちろんぼくはサインツの契約内容は知りませんが、スクーデリアはサインツの契約の解除をためらうほどお金には苦労していません。もしぼくの推測通りであるなら、今からでも遅くないので考え方を改めてほしいです。
そうは言っても、確かに、まったく悪くない働きをしているにもかかわらず来シーズンのチームに居場所がなくなってしまったサインツには同情します。でも、サインツとハミルトンを天秤にかけた時、その実績を見てもネームバリューを考えてもハミルトンには敵いません。そう考えるとスクーデリアがハミルトンを選んだ理由は分かります。反対に4年前、フェラーリとマクラーレンを天秤にかけてフェラーリを選んだのはサインツ本人です。おそらくそのネームバリューと成功のしやすさ、報酬などを見て選んだのでしょう。決して自分だけが被害者ではありません。F1はそういう世界です。頭のいいサインツなら分かっているはずですよね。最後まで円満に行きたいものです。
/*・・・Next:マイアミ・・・*/
次回はマイアミグランプリです。今回で3年目ですが、相変わらず人気は高いようですね。でも1年で3回もアメリカでグランプリをするなんて、いつまで続けられるのでしょうか。正直ぼくは現在のF1は、コンテンツとしての能力以上の評価を受けているように思っています。言ってみればリバティメディアが人工的に作り出したバブルみたいなものでしょう。またアメリカンフットボールやバスケットボールのように、長年アメリカ国民に根ざしてきたものではないので、その気になればいつでもバイバイできます。バブルが弾けた時、あるいはリバティが十分儲けたとして手を引いた時、F1は本当に生き残ることができるのでしょうか。個人的にはマネーゲームの1つとしていいように弄ばれているだけのように見えて、F1の将来を考えると少し怖くなります。
まぁ、それはぼくにはどうすることもできないので、レースに話を戻しましょう。トラックは、ハードロックスタジアムというアメリカンフットボールの試合会場の周辺道路を使用した特設コースです。特設コースとはいえ、他のグランプリに使用されている市街地コースとは違って高速コーナーやロングストレートなどもあって、レイアウト的にはどちらかというと通常のサーキットに近い感じがします。ただ、いかんせん一般道なのでコース幅が狭いところが多く、抜きにくさはあるんじゃないかと思います。
また、このコースで特徴的なのはターン11から16の間の超低速セクションで、およそF1が走るとは思えないくらい狭く遅い区間があります。このセクションはドライバーからも不評で、ひとたび事故が起こると途端に通行困難になってしまうような危険地帯です。この箇所だけはモナコみたいで、もっと改善の余地がありそうに思いますが、一向にそうする気配はなさそうですね。
** 2023年シーズン結果 ******
Pole-sitter:11 S・ペレス(レッドブル)
Winner:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)
Fastest lap:1 M・フェルスタッペン(レッドブル)
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昨シーズンのマイアミは、フェルスタッペンが予選Q2で週末全体の最速タイムを記録しましたが、自らのミスとルクレールがもたらしたレッドフラッグでQ3のアタックを決めることができず、PPはペレスが持っていきました。フェルスタッペンは9位スタートとなりましたがそれをものもとせず、オーバーテイクを重ねて勝利をもぎとりました。9位スタートというハンデがありながらフェルスタッペンに完敗したことで、前戦のバクー(アゼルバイジャン)でスプリントとグランプリレースで連続勝利した勢いを完全に削がれたペレスは、これ以降のレースで徐々に精彩を欠いていくことになりました。シーズンの流れで分岐点となるレースでした。今回はスプリントも開催されます。どんなドラマが見られるのでしょうか、あるいはドラマは見られないでしょうか。
激しく面白いレースが見られることを期待しています。