三重「天下錦 純米吟醸 生原酒」気持ち濃厚な甘旨味が酸渋と協調してグラマラスな世界を描く | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

天下錦(てんかにしき)純米吟醸 生原酒」。

三重県名張市の福持酒造場さんが醸しているお酒です。

 

福持酒造場は今年(2023)の全国新酒鑑評会で金賞を獲得し、これで3回連続になりました。

三重県の酒蔵で金賞の連続記録を持っている蔵は少なく、近年では清水清三郎商店(作蔵)の5回連続ぐらいで、その清水清三郎商店も今年は金賞を取って3回連続になっています。

福持酒造場は蔵元の甥の羽根清治郎さんが2015年に後継者として蔵に入ってから、徐々に酒質を向上させてきましたが、老朽化した設備の更新はなかなか進まないなか、2020BYから3回連続金賞獲得には目を見はります。

そのことについて、羽根さんに聞いてみると、次の様な話でした。

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 酒造りを教えてもらった作蔵の内山智広杜氏が、その後もちょくちょく顔を出してくれるのです。

 たまには手伝いまでしてもらっていて、出品酒造りにいい意味で緊張感を維持できています。

 特に昨年(2022年、2021by)の造りでは、酒造りへの思いが消えてなくなりそうなトラブルがあって、出品酒への熱も下がりそうでしたが、内山杜氏が醪の袋吊りを手伝いに来ると伝えられて、必死に緊張を維持して、おかげで金賞になりました。

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そのことを内山さんに会った際に「随分と羽根さんに目を掛けていますね」と問うと、

「同じ三重県の酒蔵の後輩なので、気になるんです。頑張って酒質向上が進むように、これからも応援したいと思っています」と話していました。

 

いい話でした。

 

さて、いただくのは、三重県産山田錦50%精米の純米吟醸、生原酒です。

上立ち香は甘い蜜の香りがしっかりと。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面にうっすらととろみ層を乗せて、まっしぐらに転がり込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に流麗な雰囲気で膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味8割、旨味2割。

甘味はとろりとした水飴のよう、旨味はやや粗めで朴訥なイメージで、両者は甘味が主導で、妖艶なムードを前面に押し出しながら踊るのです。

 

流れてくる含み香はミックスフルーツのぽっちゃりとした香りでデコレート。

後から酸味と渋味が適量現れて、甘旨味を刺激し、味わい全体にメリハリを付けるのです。

全体はゴージャスな雰囲気が維持され、終盤には再度、コクが膨らんで、飲み下した後の印象も蜜っぽい世界でした。

天下錦も三重県の美酒蔵の1つといっていいと思います。

 

お酒の情報(23年195銘柄目)

銘柄名「天下錦(てんかにしき)純米吟醸 生原酒 2022BY」

酒蔵「福持酒造場(三重県名張市)」

分類「純米吟醸酒」「生酒」「原酒」

原料米「三重県産山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「15度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「○」

標準小売価格(税込)「720ml=1980円」

評価「★★★★★(97点)」