遥かなる摺子発電所 【2】 (奈良県吉野郡下北山村下桑原) | 穴と橋とあれやらこれやら

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初めまして。ヤフーブログ出身、隧道や橋といった土木構造物などを訪ねた記録を、時系列無視で記事にしています。古い情報にご注意を。その他、雑多なネタを展開中。

 
【1】より続く。
 
 
「遥かなる摺子発電所」とかタイトル付けておきながら、すでに発電所にさくっと到達。「こっからがホンキ」とか、今回からはタイトルと内容が整合していない状況でありますが、まぁ細かいことは気にすんなよ(笑)。
 
なんかこのタイトルにしたかったんですもの。つまり何が言いたいかって~と、
 
「遥かなる」なのは、ここからなのだ。
 
 
 
半水没した発電所建屋の裏手、つまり山側。
 
有り得ない位置に開口する、
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こんな穴。
 
これこそが我々の目的地・・・ではないな、目的の物件。ご覧のように、村道からは崖をよじ登らないと、その坑口に立てない。つまり、村道に接続するものではまったくない、ということ。
 
 
そして、よく見ていただきたい。
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コンクリートで巻かれており、なおかつ斜めに削り取られている。
 
 
この穴の正体。それは・・・
 
落筏路(らくばつろ)。
 
北山川は、伐り出した木材を組んで流す、いわゆる筏(いかだ)流しが盛んだった。摺子発電所の建造に先立ち、発電用の取水によって筏流しに支障が出る、ということで村と揉めた結果「筏も発電所の導水路を通って下ればいい」という落とし所となり、建設されたのがこの落筏路、なのである。
 
 
取水堰堤(現在は池原ダム湖に沈んでいる)から、蛇行する北山川をショートカットする形で山中を延々3kmに及ぶ水路隧道で導水し、発電所直前(直上)で発電用水が向かう貯水槽とこの落筏路に分岐。
水は貯水槽から発電所へ。そして筏は分岐点からスロープ状となった落筏路をすべり降りて、北山川へ。
 
衝撃的な姿で有名な、摺子発電所建屋。だが実はそれに加えて、これら水路隧道や落筏路のほぼすべてが現存しており、「その気になれば」探索も可能である、ということをわたくしが知ったのは、「廃道をゆく2」における永冨謙氏(nagajis氏)の記事だった。
 
 
非常に気になっていたところに、よとと隊長がその探索を敢行されるということで、好機をとらえてその末席に加えていただいた、という次第。
 
 
 
今見ているこの位置は、
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落筏路がちょうど地表に現れた場所。
 
ここからさらにスロープ状に延びて北山川へとつながっていた。この道が開かれた時に、けっこう荒っぽく削られちゃったようだ。
 
 
もちろん、今からこの中に進入、落筏路から導水路隧道へ、奥へ奥へと探索を進めていく。
 
 
時刻は8時27分、落筏路によじ登り、いよいよ探索がスタート。それこそ「遥かなる」苦行となった・・・。
 
 
 
坑口から振り返り。
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帰りに撮ったもので明るさが違うが、見た目こんな感じ。高い!
 
ぱぱんさん、お元気かなぁ・・・。
 
 
 
向き直れば、
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ようやくお目にかける、落筏路内部。
 
筏を流すための勾配にお気づきだろうか?永冨氏の記事によると、その勾配は10%。歩くと、明らかに坂だと感じる。ちなみに延長は300mだそう。
 
それにしても、筏を流したにしては狭い印象。これはけっこう、苦労したのじゃないかなぁ・・・。
 
 
 
当然ながら、そこは漆黒の闇。
 
ひどい写真だけど、
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雰囲気は感じていただけるかと・・・。
 
 
 
 
8時33分。目前の様子が・・・
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う、うわぁ・・・
 
 
 
【3】に続く。