福島「飛露喜 特別純米」均整の取れた甘旨味が無駄の全くない舞いを展開し、渋味がメリハリ役を担う | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
SAKETIMESにも連動して記事を載せます。

新宿・荒木町の「居酒屋純ちゃん」にお邪魔しました。

今夜も25種類の美酒をすべていただきましたが、その中からいくつかをご紹介します。

4本目はこれです。

「飛露喜(ひろき)特別純米」。

福島県会津坂下町の廣木酒造本店さんが醸しているお酒です。

 

1999年にデビューした「飛露喜」。

2002年に大ブレークして、以後、常に地酒業界のトップグループにいるわけですが、20年以上が経過して、蔵元の廣木健司さんは酒造りについて、プレジデントスタイルで興味深い発言をされています。

愛用しているスイス高級時計の最古参ブランドの話に絡んで、酒蔵のブランド価値について、次のように話しています。

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10年、20年と同じ酒を造ってきたけれど30年経ったらがらっと変わりました、というのは、20年間、飛露喜を好きで飲んでくれた人を裏切ってしまう。

私は54歳です。

これが20代、30代だったら、酒造りをどんどん変えて進化させなければならないでしょうが、30年近くも「自分の酒はこうだ」と言い続けてきている。

それなのに、50歳を過ぎて急に言っていることが変わったら、「いままで嘘を言っていたのか」と思う人もいるでしょう。

あいつは最後まで変わらずに貫いたなと思われるような人生にしたい。

そうすると、酒の味を変えずに行かなければならない。

この苦しみはとても大きいです。

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一定規模のブランドになってしまうと、直面する問題ですね。

飲み手の嗜好は時代と共に変わっているのに、それにすり寄らずに、でも顧客が離れないようにする、というのは本当に難しいと思います。

先行して美酒の勲章を得た「田酒」「十四代」「飛露喜」などに共通する課題です。

 

さて、今夜いただくのは、そんな定番中の定番の特別純米酒、一回火入れです。

上立ち香はまさに適量のイソアミルの香りが鼻腔を撫でます。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、良く磨き込んで平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触をアピールしながら、軽やかに滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に軽快なタッチで膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の粒々を連射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系の乾いてさらりとしたタイプ、旨味は素朴で無垢な印象で、両者は足並みを揃えて、無駄のないシャープな舞いを展開します。

 

流れてくる含み香は上品なイソアミルの香りで薄化粧を付与。

後から現れるのは渋味が少量で、薄らとしたメリハリをつけるのです。

甘旨味の隙のない、けれど必要十分な魅惑の舞いが終盤まで粛々と続き、最後は反転縮退して昇華して行きました。

余韻は少なく、キレのよさが印象に残るのでした。

廣木さんが目指す「日本酒のメートル原器」の仕上がりでした。

 

お酒の情報(22年122銘柄目)

銘柄名「飛露喜(ひろき)特別純米 2021BY」

酒蔵「廣木酒造本店(福島県会津坂下町)」

分類「特別純米酒」「一回火入れ酒」

原料米「不明」

使用酵母「不明」

精米歩合「55%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=2860円」

評価「★★★★★(98点)」