ポール・デイヴィス著『生物の中の悪魔』を読んで(2) | フォノン通信

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★生物学については、私はまったくの素人である。それゆえ、以下の記述は参考程度に読んでいただきたい。

 

☆人間のゲノムは、すでにすべてが解析できている。しかし、「生物とは何か」という謎に近づいたわけではなかった。遺伝子の仕組みだけが解明できても「生物とは何か」に答えられなかった。現在、「遺伝子によらない遺伝」について研究する分野「エピジェネティクス」が発展している。

 

☆「生物とは何か」に迫る方法には、いくつもあるのだろう.

動物行動学、植物学、動物学、生態学、分子生物学、生理学、脳科学、神経科学、神経生物学などなどの還元主義的な方法がある。今までは、この還元主義で迫るしか方法はなかったのだと考えられる

 

☆物理学者ポール・デイヴィスによれば、生物学に物理学、化学、計算科学(計算生物学)、情報理論が加わって、生物とは何かに解答が出せるかもしれないといっている。

 

☆ポール・デイヴィスの『生物の中の悪魔』や他の関連の本から、興味深かった話題を書いて見ます。

参考にした本として上記『生物の中に悪魔』以外にデニス・ブレイ著『ウェットウエア』(2011年刊)がある。デニス・ウェアは計算生物学、微生物学、神経生物学を専門とする学者である。

 

☆人工知能の研究に使われている”ニューラルネットワーク”とは、脳の神経細胞間(ニューロン間)に張りめぐらされた回路網をモデル化したものである。人工神経回路網ともいう。AIの開発に欠かせなくなったディープラーニングの手法もニューラルネットワークを利用している。

 

☆このニューラルネットワークが、生物体内では脳の神経細胞にだけ見られるものではないことを最近知った。

タンパク質分子と酵素(これもタンパク質)からなるニューラルネットワークがある。ニューラルとは、本来は「神経の」という意味であろうが、神経には関係ない細胞内や細胞間でもニューラルネットワークがある。このメカニズムは、どこにどんなニューラルネットワークがあるかは、まだ一部しか解明されていないらしい。

 

☆例えば、細胞質の酵素や細胞膜の受容体は、いくつかの点ではトランジスタの似た論理素子として機能していると考えている学者もいる。デニス・ブレイがその一人である。タンパク質分子や酵素の中に、この論理素子として機能しているものがあると考えていいようだ。

 

☆ニューラルネットワークは、コンピュータからなるAI(人工知能)に利用する計算モデルといっていいだろう。しかし、生物の細胞の中では、ニューラルネットワークの理論には収まらないような複雑なメカニズムが働いているのではないだろうか。

 

☆今の生物学は、超弦理論や宇宙論でやや行き詰まり感のある物理学よりずっと面白いと思う。生物は、なんと精緻にして巧妙な働きをしているのであろうか。

 

☆この宇宙の開闢には、生命体の誕生がプログラムされていたのであろうか。偶然が重なりたまたま生命が誕生したのか。それにしても生物が行っている複雑にして精緻、巧妙な働きは、どうしてやって造りあげられたのであろうか。不思議としかいいようがない。