秋田県の人気酒の山本をまとめて取り寄せて、飲み比べをしました。3本目はこれです。
「山本(やまもと)ミッドナイトブルー 純米吟醸」。
素早い経営判断をモットーとする蔵元の山本友文さんは、社員蔵人の働き方改革にも前向きです。
酒蔵にとって働き方改革の一番の障害物は麹造りです。
平均して丸二日かかる麹造りは、数時間ごとに必要な作業があり、深夜から早朝にかけてもやらなければならないことがあるからです。
このため、この作業だけは蔵元が担当し、蔵人は泊まらせないというやり方をしている酒蔵もあります。
しかし、1500石も造る山本では、蔵元への負担ばかりが重くなりすぎて無理なので、蔵人6人は週に1回交代で泊まりに入っていました。
これを少しでも減らそうと2年前に導入したのが、ハクヨーの5段製麹機でした。
造りの後半の作業を機械に任せる方法で、当初、山本さんは、「一升瓶2000円程度の相対的に廉価な酒の麹造りをハクヨーに切り替える」方針でいたそうです。
ところが、やってみると、「手造りよりもハクヨーでやった麹の方が、我々の理想に近かったのです。迷わず、すべてをハクヨーに切り替えました」と山本さん。
結果として泊まり番は不要となり、蔵人の勤務時間は7~16時で、残業なし、泊まりなしの体制になったのだそうです。
同様な動きはすでに散見されており、10年後には有力地酒蔵はすべてが泊まりなし、になっているかもしれません。
さて、3本目は、山本さんが裏貼りで語っているので、ご紹介します。
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この商品は香りが敢えて控え目で柑橘系のフルーツのようなジューシーな酸味と、日本刀のような鋭い切れ味が特徴のピュアブラックに対して、上立つ穏やかな香りと、余韻のある後味が特徴です。
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秋田酒こまちの純米吟醸、一回火入れです。
いただきます。
上立ち香はカプロン酸エチルと酢酸イソアミルの香りがらせん状になって漂ってきます。
玩味すると、中程度の大きさの旨味の塊が、平滑になった表面に打ち粉を振って、サラサラな感触を振り撒きながら、まっしぐらに忍び入ってきます。
受け止めて舌の上で転がすと、促されるままに素直にリズミカルに膨らみ、拡散しながら、適度な大きさのガラス球様の清澄な粒粒を速射してきます。
粒から滲み出てくるのは甘味7割、旨味3割。
甘味は上白糖系のサラリとしたタイプ、旨味はシンプルで肌理の細かな印象で、両者は足並みを揃えて、シルキータッチの麗しい世界を描くのです。
流れてくる含み香はバナナの香り主体で、薄化粧を付与。
後から酸味が少量やってきて、薄氷の輪郭を施しながら引き締め、終盤になると代わって渋味が台頭してきて、全体を適度に取り纏めて、そのまま、喉の奥へと吸い込まれていきました。
余韻は適度に伸びました。それでは山本の酒、最後の4本目に参ります。
お酒の情報(19年170銘柄目)
銘柄名「山本(やまもと)ミッドナイトブルー 純米吟醸 2018BY」
酒蔵「山本合名(秋田県八峰町)」
分類「純米吟醸酒」
原料米「秋田酒こまち」
使用酵母「不明」
精米歩合「麹米=50%、掛米=55%」
アルコール度数「15度」
日本酒度「不明」
酸度「不明」
情報公開度(瓶表示)「△」
標準小売価格(税抜)「1800ml=2960円」
評価「★★★★★(4.3点)」