50年後にようやく分かった――恩師・伊藤和夫先生が本当に伝えたかったこと | ニッポンを元気にする英語!

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日系企業で計4回10年超の海外生活を経験(注:その後外資系企業を経て独立起業)する中で、世界における日本のプレゼンスが年々落ちてきていることに強い危機感を覚えています。英語学習に資する情報発信を通し、少しでも日本人の実用英語力の底上げに貢献できれば幸いです。

「英語脳メソッドの原点は、50年前の『英文解釈教室』にあった」

 

1970年代後半、私は東大受験浪人生として駿台予備学校に通っていました。

 

当時の私は、「英語力だけが頼み」と言ってよい受験生であり、幸運にも、駿台英語科の伝説的講師・伊藤和夫先生の講義を直接受講する機会を得ました。

 

いま振り返れば、それは本当に贅沢な時間でした。

 

しかし――

 

その当時の私は、伊藤先生が語っていた「英文解釈」というものを、実は1ミリも理解できていなかったのです。

 

正直に言えば、

 

「何だか暗号解読みたいな難しい読み方をする先生だなぁ」

 

くらいにしか思っていませんでした。

 

もちろん、伊藤先生の授業は圧倒的でした。
ただ、その本質が見えていなかった。

 

結果として、私は伊藤先生の英文解釈体系を大学受験に活かすことはできませんでした。

 

もっとも、ありがたいことに東大には合格できましたので、その後長い間、伊藤先生の方法論について深く考えることもありませんでした。

 


それから、半世紀近い歳月が流れました。

 

社会人として海外業務に長く携わり、MIT留学や海外駐在を経て、私は独力で「英語脳メソッド」を開発することになります。

 

日本人がなぜ英語を読めないのか。
なぜ、単語や文法を知っていても英文を理解できないのか。

 

その問題を考え続ける中で、私は古今東西の「英文解釈方法論」を徹底的に読み漁りました。

 

そして、そこでようやく気づいたのです。

 

現在の日本の英文解釈方法論の“原点”の一つが、伊藤和夫先生の『英文解釈教室』にあることを。

 

そしてさらに驚いたのは――

 

自分が長年かけて構築してきた「英語脳メソッド」と、伊藤先生の思想とが、本質的に完全一致していたことでした。

 


伊藤先生は『英文解釈教室』の冒頭で、次のように述べています。

「英語自体から意味が分かること、つまり訳語が分かるのではなく、分かるから必要なら訳せることが学習の目的である」

これはまさに、私が現在「英語脳メソッド」で目指していることそのものです。

 

また伊藤先生は、

「英語→事柄→日本語」という図式での思考法を確立すること

を英文解釈の本質として語っています。

 

これもまた、私が長年提唱してきた「英語を日本語に変換する前に、まず英文構造から意味を直接把握する」という考え方と完全に一致しています。

 


さらに衝撃的だったのは、伊藤先生が1997年改訂版で述べている次の一節でした。

「どんな英文も文頭からスタートし、左から右、上から下へ1度読むだけで、その構造と内容の明確な把握に到達しようとする『直読直解』の読み方とは、何を手がかりにするか、どのようなアタマの働きなのかを具体的に示すこと」

私はこの文章を読んだ瞬間、鳥肌が立ちました。

 

なぜなら、私自身が「英語脳メソッド」で追究してきたものが、まさにこれだったからです。

 

英文を前から読み、
構造をリアルタイムで把握し、
英文を英文のまま理解する。

 

そのために頭をどう働かせるべきかを体系化する。

 

それが、私の方法論の核心だからです。

 


私は長い間、

 

「自分は独自の方法論をゼロから作った」

 

と思っていました。

 

もちろん、実際には独自に試行錯誤を重ねてきました。

 

しかし今なら分かります。

 

私は“ゼロから”作ったのではなく、若き日に出会っていながら理解できなかった恩師の思想に、半世紀を経てようやく再到達したのだ、と。

 


伊藤和夫先生は、すでにこの世にはいらっしゃいません。

 

しかし、『英文解釈教室』に込められた問題意識は、50年近く経った現在でも、全く古びていないどころか、むしろ今の日本の英語教育にこそ必要なのではないかと私は感じています。

 

「英語を日本語に置き換える」のではなく、
「英語を英語の語順のまま理解する」。

 

そのための“頭の働かせ方”を教える。

 

それこそが、本当の意味での「英語脳教育」なのだと思います。

 


私は、恩師・伊藤和夫先生への深い感謝と敬意を胸に、これからも日本人の英語力向上のために、英語脳メソッドの研究と普及に全力を尽くしていきたいと思っています。

 

もし伊藤先生が今もご存命なら、
ぜひ一度、直接お話を伺ってみたかった――

 

そんなことを、最近よく思います。