兵庫県の名湯、城崎温泉に泊まりに行きました。
この温泉地は旅館の風呂を大きくせずに、宿泊客が温泉街の外湯を巡るように誘導しており、空太郎も7つの外湯を巡ったのですが、途中で湯疲れがし、一服しようと思った時に目に入ったのが酒屋の角打ちでした。
坂本屋酒店さんがやっていたので、入店し、温泉街を行き来する人を眺めながら地元の酒をいくつか堪能しました。3本目はこれです。
「小鼓(こつづみ)路上有花 葵(ろじょうはなあり・あおい)純米大吟醸」。
兵庫県丹波市の西山酒造場さんが醸しているお酒です。
西山酒造場はオイルショック後の日本酒の需要低迷期に、「国内の人口は確実に減るのだから、日本酒の需要が絶対量として回復することはない」と蔵元が確信し、醸造技術を活かした商品の多角化と無限に広がる海外市場への日本酒の輸出の2点に力を入れています。
特に商品の多様化には目を見張ります。
清酒以外のアルコール商品は焼酎(栗、黒豆)、リキュール(ブドウ、梅、チョコレート、プラム、柚子)、ブランデー。
それ以外にはスイーツ(焼酎風味、酒粕入り)、甘酒ヨーグルトや甘酒豆乳、塩麹と多彩。
しかも、すべての商品のラベルのデザインに統一感があります。
これは、先代蔵元の時代に「酒の中身は杜氏が造り、外側のパッケージを決めるのは蔵元」との方針から、美術作家の綿貫宏介氏を起用して“小鼓ワールド”を作り上げてきました。
その方針は現蔵元にも引き継がれており、まさにマイペースの酒蔵です。
さて、そして、今回いただくのは西山酒造場を代表する純米大吟醸酒です。
山田錦50%精米の火入れ酒です。いただきます。
上立ち香は初々しくて柔らかな香りが仄かに。
玩味すると中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に油膜を張って、ツルツルの感触を説きながら、ゆったりとしたペースで忍び入ってきます。
受け止めて保持すると、促されるままに素直に膨らみ、拡散しながら、ガラス玉様の粒々を速射してきます。
粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。
甘味はザラメ糖系のやや奥行きのあるタイプ、旨味はシンプルながらもややチクチクとした突起が表面にある印象で、端から旨味主導のキビキビとしたハーモニーを奏でます。
流れてくる含み香はイソアミルの抑制の効いた甘い香りで薄化粧を付与。
後から酸味と渋味が少量現れてアクセント役を買って出ます。
後半になると甘味は衰退し、スレンダーな旨味が酸渋を従えて、終盤に向けてやや神経質な舞いを展開し、最後は反転縮退して、そのまま昇華していきました。
山田錦の純米大吟醸にしては甘味抑えめ、旨味主役の仕上がりでした。
お酒の情報(21年85銘柄目)
銘柄名「小鼓(こつづみ)路上有花 葵(ろじょうはなあり・あおい)
純米大吟醸 2019BY」
酒蔵「西山酒造場(兵庫県丹波市)」
分類「純米大吟醸酒」
原料米「兵庫県産山田錦」
使用酵母「不明」
精米歩合「50%」
アルコール度数「15.5度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税込)「720ml=5500円」
評価「★★★★(4.4点=93点)」