自宅の晩酌にお酒を選びました。これです。
「田林(でんりん)特別純米 美山錦」。
宮城県加美町の田中酒造店さんが醸しているお酒です。
「真鶴」を主力銘柄にした田中酒造店は低迷する業績に加えて、後継者難もあって、2009年に同じ加美町にある中勇酒造店に全株式を売却して傘下に入りました。
当初は地元で提携の発表会を開くなど、中勇酒造店も田中酒造店を長期に渡って支援するものと思われましたが、連携のメリットを得ることができないまま、数年後に神戸の複合企業のジーライオングループに全株式を売却したのでした。
そのジーライオングループは主力が自動車販売ですが、ほかにも料飲店や旅館など幅広く事業を拡大しており、田中酒造店のほかに、山形県の嵐山酒造(川西町)、福岡県の朝倉酒造(朝倉市)、高知県の高知酒造(いの町)の経営権も取得しています。
複数の酒蔵を傘下に置くことで、共同仕入れや共同の販促でメリットが出ると考えているのかもしれませんが、清酒製造はなかなか集約のメリットがでない仕事で、JFLAが大きな目標を掲げて10年ほど前から酒蔵の吸収に力をいれましたが、結局、不調に終っています。果たして、ジーライオングループはどうか。お手並み拝見です。
さて、お酒ですが、美山錦60%精米の特別純米、一回火入れです。いただきます。
上立ち香は酒エキスの香りが微かに。
口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に産毛を乗せて、柔らかく周囲を撫で回しながら転がり込んできます。
受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに優しく膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス玉様の粒粒を連射してきます。
粒から滲出してくるのは甘味7割、旨味3割。
甘味は氷砂糖のような冷涼なタイプ、旨味はシンプルでまじりっけなく、両者は活き活きとした態度でクリアで青空のような世界を描くのです。
流れてくる含み香は溶かした砂糖の甘い香りで薄化粧を施します。
後から来るのは酸味と渋味が適量で、最初は酸味が先行して甘旨味と交互に主張しあい、より賑やかな世界に変わり、後半になると今度は酸味が落ちて、渋味が甘旨味を適度に締め付けて、味わいのピントを明確にしてくれるのです。
終盤になると渋味主導で全体がテンポよく縮退して、そのまま、喉の奥へと吸い込まれていきました。
それでは田中酒造店のお酒をもう1本、いただくことにします。
お酒の情報(20年80銘柄目)
銘柄名「田林(でんりん)特別純米 美山錦 2018BY」
酒蔵「田中酒造店(宮城県加美町)」
分類「特別純米酒」「生詰酒」
原料米「美山錦」
使用酵母「不明」
精米歩合「60%」
アルコール度数「15~16度」
日本酒度「+3」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税抜)「1800ml=2800円」
評価「★★★★★(4.4点)」