広島「雨後の月 十三夜 特別純米」小粋な甘旨味にカラフルな酸味が溶け込んで、しっとりと舞う | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。

雨後の月(うごのつき)十三夜 特別純米」。

島県呉市の相原酒造さんが醸しているお酒です。

 

相原酒造は今年(2021年、2020BY)の全国新酒鑑評会で金賞を獲得し、これで10回連続(2020年は金賞審査はなく、入賞までなので、2011年から)金賞という快挙を成し遂げました。

全国新酒鑑評会では出品したお酒の3割弱が金賞になるので、1回取るのは難しくない(と素人は生意気にいいますが)のですが、これを10回連続するというのは容易なことではありません。

(加藤忠一さん描)

 

現時点で10回以上の連続記録を維持しているのは、以下の6蔵に過ぎません。

 

17回 秋田酒類製造御所野蔵(秋田)

13回 中勇酒造店(宮城)

12回 東日本酒造協業組合(福島)、名倉山酒造(福島)

10回 惣誉酒造(栃木)、相原酒造(広島)

相原酒造の杜氏は1998(平成10)年から堀本敦志さんが担っています。

堀本さんは東広島市の安芸津にあった堀本酒造の蔵元後継者で腕利きの若手杜氏として脚光を浴びていましたが、蔵が経営的に苦しく廃業。

 

そこで、相原酒造の相原準一郎蔵元が堀本さんを杜氏に招いたのです。

以後、二人は二人三脚で相原酒造のお酒の質を上げ、ブランド価値の向上に努めています。

 

さて、いただくお酒は山田錦60%精米の特別純米酒ですが、13度台の低アルコール原酒なので、サブタイトルとして「十三夜」と付けています。

上立ち香は謙虚で控えめな麗しい香りが適度に。

玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振りまきながら、軽快なスピードで滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、自律的に流麗な雰囲気を放ちながら膨らみ、拡散して、適度な大きさのガラス球様の粒々を速射してきます。

粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。

甘味は上白糖系のさらりとしたタイプ、旨味はシンプル無垢なコクで、甘味と共に、小粋なハーモニーを奏でます。

 

流れてくる含み香は上立ち香同様、酢酸イソアミルの柔らかな香りで薄化粧を付与。

後からライチと青りんご由来の酸味が現われて、甘旨味に被さって、速やかに溶け込んで甘酸っぱい世界をそこかしこに形成します。

味わいは多彩になり、皆が協調してエレガントな世界を描ききるのでした。

飲み下した余韻は爽快な風のようでした。

低アルなのにしっかりとした味わいを見せる美酒でした。

金賞常連蔵の実力を伺えました。

 

お酒の情報(21年253銘柄目)

銘柄名「雨後の月(うごのつき)十三夜 特別純米 2020BY」

酒蔵「相原酒造(広島県呉市)」

分類「特別純米酒」

原料米「山田錦」

使用酵母「不明」

精米歩合「60%」

アルコール度数「13度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税込)「1800ml=2970円」

評価「★★★★★(97点)」