広島「於多福 つきあかり 純米」小粋な甘旨味が酸味とせめぎ合いながら、明快なコントラストをつける | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

於多福(おたふく)つきあかり 純米」。

広島県東広島市の柄酒造さんが醸しているお酒です。

 

柄酒造は2018年7月の西日本豪雨の浸水で大きな被害を受け、たったひとりで酒造りをしていた8代目蔵元の柄宣行さんは、廃業も考えました。

しかし、多くのボランティアが復旧に向けて集まり、それに背中を押されて、酒造りを続行したことは、以前のブログで書きました。

背中を押されたのは宣行さんだけでなく、長男の総一郎さんもでした。

父からは「後は継がなくていい」と言われて、芝浦工業大学を卒業後は照明器具メーカーに勤めていた総一郎さんは、多くのボランティアの支援による復旧を見て、9代目蔵元になることを決意し、2020年10月に36歳で帰蔵。

父上の指導を受けて、酒造りに携わっています。

4造り目の今季は杜氏になっていますし、お酒のラベルなども若い人たちにお酒を取ってもらおうとポップなデザインに変えるなど、酒蔵の変革に向けて動き出しています。

期待します。

 

さて、いただくお酒は八反錦60%精米の純米酒です。

上立ち香は霞がかかった甘酸っぱい香りが仄かに。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振ってサラサラな感触を振りまきながら、軽やかに忍び入ってきます。

 

受け止めて保持すると、自律的にテンポよく膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のドライなタイプ、旨味はシンプルで平板な印象で、両者は足並みを揃えて、キビキビとした行進を繰り広げます。

 

流れてくる含み香は上品なイソアミルの香りで薄化粧を付与。

後から酸味が結構な量現れて、少量の渋味と共に小粋な甘旨味を攻め立てます。

甘旨味も対抗してせめぎ合いが続き、味わいはコントラストをはっきりさせながら、終盤を迎えるのでした。

飲み下した後の余韻は適度に細く伸びていきました。

これまでは広島県外にお酒は出回りませんでしたが、今後、露出度が高まることを楽しみにしております。

 

お酒の情報(23年288銘柄目)

銘柄名「於多福(おたふく)つきあかり 純米 2022BY」

酒蔵「柄酒造(広島県東広島市)」

分類「純米酒」

原料米「八反錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「720ml=1760円」

評価「★★★★★(97.0点)」