2023年 第20戦 サンパウロGP | Glass Labyrinth

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僕の視点からF1での Ferrari のレースと Formula1 Grand Prix について書いてみます。

怒涛の南北アメリカ大陸3連戦、最後の1戦サンパウログランプリが11月3日に開幕しました。これが終わるとやっと一段落という感じです。でも、最近のF1はグランプリに国名ではなく都市名を用いるのがブームなんでしょうかね。ちょっと前まで前回のメキシコシティグランプリはメキシコグランプリと呼ばれていましたし、今回のサンパウログランプリはブラジルグランプリでした。イタリアのように1国で複数回開催される場合はそうするのも分かるんですけどね。ちなみに次回は、アメリカでの今シーズン3回目の開催となる初開催のラスベガスグランプリです。


 

/*・・・Preparation:コースとタイヤ・・・*/

アウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ(サンパウロ)

(Formula 1®から抜粋)

 

コース長:4.309 km

レース距離 (グランプリ):305.879 km(71 laps)

レース距離 (スプリント):103.356 km(24 laps)

特徴:・高速区間とテクニカル区間の2面性を併せ持つ中高速サーキット

   ・高低差が比較的大きく、アンジュレーションもある

   ・海抜700 mの高地にあるためPUへの負担が大きい

   ・初夏の日差しで高温になったり、突然の雨に見舞われたりすることがある

   ・主なオーバーテイクポイントはターン1、ターン4

タイヤのコンパウンド:C2〜C4(やや硬い〜軟らかい)

 

 

/*・・・Qualifying:予選・・・*/

PP 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

2位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

3位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

4位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

5位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

6位 63 G・ラッセル(メルセデス)

7位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

8位 55 C・サインツ(フェラーリ)

9位 11 S・ペレス(レッドブル)

10位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

11位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

12位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

13位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

14位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

15位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

16位 22 角田裕毅(アルファタウリ・レッドブル)

17位 3 D・リカルド(アルファタウリ・レッドブル)

18位 77 V・ボッタス(アルファロメオ・フェラーリ)

19位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

20位 24 ジォ・G(アルファロメオ・フェラーリ)

 

Pole Position Time:1:10.727(219.3 km/h)

Fastest Lap Time Throughout the Weekend:1:10.021(221.5 km/h @Q2)

4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

 

 

/*・・・Splint Shootout:スプリント・シュートアウト・・・*/

TOP 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

2位 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

3位 11 S・ペレス(レッドブル)

4位 63 G・ラッセル(メルセデス)

5位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

6位 22 角田裕毅(アルファタウリ・レッドブル)

7位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

8位 3 D・リカルド(アルファタウリ・レッドブル)

9位 55 C・サインツ(フェラーリ)

10位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

11位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

12位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

13位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

14位 77 V・ボッタス(アルファロメオ・フェラーリ)

15位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

16位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

17位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

18位 24 ジォ・G(アルファロメオ・フェラーリ)

19位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

20位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

 

Fastest Lap Time:1:10.622(219.7 km/h)

 

 

/*・・・Splint:スプリント・・・*/

WIN 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

2位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

3位 11 S・ペレス(レッドブル)

4位 63 G・ラッセル(メルセデス)

5位 16 C・ルクレール(フェラーリ)

6位 22 角田裕毅(アルファタウリ・レッドブル)

7位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

8位 55 C・サインツ(フェラーリ)

9位 3 D・リカルド(アルファタウリ・レッドブル)

10位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

11位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

12位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

13位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

14位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

15位 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

16位 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

17位 24 ジォ・G(アルファロメオ・フェラーリ)

18位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

19位 77 V・ボッタス(アルファロメオ・フェラーリ)

20位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

 

Winner's Time:30:07.209(205.9 km/h)

Fastest Lap Time:1:14.422(208.4 km/h @lap 2)

63 G・ラッセル(メルセデス)

 

 

/*・・・Race:決勝・・・*/

WIN 1 M・フェルスタッペン(レッドブル)

2位 4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

3位 14 F・アロンソ(アストンマーティン・メルセデス)

4位 11 S・ペレス(レッドブル)

5位 18 L・ストロール(アストンマーティン・メルセデス)

6位 55 C・サインツ(フェラーリ)

7位 10 P・ガスリー(アルピーヌ・ルノー)

8位 44 L・ハミルトン(メルセデス)

9位 22 角田裕毅(アルファタウリ・レッドブル)

10位 31 E・オコン(アルピーヌ・ルノー)

11位 2 L・サージェント(ウィリアムズ・メルセデス)

12位 27 N・ヒュルケンベルグ(ハース・フェラーリ)

13位 3 D・リカルド(アルファタウリ・レッドブル)

14位 81 O・ピアストリ(マクラーレン・メルセデス)

Ret 63 G・ラッセル(メルセデス)

Ret 77 V・ボッタス(アルファロメオ・フェラーリ)

Ret 24 ジォ・G(アルファロメオ・フェラーリ)

Ret 20 K・マグヌッセン(ハース・フェラーリ)

Ret 23 A・アルボン(ウィリアムズ・メルセデス)

DNS 16 C・ルクレール(フェラーリ)

 

DNS:Do Not Start/スタートせず。

Ret:Retire/リタイア。

 

Winner's Time:1:56:48.894(157.1 km/h)

Fastest Lap Time:1:12.486(214.0 km/h @lap 61)

4 L・ノリス(マクラーレン・メルセデス)

 

 

/*・・・Scope:リトリーブ・・・*/

優勝はフェルスタッペンでした。通算勝利数は52勝。アラン・プロストの勝利数記録を抜き去り、歴代単独4位となりました。もしかすると、残り2戦も全勝して今シーズン中に単独3位になることもあるかもしれません。いや、その可能性は十分すぎるくらいあるでしょうね。昨シーズンのサンパウロでは優勝争いにまったく絡めないだけでなく、チームメイトのペレスのために順位を譲ってくれと、ある種屈辱的な指示を受けて惨敗を喫したフェルスタッペンとレッドブルでしたが、今回その「忘れ物」を完全に取り戻しました。彼らの学習能力の高さ、高いモチベーションを感じます。

 

これだけ勝ち続けていれば少しくらい慢心してもおかしくはないですが、その様子はまったく見えません。それどころか、さらに進歩を続けようとしている姿には恐れ入ります。その分かりやすい例はスタート。前回メキシコシティから改良されたシステムを使用し始めたようですが、その恩恵は絶大です。システムを導入してから今回まで3回のスタンディング・スタートがありましたが、いずれもパーフェクトのスタートでしたからね。それまでスタートは、言わばレッドブルの唯一と言っていいくらいの弱点でしたが、今では反対にそれが強みとなってしまいました。レッドブルとフェルスタッペン、恐るべしです。

 

2位はノリス。果敢にフェルスタッペンに挑んでいきましたが、あと1歩、いや1.5歩くらい足りない感じでした。ノリスのドライブ自体はフェルスタッペンのそれに匹敵すると感じるのですが、マシンがもう少しですね。あとはノリス自身の運。ここぞというときに平凡なミスしたり、レース展開が味方しなかったり、突然の雨に足を掬われたり、「持ってない」感じがありますね。まぁ、お祓いに行く必要はないでしょうけど、今は何か歯車が少し合ってない感じなのでしょうか。逆に言えば、何かの拍子に歯車が噛み合えばノリスは十分勝てると思います。今後の彼の走りに注目しています。

 

3位はアロンソ。やはりレースが上手いですね。抜群のセンスです。そしてアストンマーティンもここへ来て息を吹き返しました。もう、今シーズンはアストンマーティンは復活しないだろうと思っていたので、かなり意外な結果でした。それはチームメイトのストロールが上位へ来たことからも見て取れます。ただ、今回はコース特性や天候とか路面温度などのレース環境が味方した可能性もあるので、この調子があと2戦持続するかどうかは分からないですけどね。いずれにせよアロンソにいいマシンを与えると必ずいいレースをするので、そういう姿がもっと見たいものです。

 

今回ぼくが最も注目していたメルセデスは、昨シーズンのサンパウロでの快走から一転、惨敗に終わりました。前回のサンパウロでのレッドブルもそうでしたが、スプリントフォーマットではセッティングを煮詰めることができず、イニシャルセッティング(レース前に想定して持ち込んできた最初のセッティング)を外すと、もう取り返しがつかない結果となりますね。今回メルセデスがセッティングを外したのはスプリントの段階で判明したので、あとは日曜のレースが不調で終わるのを待つのみといった、メルセデスにとって辛い週末となりました。スプリントフォーマットは失地回復を認めない公開処刑のようで、残酷ですね。

 

今回のフェラーリは今ひとつ、いや今ふたつくらいの出来でした。ルクレールは予選で奮闘するも、スターティング・グリッドに着くことすらできずレースを終えました。もったいなさすぎます。ルクレールのマシンに起こったトラブルは、今回は低速走行するフォーメーションラップ中だったことが不幸中の幸いでした。このトラブルはレース中はもちろん、レコノサンスラップ(ダミー・グリッドに着く前にマシンやコース状況を確認するラップ)でターン13〜14などの超高速コーナーを通過中にも起こり得た訳ですからね。しかし今シーズンのフェラーリは、カタールでのサインツといい、スターティング・グリッドに着くことすらできず機会損失することがあまりに多いです。何とかしてくれませんかね。

 

一方サインツは、決して速くはないマシンで最大限の仕事をしてくれました。メルセデスの不調もあって、少しだけではありますが、彼らとのポイント差を詰めることができました。マシンはともかく、サインツ自身のドライビングの安定感はいいですね。ここ数年で、劣勢時のバトルにもすごく強くなったと思います。ルクレールも攻勢の時はいいのですが、守勢の時もサインツくらい強くなってくれればなと思います。あとはチームが2人に戦えるマシンを与えてくれればいいのですが、今シーズンはもう高望みはしないことにします。

 

 

/*・・・Best Overtaking:アロンソ・・・*/

VS ペレス(@lap 71/ターン4)

 

今回は、やはり、アロンソのファイナルラップを選びました。皆さんの予想通りで、期待に応えられず申し訳ありません。ただ今回は最後のアロンソのオーバーテイクだけでなく、数十周にわたるアロンソの対ペレスのバトル自体が素晴らしかったです。感服です。このバトルで、アロンソが近々引退するなどという出どころの分からない噂(どこの世界でも、誰かの足を引っ張ろうする勢力は存在するものです)はどこかに吹っ飛んでしまいました。それくらいインパクトのあるバトルだったと思います。こんな最高のレースができるドライバーをF1が失うとすれば、それがF1自身の意図ではないとしても、F1株はストップ安となってしまうでしょう。

 

ペレス側だって最速マシンをドライブする、決して遅くはないドライバーとマシンのパッケージですから、少しでも隙を見せればすぐに仕留められてしまったことでしょう。それを抜かれないギリギリのスピードで、抑えるところは抑え、攻めるところは攻める。ラスト2周でオーバーテイクを喫した時もペレスから離されずにピッタリと後ろにつけ、何ならインフィールド区間ではプレッシャーを掛けるほどに攻めに攻める。そんなアロンソを引き離すことができず、ペレスはおそらく焦ったんじゃないかなと推測します。アロンソはワイルドに攻める気持ちと冷静に状況を見極める気持ちのバランスも取れていますし、何よりオーバーテイクされたレッドブルに付いていけるほど、というか最後にブレーキング勝負できるほどタイヤに余力を残していたことも本当に素晴らしすぎます。

 

少し信じ難いことなのですが、おそらくアロンソの頭の中には、どのラインをどれだけのスピードで走ればどのタイヤにどれだけの負荷を掛けるみたいな多次元マトリクスが出来上がっていて、その何通りもの攻め方から瞬時に最善のものを判断してマシンをコントロールているとしか考えられません。そうでなければ、この神業のようなバトルは不可能だと思います。そう言うとアロンソはトップレベルの将棋指しに近いのかもしれませんし、ぼくもずっとそう思ってきました。でもドライバーの仕事が、全身でマシンから挙動を感じ、そして反対にそこからほとんど無意識にマシン側にアウトプットすることであると考えると、少し違うのかもしれませんけどね。ともあれ、本当にいいバトルを見せてもらいました。

 


/*・・・Next Battle:ラスベガス・・・*/

次回はまた北米に戻ってラスベガスグランプリです。F1が41年ぶりにラスベガスに帰ってきました。舞台は正真正銘、砂漠のど真ん中にあるラスベガス市街地です。今回はカジノのイルミネーションや巨大ホテル群、そしてベラージオの噴水のある有名な通り「ストリップ」を駆け抜ける、絢爛豪華なコースのようですね。しかもそのイルミネーションを最大限活用するためか、現地の土曜深夜にレースが行われます。F1のオーナーであるリバティメディアが、その威信をかけて開催するオーナー肝入りグランプリだいうことです。

 

実はかつて1981年と1982年にもラスベガスでF1が開催されましたが、あの時は「シーザーズパレス」というホテル名を冠したグランプリだったようなので、「ラスベガス」グランプリとしては初開催という位置付けです。コースも当時とはまったく違いますしね。でも個人的には、あの昔のグランプリはあのグランプリで凄かったと思います。今の感覚で見ればしょぼかったのかもしれませんが、ホテルの駐車場でレースをしてしまえという発想が飛び抜けていて、ぼくには絶対出てこないものですから、その発想自体に羨ましさを感じます。ホテル名を冠したグランプリが現在に至るまで史上唯一のものだという事実も、その存在感を際立てますしね。でもそうは言っても、今回はより「まともに」レースができそうで何よりです。

 

ラスベガスはぼくにとっても、今シーズンで最も注目しているグランプリです。やはり初開催のトラックは気になりますからね。その気になるコースの特徴ですが、ストレート主体の高速サーキットのようです。とにかく全開区間が長くて、ストリップの全開区間の長さはおよそ2 kmにも及ぶということです。この辺りは確かにバクー(アゼルバイジャン)に似ていますね。また、最終コーナーからホームストレートを通って最初のコーナーの辺りはシンガポールに似ているようにも見えます。あと、基本的に直角コーナーが多いというところも、これらの市街地トラックに似ていますね。

 

注目するポイントは、そうですね、ヨー(鉛直方向(水平面に対して垂直な方向)の軸に対して働く、マシンを回転させようとする力。モーメント)を残したままブレーキングするであろうターン6〜7、ストリップのスピードやオーバーテイクポイントとなるであろうターン14の直前のキーとなるターン12でしょうか(ターン13は全開で駆け抜けるため)。あとはストリップでの最高速も、否が応でも注目してしまいますね。

 

チャンピオンシップ争いは、ドライバーズの2位争いはちょっと決着がついた感じもしますが、まだ何が起こるか分かりません。4位以下の争いは白熱していますし、マクラーレン勢が(ドライバーズもコンストラクターズも)どこまで上位に来られるかも気になるところです。まぁ、フェラーリとしてはマクラーレンではなくメルセデスの方を気にしたいところですけどね。

 

日本では日曜日の昼下がり、激しいレースが見られることを期待しています。