広島「宝剣 純米吟醸 酒未来」シルキータッチの甘旨味がさざなみのように広がる | 酔い人「空太郎」の日本酒探検

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意欲ある先進地酒蔵のお酒をいただき、その感想を報告します。
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広島を代表する銘酒、「宝剣」のお酒をまとめて取り寄せて飲み比べをしました。

最後の5本目はこれです。

 

 

「宝剣(ほうけん)純米吟醸 酒未来」。

広島県呉市の宝剣酒造さんが醸しているお酒です。

 

いまや広島を代表する銘酒の一つになった宝剣ですが、意外とラインナップは少なく、圧倒的に定番酒主体です。

精米歩合も40,50,55,60の4種類のみです。

季節商品も少ないし、八反錦以外のお酒も極少になっています。

その理由について、蔵元杜氏の土井鉄也さんは次のように話しています。

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季節商品は時期物として結構売れるし、新しいシリーズを投入すると受けることはわかっています。

けれど、ラインナップが増えると、ブランドイメージが拡散します。

なので、季節限定は夏の酒と秋の酒(秋あがり)だけ。生酒も本当にわずかな量だけ出荷します。

 

とにかく、定番のお酒のファンになっていただき、一年中、それを飲んでほしいのです。

八反錦だけではつまらないから、雄町のお酒も造ってほしいとも言われていますが、扱う米が増えれば、それだけ品質の安定が難しくなるので、気乗りがしません。

まあ、最終的には自分がやりたいと思えば、やる、ということですね。

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そういうわけで、ごくごく例外として、造り続けているのが5本目の酒未来です。

酒未来は山形の十四代蔵の蔵元が独自開発した酒米で、蔵元杜氏の高木顕統さんが、将来性を見込んだ後輩たちを一本釣りして酒米を提供しています。

 

ということは酒未来のお酒が造れることが、若手杜氏の一種の勲章になっているわけです。

土井さんは高木さんを最も尊敬する先輩と位置づけており、迷うことなく、ずっと造っています。

50%精米の純米吟醸、火入れです。いただきます。

 

 

上立ち香は酒エキスの香りが仄かに。

口に含むと中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振り撒きながら、軽快なステップを踏んで、滑り込んできます。

 

受け止めて保持すると、リズミカルに膨らみ、拡散しながら適度な大きさのガラス玉様の粒粒を速射してきます。

粒から滲出してくるのは甘味6割、旨味4割。

甘味は上白糖系のサラリとしたタイプ、旨味もスレンダーな筋肉質の印象で、両者はさざなみのように広がりながらシルキータッチの味わいを放つのです。

 

流れてくる含み香は薄甘い香りが極少に。

後から渋味が少量現れて、薄氷の輪郭を付与。

終盤まで淡々とした舞いに終始し、飲み下した後の余韻も軟らく、儚いものでした。

 

 

5本のお酒にはすべて共通する宝剣の旨味が背骨になっていました。

 

お酒の情報(20年39銘柄目)

銘柄名「宝剣(ほうけん)純米吟醸 酒未来 2018BY」

酒蔵「宝剣酒造(広島県呉市)」

分類「純米吟醸酒」

原料米「酒未来」

使用酵母「不明」

精米歩合「50%」

アルコール度数「16度」

日本酒度「不明」

酸度「不明」

情報公開度(瓶表示)「△」

標準小売価格(税抜)「1800ml=3300円」

評価「★★★★(4.4点)」