2023年 第21戦 ラスベガスGP | Glass Labyrinth

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僕の視点からF1での Ferrari のレースと Formula1 Grand Prix について書いてみます。

南米から再び北米に戻って、11月16日にラスベガスグランプリが開催しました。実質的に初開催で、しかも市街地での開催ということもあって、フリー走行など色々問題はありましたが、寒くなりすぎず、レース自体も盛り上がったので概ね成功と言って差し支えないかと思います。本当の問題は次回の開催の時、ご近所問題を含めてまた同じようなトラブルを引き起こさないことだと思います。

 

さて今回のグランプリの演出などを見ていて、F1のオーナーであるリバティメディアは、このラスベガスグランプリをF1を象徴するレースにしたいのかな、という意思を個人的には感じました。もちろんこれまでの(世間一般的な)F1の象徴は、世界3大レースの1つであるモナコグランプリでしたが、最近のモナコの地位の低下と大枚を叩いたラスベガスグランプリの誕生を考えると、同じ華やかと言われるグランプリの交代劇が起こるのではないか、いやもうすでに起こっているのではないかと感じざるを得ません。まぁ、どうなるか様子を見てみましょう。


 

/*・・・Preparation:コースとタイヤ・・・*/

ラスベガス・ストリップ・サーキット(ラスベガス)

 

(Formula 1®から抜粋)

コース長:6.201 km

レース距離 :310.050 km(50 laps)

特徴:・ストレート(全開区間)と直角コーナーで構成される高速市街地サーキット

   ・史上初めて土曜日の深夜にグランプリレースが開催される

   ・約1.9 kmにも及ぶ全開区間(ストリップ)がある

   ・砂漠にあるためレースが行われる時間帯は非常に寒くなる

   ・主なオーバーテイクポイントはターン5、ターン14

タイヤのコンパウンド:C3〜C5(やや軟らかい〜とても軟らかい)

 

 

/*・・・Qualifying:予選・・・*/

PP 16 C・ルクレール(フェラーリ)

2位 55 C・サインツ(フェラーリ)

3位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

4位 63 G・ラッセル(メルセデス)

5位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

6位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

7位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

8位 77 V・ボッタス(アルファロメオ・フェラーリ)

9位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

10位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

11位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

12位 11 S・ペレス(レッドブル)

13位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

14位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

15位 3 D・リカルド(アルファタウリ・レッドブル)

16位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

17位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

18位 24 ジォ・G(アルファロメオ・フェラーリ)

19位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

20位 22 角田裕毅(アルファタウリ・レッドブル)

 

Pole Position Time:1:32.726(240.7 km/h)

Fastest Lap Time Throughout the Weekend:PP Time と同じ

 

 

/*・・・Race:決勝・・・*/

WIN 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

2位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

3位 11 S・ペレス(レッドブル)

4位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

5位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

6位 55 C・サインツ(フェラーリ)

7位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

8位 63 G・ラッセル(メルセデス)

9位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

10位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

11位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

12位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

13位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

14位 3 D・リカルド(アルファタウリ・レッドブル)

15位 24 ジォ・G(アルファロメオ・フェラーリ)

16位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

17位 77 V・ボッタス(アルファロメオ・フェラーリ)

18位 22 角田裕毅(アルファタウリ・レッドブル)

19位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

Ret 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

 

Ret:Retire/リタイア。

 

Winner's Time:1:29:08.289(208.6 km/h)

Fastest Lap Time:1:35.490(233.8 km/h @lap 47)

81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

 

 

/*・・・Scope:インビンシブル・・・*/

優勝はフェルスタッペンでした。これでまた1つ連勝を伸ばし、通算勝利数も53勝となりました。また、シーズン勝利数も18勝としました。昨シーズンの終盤はアロンソ(通算32勝)の勝利数記録を抜いたとか言っていたのに、もうアラン・プロストの記録(通算51勝)ですからね。まさに、歴史に残るようなフェルスタッペンの、フェルスタッペンによる、フェルスタッペンのためのシーズンとなりました。

 

でも今回は、大苦戦とまでは言いませんが、他のレースに比べれば苦戦した方だったと思います。もしレース中盤にセーフティカーが導入されなければ、もしかすると優勝はできなかったかもしれません。でもそのセーフティカーが導入される原因を作ったのはラッセルで、そのラッセルのミスを誘ったのはフェルスタッペンだったことを考えると、あながち運で勝てたとも言えないのが今シーズンのフェルスタッペンの強さです(ただし、接触した後もペースが大きく落ちなかったのは幸運だったのかもしれません)。いや、予選でPPが取れなくても、レース中にタイヤのデグラデーションが大きいことが判明してピットストップを早めても勝ててしまうのですから、もはや今シーズン他のドライバーに勝てるチャンスはないのかもしれません。

 

2位はルクレールでした。こちらはちょっと不運が続いていただけに、今回はポディウムフィニッシュできて良かったと思います。それにしてもフェラーリの戦闘力が予想以上に高かったのは驚きでした。ルクレールも予選Q3までのすべてのセッションの中でトップを獲れなかったのはフリー走行3回目だけでしたからね。それだけレースへに期待値も大きかったのですが、やはりレースではレッドブルがあまりに強かったです。やはりセーフティカー導入が悔やまれますね。

 

3位はペレス。ペレスも2戦連続ポディウムフィニッシュとなって復調してきました。特に今回は得意の市街地ということもあって、それこそ「キング・オブ・ストリート」たる運を引き寄せての3位だったと思います。ペレスの課題はやはり予選で、今回も判断を誤っていないければ普通にトップ10以内でスタートできたはずです。でも今回に限っては、そうすると車群に飲み込まれてペースも上がらず、もしかするとポディウムには届かなかったかもしれません。後でフェルスタッペンが苦労することになったスタートのミディアムタイヤを早々に捨てて、レースの98 %をデグラデーションの小さいハードタイヤでドライブできことは幸運だったと思います。

 

一方、フェラーリのサインツは6位フィニッシュでした。予選まではルクレールに次ぐ結果だったので、つくづく不運だったと思います。フリー走行ではサインツのミスではなくサーキット側の都合で被害を被った挙句、そのトラブルでPUを交換しなければならなくなって、スターティンググリッドを降格させられたのは個人的には納得いかないです。もちろん、ルールはルールですからここで例外を認めると後で面倒になることは分かりますが、あくまでもサーキット側の問題でしたから、温情があっても良かったと思いますけどね。これは今後の課題にしてもらいたいです。

 

 

/*・・・Best Overtaking:ルクレール・・・*/

VS ペレス(@lap 50/ターン14)

 

今回はファイナルラップにルクレールがペレスに対して決めたオーバーテイクを選びました。今回も分かりやすかったでしょうかね。このレースでのルクレールは、最後の最後までペレスに仕掛ける素振りを見せなかったことが逆に上手かったと思います。ドライバーは相手のミスを誘うために、ラインを変えて「アタックするぞ」というアクションをどうしてもしてしまいます。特に、残り周回数が減って切羽詰まれば詰まるほどしてしまうものです。

 

2人のタイムやターン12とターン13でのタイムギャップの推移を見ていると、ファイナルラップまでずっと付かず離れずなのにルクレールはアタックの素振りは決して見せませんでした。そして49周目に少しだけ差が詰まった時もそれは同じで、ぼくは一瞬「ペレスに仕掛けるのかな」と思いましたが、そこでもやはりそれまでと同じく「オーバーテイクするぞ」という意思表示を見せませんでした。この時ぼくは、おそらくペレスもそうだったかもしれませんが、ペレスよりタイヤの履歴が5ラップも長いので、このくらいのギャップ(後で確認するとターン12で0.7秒中盤、ターン13で0.8秒フラットくらい)では仕掛けられないのかな、と考えました。

 

そして50周目に機は熟します。ターン12での2人のギャップはこのスティントで最も小さくなりました(ターン12で0.6秒後半、ターン13で0.6秒中盤くらい)。見ているこちら側としたらほんの0.1秒ほどの違いなのですが、これがルクレールにとっては大きく、ペレスにとっては前周までとの差に気付きにくい、ちょうどルクレール側に都合の良かったギャップだったのではないでしょうか。ペレスは、もしその差の小ささに気付いていればブロックラインを取ってルクレールのオーバーテイクを潰しに来られたはずなのですが、直前のラップまでのルクレールの様子と、タイヤはルクレールの方が自分よりも長い周回数を走っていることから、まったく警戒していなかったのではないかと考えられます。それはルクレールに比べて、ペレスのブレーキング開始からターンインへのタイミングの早さからも想像できます。ペレスとしてもタイヤは限界に近かったでしょうから、ミスしないように、かつタイヤを保たせるようにドライブしていたのでしょう。

 

反対にルクレールとしては、ファイナルラップ以前に抜いてしまえば、次のラップに抜き返すチャンスをペレスに与えてしまいますし、DRSを使用した時のスピードやタイヤの履歴ではペレスの方が有利ですから、ファイナルラップでの唯一のチャンスを狙っていたんでしょう。タイヤ的にも、ハードブレーキングできるのは1回だけだったんでしょうしね。それでファイナルラップのターン12でかなりがんばってギャップを詰めたのだと思います。

 

いや、今回はルクレールが1枚上手でした。本当に素晴らしいオーバーテイクでした。

 


/*・・・Next Battle:アブダビ・・・*/

今シーズンのF1も長かったですが、次回でいよいよ最終戦です。最終戦は恒例、アブダビグランプリです。F1史上初の、そして2009年の初開催以来ずっと一貫して続くトワイライトレースです。アブダビが開催されると、個人的には「あぁ、終わっちゃうな。寂しいな。もっとレースを見たいな」と思ってしまうのですが、そこはF1のずるいところですね。これまで「もういいでしょ。やりすぎでしょ」と散々思わされてきた訳ですから。

 

ただ、今回は土曜日深夜開催のラスベガスからの連戦ということもあって、スケジュール的には少し、いや少しどころではなくかなり厳しくなることでしょう。各チームのメンバーも、「これがシーズンの最後だから許すけど、そうでなければ・・・」くらいの感じでしょうね。来シーズンはもっとF1側が考えてくれていることを願います、と言いたかったのですが、来シーズンは来シーズンでさらに厳しそうです。来シーズンの終盤はラスベガス、カタール、アブダビの3連戦で、部外者のぼくでさえ「いやはや、一体チームのメンバーはなんでこんなに働かされているんだ」という気持ちになってします。今日のF1は何かがおかしくなっているとしか言いようがありません。

 

さて、話を変えましょう。舞台となるヤス・マリーナ・サーキットはホームストレートを含めて3本のストレートと、その直後のクネククねした加減速の続くセクションが組み合わされた2面性を持つコースです。特にリアタイヤには厳しいトラックです。ただ、ストレートが3つもある割にはオーバーテイクは難しく、意外とスターティンググリッド、つまり予選順位がモノを言います。もう少しバトルができるサーキットであればよかったんですけどね。

 

ドライバーズ、コンストラクターズの各ランキングもここで決着します。ドライバーズランキングは今回のラスベガスで、FIA表彰式に呼ばれる1〜3位が決定しました。4位以下はもうドライバーのプライドの問題でしょうが、1つでも上の順位で終わる方が精神的にはいいでしょうね。その意味では4位を争うアロンソとサインツは見物です。一方コンストラクターズの方はプライドだけではなく、実入りの問題もありますからより切実です。メルセデスとフェラーリの2位争いはこの最終戦に来てもまだ熱いままですし、ウィリアムズとアルファタウリも7位争いも熾烈で面白そうですね。ただフェラーリは、アブダビで14回のレースの機会があったにもかかわらずPPも優勝もないのですから、ここで相性のいいメルセデスに勝てるのかは微妙な気もしますけど、どうでしょうか。

 

素晴らしいフィナーレが見られることを期待しています。