村上春樹著『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んで | フォノン通信

フォノン通信

2019年にヤフーブログから移行してきました。
制作した絵画、詩、読んだ本のことなど投稿していきます。

 

 

★買ったまま20年以上読めずに書棚に置かれていた『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』をほぼ2日間で読了した。

 

★この長編を読んだことで最新作『街と不確かな壁』以外の長編14作を読んだことになる。

 

★『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を過去に何度か読み切ろうと思って読み始めたが、初めの部分が非常にとっつきにくく、結局、小説の世界に入って行けずに途中で断念してしまった経験がある。

 

☆グレッグ・イーガンのSF長編小説『順列都市』でも同じ経験をした。何回も途中で読むのを断念した小説だった。何年も積んどく状態だったけど結局、本気を出して取り組み読了し、グレッグ・イーガンの作品のすばらしさに感動することになった。

 

★『騎士団長殺し』を読了した勢いで、

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』も読んでしまえと思い、読み出して何とか食らいついていった。

 

結局、良い小説に出会うことになった。

 

★この小説は、4作目の長編で1985年に出版されている。

 

3作目の『羊をめぐる冒険』の後の作品で、次の5作目が『ノルウェイの森』である。

 

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、2つの世界が交互に出てくる構成になっている。(以下あらすじは書きません)

 

それぞれが20の章(節)から成る構成になっている。

 

村上春樹さんは、実際に各章を交互に書いていったとインタビュー集の中で言っています。

 

『世界の終り』が描く世界

高い壁で囲まれた暗く、寒い不気味で異様な世界が、稠密な文体で描かれている。

 

異次元の世界を細部にわたって克明に描いている。凄い筆力である。

 

こんな世界を描いた村上春樹作品が他にあっただろうか。

 

出口なしの暗い世界を描いているのですが、読後の余韻はなぜか良かった。

 

『世界の終り』の部分を単独で出版しても優れた作品と評価されたでしょう。

 

◇もう一方の『ハードボイルド・ワンダーランド』の方は、この小説以後の村上春樹ワールドの原型を感じさせるような世界が描かれている。

 

つまりリアルな世界と非リアルな世界が融合していく場で展開される物語を描いている。

 

 

設定がSF仕立てなので、SF長編小説としても読める作品になっていると僕は思った。

 

村上春樹さんは、『ハードボイルド・ワンダーランド』の部分は楽しみながら乗って書いたのではないでしょうか。
 

*村上春樹は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』をプロットや構成をあらかじめ決めることなく書いていったと語っている。

 

驚きである。やはり天才かな。

 

*他の作家なら『世界の終り』のような世界を描く時には、細かな設定やプロットを考えるだろう。そうしなければこのような世界を書くことはできないだろう。

 

しかし、村上春樹はそうしないで書き始める。

 

初めからどういう世界になるのか分かっていたら書く気がしないと村上春樹は言う。

なるほどと思うしかない。

 

*作家の川上未映子が村上春樹にしたロングインタビューを編集した『みみずくは黄昏に飛びたつ』の中で、村上春樹はこの長編小説を書いた経緯について次のように語っている。

 

【引用開始】

「ちょうどそのころ新潮社から「純文学書下ろし」シリーズに何か書いてほしいと言われて、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を書いて、そこからあとはずっと書下ろしの世界になっちゃった。そういうやり方のほうが僕の性格に合っているから。」

【引用終了】

 

★この小説以降の長編小説はすべて書下ろしになったようです。

 

つまり長編を文芸雑誌に連載しながら完成させることはなくなったというわけです。

 

★この小説の僕の評価 星4つの傑作 ☆☆☆☆★

 

☆前回に記事では長編小説『騎士団長殺し』の評価を書きませんでした。

この作品も評価は、星4つの傑作です。☆☆☆☆★

 

♪ここまでお読みいただきありがとうございました。