ステージ4の胃がん
肝臓転移ありで、緊急入院してから一切物を食べていない。
点滴だけの母は
私を認識しても
喋るのもやっとのようで
たまに、黙り込んで目をつぶり下を向いたりしていた。
ちなみに、寝たきりも良くないので昼間は、3時間くらい車椅子に座らされているようだった。
前は、気持ち悪い、とは言わなかったが
今は、寝ていれば平気だけれど、起きていると気持ち悪い、と言っていた。
小さい声で、ゴニョゴニョ話す。
そりゃそうだ。
寝てない、食べてない、で
座っているのも、喋るのも大変だろう。
痩せた母の腕を見ていた。
お腹の減っこんだ母に
三段腹が減っこんで、腰が楽になるかもよ、
なんて、励ましたりもしたが
自分で言ってて虚しくもなった。
いつもどうり、
愚痴をこぼし、泣き言を言う。
でも、それが母だから良いのだと思う。
せん妄の時
そういったことを一言も言わない母を
泣かずに見ていられなかった。
それに比べれば、
愚痴も泣き言も悪口も
愛おしくさえ感じる。
母が
上がらない手を挙げて
卓上のカレンダーを指差す。
今日は、〇〇(私の名前)の誕生日だ。
誕生日の日付を震える指で指した。
何もしれやれなくて、こんなざまでごめんよ。
そう弱々しく言った。
母の前では涙は流さないと決めている。
でも、今喋ると、泣いてしまいそうで
しばらく
黙っていた。
母親とは
こういうものなのだろう。