石川「菊姫(きくひめ)山廃純米 生原酒」正統派の濃醇な甘旨味が堂々たる主張を繰り返す | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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荒木町の人気居酒屋「純ちゃん」にやってきました。

今夜も25種類のお酒をすべていただきましたが、その中から気になったお酒をいくつか紹介します。

3本目はこれです。

 

 

菊姫(きくひめ)山廃純米 生原酒」

石川県白山市の菊姫さんが醸しているお酒です。

 

実は先日、菊姫まで足を運びました。

目的は、菊姫のフラッグシップ酒である「菊理媛(くくりひめ)」がどのような長期熟成をしているかを見たかったからでした。

 

実は菊姫は本社がある敷地に複数の醸造蔵を持つ一方で、本社から車で10分ほど離れた八幡工場を1998年に竣工させています。

工場は精米所と長期熟成庫からなり、遠くから見ても、堂々たる風格を感じさせる建物なのです。

 

 

その熟成庫は常温熟成庫に加えて、冷蔵設備があって、通年7~8度で推移する長期低温貯蔵ができる体制です。

この新工場完成後、順次、低温貯蔵を始め、3年以上の熟成が条件の「黒吟(山田錦40%精米の速醸酒母)」が2002年頃から、10年以上の熟成が必須の「菊理媛(山田錦50%精米以下の速醸酒母)」が2008年頃から本格販売されて、現在ではこの2つが看板商品です。

 

冷蔵倉庫は一升瓶30万本を貯蔵できるだけの規模で、このうち、現在は一升瓶と四合瓶で合わせて10万本が保管されていました。

なんともスケールの大きな話で、それだけのお酒が現金化されずに、眠っていても平気な菊姫という蔵の体力に脱帽でした。

 

さて、空太郎は四合瓶で26000円もする菊理媛など買えないので、今夜も大人しく、70%精米の山廃純米、生原酒をいただくことにします。

 

 

上立ち香は堂々たる正統派の濃醇なぶ厚い甘い香りが。

玩味すると中程度よりもひとまわり大きな旨味の塊が、平滑になった表面にぶ厚くとろみ層を乗せて、それを激しく波立たせながら、転がり込んできます。

受け止めて保持すると、とろみ層が一瞬で無数のウエットな粒々となって、口の中いっぱいに四散してきます。

粒から現出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味は水飴のようなとろりとしたタイプ、旨味は無数のコクが複雑に重なり合った印象で、両者はネトネト、ベタベタくっつきあいながらも、エネルギッシュに堂々たる態度で踊ります。

流れてくる含み香も濃くて粘っこい甘い香りでデコレート。

後から酸味と渋味がたっぷり現れて、甘旨味を攻め立てます。

甘旨味はこれに対抗し、両者の激しいせめぎ合いが終盤まで続き、最後に飲み下した後の余韻も太めのものでした。

 

いつもの変わらない菊姫でした。

 

お酒の情報(24年68銘柄目)

銘柄名「菊姫(きくひめ)山廃純米 生原酒」 2023BY」

酒蔵「菊姫(石川県白山市)」

分類「純米酒」「無濾過酒」「生酒」「原酒」「山廃酒」

原料米「兵庫県産山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「70%」

アルコール度数「19度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=3740円」

評価「★★★★★(7.5点)」