宮城「墨廼江 純米吟醸 雄町」上質な甘旨味が含み香とバランス良くチャーミングに踊る | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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荒木町の人気居酒屋の「純ちゃん」にお邪魔しました。

いつものように3時間かけて25種類の美酒を堪能しました。

その中のいくつかをご紹介します。

4本目はこれです。

墨廼江(すみのえ)純米吟醸 雄町」。

宮城県石巻市の墨廼江酒造さんが醸しているお酒です。

 

今年の全国新酒鑑評会の発表を見て、空太郎が「おや?、どうしたんだろう」と首を傾げたのが宮城県勢の退潮でした。

もともと金賞蔵の多い県でしたが、2009byからは金賞の蔵が10以上の状況が続き、2016byには18に達しました。

宮城県は福島や山形、秋田ほど酒蔵が多くなく、トータルで一位になるのは難しいのですが、18になった年には県の指導官は「金賞獲得率なら一番」と胸を張るぐらいだったのです。

ところが、コロナ禍で金賞審査が行われなかった2019byの翌年に異変が起きました。

2020byは金賞が7蔵、そして今回の2021byはたった5蔵に沈んだのです。

金賞の連続記録を13回まで伸ばした中勇酒造店も今回は入賞も取れずじまいでした。

 

墨廼江酒造は逆に4期ぶりに金賞でした。

おめでとうございます。

ただ、県の指導官の危機感は強いと思います。

是非、巻き替えに期待したいと思います。

 

さて、墨廼江のお酒は雄町の55%精米の一回火入れです。

上立ち香は熟れたバナナの香りが仄かに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振ってサラサラな感触をアピールしながら、軽快に滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に粛々と膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプル無垢な印象で、両者は足並みを揃えて、チャーミングな舞いを披露します。

 

流れてくる含み香はイソアミルのふくよかな甘い香り。

後から酸味と渋味は僅少現れるものの、隠し味役に徹します。

甘旨味は含み香と調和を取りながら、終盤まで流麗なシルキータッチの世界を描き、最後は反転縮退して昇華して行きました。

雄町のお酒にしては爽快な仕上がりでした。

 

お酒の情報(22年174銘柄目)

銘柄名「墨廼江(すみのえ)純米吟醸 雄町 2021BY」

酒蔵「墨廼江酒造(宮城県石巻市)」

分類「純米吟醸酒」「一回火入れ酒」

原料米「雄町」

使用酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「×」

標準小売価格(税込)「1800ml=3190円」

評価「★★★★★(97点)」