宮城「宮寒梅 至粋 純米大吟醸」あくまでも透き通った甘旨味がデリケートなガラスの世界を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌に、宮城県大崎市の寒梅酒造さんが醸しているお酒をまとめて購入して、順番にいただくことにしました。

最後の4本目はこれです。

 

 

宮寒梅(みやかんばい)至粋(しすい)純米大吟醸」。

 

東日本大震災で蔵がすべて崩壊した寒梅酒造の岩崎隆聡会長と娘の岩崎真奈さんと夫の健弥さんは酒造りを続行することを決めると、それでは新生・寒梅酒造は何を目指すかを議論しました。

そして決めたのが以下の点でした。

「アル添は止めて全量純米蔵にする」

「建物をすべて冷蔵化して、やろうと思えば通年造れる体制にする」

「タンクを小型化し、総米は750㌔~1500㌔とする」

「タンク貯蔵はせず、全量瓶貯蔵」

「地元向けは問屋経由を続けるが、地元以外はすべて特約店の限定流通とする」

 

 

隆聡会長はこう話します。

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こういう非常事態であることを理由に、宮寒梅は冷蔵保管してくれる酒販店に限らせてもらいました。

相当、反感も買われました。

でも、新しい設備と造りの体制で造ったお酒はそれ以前とはまったく違う美味しい酒ができたのです。

震災がなかったら、こんな短期間で変身は図れず、美酒になるのにさらに10年かかったかもしれません。

まさに、災い転じて福となす、を地で行きました。

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こうして12年が経過し、宮寒梅は宮城でも先頭グループにいる美酒蔵になったのです。

 

さて、そういうわけで、蔵としては宮寒梅を蔵の販売店では扱っていませんが、ごく例外としてハイスペックの純米大吟醸の一部を180ml限定で販売しており、空太郎もそれを購入しました。

 

35%精米の純米大吟醸、火入れです。

 

 

上立ち香は麗しい芳醇な香りが柔らかく漂ってきます。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、よく磨き込まれて鏡のようになった表面に油膜を張って、ツルツルの感触をアピールしながら、軽快に滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に流れるように膨らみ、拡散して、適度な大きさのクリスタル様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味9割、旨味1割。

甘味は99.99%純度の繊細なタイプ、旨味は超シンプル無垢で、甘味の背後に回り込み、主役は甘味のみに。

 

流れてくる含み香も芳醇でスレンダーな甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味は現れず、あくまでも高貴な甘味がソロで最後までの踊り続けるのでした。

 

 

これからもずっと美味しい酒を造り続けてほしいです。

 

お酒の情報(24年243銘柄目)

銘柄名「宮寒梅(みやかんばい)至粋(しすい)純米大吟醸 2023BY」

酒蔵「寒梅酒造(宮城県大崎市)」

分類「純米大吟醸酒」

原料米「不明」

酵母「不明」

精米歩合「35%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込み)「180ml=990円」

評価「★★★★★★(7.7点)」