自宅の晩酌に新潟県弥彦村の弥彦酒造さんが醸しているお酒をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。
3本目はこれです。
「彌彦(やひこ)吟醸 本生」。
1998年に弥彦酒造にやってきて、造りを学び、営業面でもネットワークを作った大井源一郎さんの存在があるにも関わらず、弥彦酒造の「こしのはくせつ」はこの25年でそれほどの飛躍を果たしていません。
石数も500石止まりです。
その理由について、空太郎は、オーナーになった新潟運輸が弥彦酒造をグループ会社の1つとして扱い、酒蔵の特殊性を理解しなかったことが大きいと考えています。
設備投資を含めた会社としての意思決定をする場合、稟議を作り、しかるべきルートで親会社に申請しなければならず、少なからずの案件が途中で却下されてきたようなのです。
酒蔵はある種、装置産業に近く、時としてまとまった投資が必要になるにも関わらず、蔵の単年度収支にこだわりすぎると投資を見送ってしまうことが往々にして起きます。
このため、新しいオーナーの金子秀二氏が、どのような観点から弥彦酒造の未来を描くのか、関心を持って見ていましたが、最終的な決断は蔵の全面建て替えでした。
今季(2024BY)は現有設備で2025年2月末までに皆造とし、すみやかに建物を解体、古い設備もすべて撤去し、同じ敷地内に真新しい酒蔵を建て、2026年1月にオープンする計画です。
大いに期待しています。
さて、3本目は55%精米のアル添吟醸、低アル(11度)の生酒です。
上立ち香は涼しさを感じる薄甘い香りが鼻腔を撫でます。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にとろみ層を乗せて、軽快なスピードで駆け込んできます。
受け止めて保持すると、促されるままにフワフワと半ば浮き上がりながら膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を速射してきます。
粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。
甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプルで細身の印象で、両者は仲良く、フェザータッチの真綿の世界を描くのです。
流れてくる含み香はさわやかながら、やや重さも感じる香りでデコレート。
後から酸味はほんのわずか、渋味は皆無で、ライトな甘旨味にほんのかすかなアクセントを付与します。
終盤まで軽快な世界が描かれ、飲み下した後の余韻もスポーツドリンク的でした。
それでは弥彦酒造のお酒、最後の4本目をいただくことにします。
お酒の情報(24年227銘柄目)
銘柄名「彌彦(やひこ)吟醸本生 2023BY」
酒蔵「弥彦酒造(新潟県弥彦村)」
分類「醸造アルコール添加吟醸酒」
原料米「不明」
酵母「不明」
精米歩合「55%」
アルコール度数「11度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込み)「720ml=1980円」
評価「★★★★★(7.5点)」