長野「アルプス正宗 純米原酒 山恵錦」均整の取れた甘旨味と面白い酸味が独自の世界を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

酔い人「空太郎」の日本酒探検

意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

自宅の晩酌にお酒を選びました。

これです。

アルプス正宗 純米原酒 山恵錦」。

長野県松本市の亀田屋酒造店さんが醸しているお酒です。

 

亀田屋酒造店は2018年に竹本家が撤退し、松本に工場があった岐阜県の昭和コンクリート工業が事業を引き継ぎました(親会社はグループ会社の昭和産業)。

蔵元は昭和産業の村瀬大一郎さんが就いていますが、蔵人約10人はそのまま体制を変えずに、伊藤大治杜氏も変わりません。

昭和コンクリート工業は自社のウエブサイトでもせっせと亀田屋酒造店のニュースを発信し、グループの大切な一員であることを強調しています。

和醸良酒の雰囲気は守られているようで、2018年以降、全国新酒鑑評会の成績もよいし、昨年(2023)秋に開かれた第94回関東信越国税局鑑評会の純米吟醸酒部門ではナンバーワンである最優秀賞を獲得しています。

実は、昨年(2023)11月に都内で開かれた「信州のIPPON」の時のフリーテイスティングですべての出品酒を利いたのですが、その時も「お!、これは飛び抜けて美味い」と感じたのが亀田屋酒造店のお酒でした。

間違いなく進化しています。

 

いただくのは山恵錦65%精米の純米原酒、火入れです。

上立ち香は穏やかで痩身な酒エキスの香りが。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽快なスピードで転がり込んできます。

受け止めて保持すると、自律的にライトな感覚で膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス玉様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプル無垢で、より滑らかな印象で、両者は足並みを揃えて、流麗な世界を描きます。

流れてくる含み香は多彩な果物の香りがミックスされた好ましい香りでデコレート。

後から酸味が多め、渋味が少量現れるのですが、この酸味がクエン酸、リンゴ酸を中心にした多彩な果物由来の酸味をミックスした面白いタイプで、甘旨味と相互に交歓し合いながら、独特の世界へといざなうのです。

終盤になると反転縮退して昇華して行きました。

期待以上の味わいでした。

アルプス正宗はもっと注目されてもいいかと思います。

 

お酒の情報(24年31銘柄目)

銘柄名「アルプス正宗 純米原酒 山恵錦 2022BY」

酒蔵「亀田屋酒造店(長野県松本市)」

分類「純米酒」「原酒」

原料米「山恵錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「65%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=2970円」

評価「★★★★★(7.5点)」