バレエ・ダメンズ・グランプリ結果発表第5位の発表です!

 

バレエに限らず、古典と言われる文学や戯曲、オペラで、圧倒的に男性側がアウトなことが多いのは、どうしてでしょう…😅

ダメンズは大量に見つかりますが、「ヤバいヒロイン」って、結構レアな気がします。

(個人的には、「ラ・バヤデール」のニキヤは、結構ヤバめ)

現実世界でも、男がダメなケースが多いからでしょうか(男のお前が言うな😂)

 

 

 
 

第5位

オネーギン(「オネーギン」)

 

ロシアで最も有名な文芸作品ともいえる、プーシキンの「エヴゲーニイ・オネーギン」を元に、ジョン・クランコが振付したドラマチック・バレエ。

ガラ公演でも、パ・ド・ドゥが多く上演される他、本家シュツットガルト・バレエの他、パリ・オペラ座バレエのエトワールたちが憧れる作品の1つでもあります。

 

 

作品自体はドラマチックで高い人気を誇りますが、主人公オネーギンは、「嫌な男」と言われがち😂

もちろん、19世紀ロシアの時代背景、そしてバレエでの描かれ方の特異性を考慮する必要はありますが、バレエのオネーギンは、バレエファンの怒りを買う行動をしがち。

 

では、彼のダメンズぶりを、作品を彩るパ・ド・ドゥの数々と共に、ミルタ様に総括いただきましょう。

 

 

バレエの幕開け、無為に苦しむ青年貴族オネーギンは、田舎の地主貴族ラーリン家を訪れます。

 

この「無為に苦しむ」とは何ぞや、と申しますと、この時代のロシア文学で度々登場する「余計者」という人物像の特徴です。

 

ミルタ様:では、ローズマリーの力でWikipediaよ、出でよ!

 

当時の社会的弾圧の中で、西欧の自由主義思想を習得した知識人たちは、そのスキルを活かす場を奪われ、社会から邪魔者扱い

そのため、ただふさぎこんで、日々を送るようになってしまったというわけ。

青年貴族オネーギンも、そうした若者たちの1人。

ちょっと違うけれど、日本だと就職氷河期の若者的?

 

ただ、バレエではオネーギンの精神面よりも、タチヤーナの恋へ重きを置いたため、彼が嫌~な奴に見えてしまうというちょっと可哀そうなところも。

 

ズルマ:あれ?今日のミルタ様、ちょっと優しくない?

モイナ:頭でも打ったんとちがう?

 

さて、ラーリン家へやってきたオネーギンに恋をしてしまったのが、長女タチヤーナ。

フランス語の書物を愛する文学少女であったタチヤーナには、ペテルブルグからやってきたオネーギンが、まるで小説から出てきた理想の王子様に見えてしまいます。

都会から来たというだけで、イケメンポイントがチャリーンと貯まる、そういった部分もあったかと。

ほら、「今日から1組に加わる東京から来たオネーギンです」と紹介されただけで、女子が色めき立ち、男子は「あいつ、お高くとまってるぜ」となるあれです。

 

そして、はやる恋心は、もう抑えられない!

その勢いで、アツアツのラブレターを書いていると…、鏡の中から王子様が…。

ミルタ様:全く、あっちもこっちも直ぐに沸騰しちゃって、ティファールばっかりよ

 

イザベル・シアラヴォラ(タチヤーナ)&エヴァン・マッキー(オネーギン)

 

初代タチヤーナ役、マルシア・ハイデ様!オネーギンは、ハインツ・クラウス。

 

こうして、深夜のテンションで書き上げたラブレターを、冷めたオネーギンへ渡してしまったから、さあ大変!

元々、オネーギンからしたら、タチヤーナは地方在住の夢見る夢子さん。

また、当時の価値観では、未婚の女性が、男性相手に突然手紙を書く方がアウトという道徳観でした。

 

小説では、オネーギンは、「僕みたいな人には、君を幸せにできない」ということ、そして「こうした軽率な行為は慎むこと」を誠実に伝える設定。

ところが、バレエでは、あろうことかタチヤーナの目の前で、ラブレターをズタズタに引き裂く、という失礼極まりない男に!

「こんなお子様、僕は眼中にないよ」と言わんばかり。

当然、タチヤーナは大ショック!観客の怒りは爆発手前!

 

オルガ・スミルノワ(タチヤーナ)&ウラディスラフ・ラントラートフ(オネーギン)

 

 

そこから一気に歯車が狂っていき、レンスキーへの当てつけとして、フィアンセのオルガとこれ見よがしにイチャイチャ…

もちろん、腹を立てたレンスキーは、名誉をかけて決闘を!

 

小説では、オネーギンは渋々受け入れただけで、親友との決闘には後ろ向きであったとされています。

しかし!!!

元はといえば、決闘を申し込まれるようなことをしたのは、他でもないあなたです!!!

むしろ、目の前で彼女とイチャイチャされて、激怒しない男の方が不安ですわ。

 

 

さて、決闘で親友を殺してしまったオネーギンは、タチヤーナの前から姿を消し、旅へ…。

でも、こうした自分探しで見つかるほど、「自分」って分かりやすくないですよ…。

ニキヤ:私のお寺にもいっぱい来るわ、迷えるダメンズたち。まあ、私もダメンズ好きだけど😂

 

 

そして、「オネーギン=ダメンズ」を決定的にしたのが第3幕!

 

自分探しも失敗し、相変わらず鬱々とした状態で、ペテルブルグへ戻ってきたオネーギン。

夜会の席で、美しい公爵夫人に気がつき、呆然とします。

それは、紛れもなく、自分が酷い扱いをした、あのタチヤーナ😲

 

ここで都合よく過去は忘れ、まさかの一目惚れ!

アツアツのラブレターを書いた挙句、公爵が不在のタイミングで、部屋へ押しかけるという暴挙!

 

一方のタチヤーナは、事件の後で、彼の蔵書を読み漁り、どこかで彼の空虚性に気がついていました。

理想の王子様像は、ガラガラと崩れ落ち、ここで、彼女は大きく成長するわけです。

ところが、オネーギンの時は止まったまま

これでは、どちらがお子様か分かりません。

 

とどまるところを知らないオジサン(原作では、オネーギンってもっと若くて、最終幕で26歳である設定)は、タチヤーナに必死にすがりつき、どれだけ自分が彼女を愛しているかを伝えます。

 

ズルい!とにかくズルい!

「はあ?今さら?」と冷静に見ると思うのですが、どこか見捨てられず、「もしかしたら悪い人ではないかもしれない…。良くしてくれるかもしれない…。」と変な期待をさせてしまう男!

これは、女性を不幸にしてしまう、無自覚タイプのダメンズの代表格!

 

 

イザベル・シアラヴォラ(タチヤーナ)&エルヴェ・モロー(オネーギン)

ヴィオレッタ・ボフト(タチヤーナ)&ユーリー・グリゴレフ(オネーギン)

ナタリア・マカロワ(タチヤーナ)。亡命後、初めて祖国へ戻った際のパフォーマンス

 

ラストで、かつて自分がやられたように、恋文をズタズタに引き裂くタチヤーナ。

これは、彼女が理性を保つための最後の手段だったのでしょう。

そして、追い返されるオネーギンですが、タチヤーナも相当動揺しているわけですよ!

スカッとするはずが、どうしてこっちが悪いことしたみたいな気持ちにさせるのか!

全く、 罪作りな男といったらありゃしない!!!

 

ニーナ・カプツォーワ(タチヤーナ)&ルスラン・スクワルツォフ(オネーギン)

 

(皆様からのコメント)

 

”タチヤーナの恋心をさんざん踏みにじったくせに、後で気が変わって、彼女にすがりつくように求愛するのがホントに腹立ちます!”

 

”アルブレヒトと悩みましたが、あの未練がましさを思うとやはりオネーギンかなぁ、と。タチアナの潔さとの対比もあって、キング・オブ・ダメンズはオネーギンに1票!”

 

”基本的にロシア文学出身の主人公はクズ。”

 

”オネーギンのダメンズっぷりはリアリティがあっていかん。こういう輩(←輩呼ばわり……)って今でもフツーにいそう。”

 

”はじまりに愛がないのは此奴のみ!”

 

”自己中すぎて大嫌い。しかも親友まで撃ち殺す。いつ観てもムカムカしてしまいます。”

 

”本人の目の前で恋文破り捨てるのはもちろんなんだけど、田舎娘は袖にするのに洗練された貴婦人になったと見るや急に態度変えるところ? 百歩譲って美しくなったタチアナを好きになるのはいいとして、その気持ちを打ち明ける図々しさ。相手の気持ちも立場も慮ることが出来ないとこ。どんだけ世界が自分中心に回ってるんだろ。 徹夜で恋文書き上げてホントに相手に送っちゃうタチアナもどうかとは思うけど…。 夜中に書き上げた恋文ほどこっぱずかしいものない。それを読まされる側のいたたまれなさはちょっとだけオネーギンに同情する。”

 

”女の敵!”

 

 

 

 

ミルタ様:「拝啓 オネーギン様。どうか、どうか真夜中にドイツの森までお越しください。舞踏会を用意して待っております…。」

ウィリーズ:「え、明日から毎日ポロネーズを特訓?付き合えないわ!」

 

シュツットガルト・バレエ「オネーギン」

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