鉱物採集:秋田県、荒川鉱山で | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

0.注意

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荒川鉱山も立ち入り禁止か

 googleで最近検索してみると立ち入り禁止の立て札があるというサイトが見つかりました。以下のサイトです。(2021年8月現在で)

     JL7TUSの覚書き: 荒川鉱山は立ち入り禁止になりました

荒川鉱山はかなり広いので何処に立て札を立てられたのかわかりませんが、立ち入りの際には注意してください。

 嗽沢坑は、2011年以前から陥没、崩落していますし、最近の嵐で抗口も崩れたらしいので、近づかないでください。嗽沢坑では鉱物収集はまったくできません。しかし、私が書いている嗽沢は嗽沢坑ではなく、その隣に在る沢なので、私が訪ねたときは、それほど危険に感じませんでした。が、抗口がいくつか見られます。抗口から坑内に入るのは危険なので、中に入るのは絶対おやめください。崩れやすく陥没している嗽沢坑と繋がっている可能性があります。

 

 (追記)2021年11月現在については、以下の所をご覧ください。

  → 久し振りの荒川鉱山で水晶を拾う 

 

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1.荒川鉱山の位置

 秋田県大仙市協和にある荒川鉱山は現在水晶が採れるところでよく知られています。元々は銅鉱山でしたが、昭和15年に閉山しています。

 荒川鉱山があるところに行くのは簡単です。鉱山の状態の紹介は参考2や3で見ることができますが、もうだいぶ状況は変わっていると思います。行くには先ずは、通称「新協和カートランド」を目指します。ここはネットで検索すれば、簡単に行くことができます。
      

      国土地理院の地図引用

      (国土地理院の現在の地図を見ると、日影沢の位置が違っています)

      (現場に行くと、入口に立て札が立っているので、

                      間違えることはないでしょう)

 

2.以前あった坑道巡りなどについて
 以前は、このカートランド前の川を挟んで向かい側には百目石抗口があって、坑内巡りが2007年頃までできました。(下図参照)その右側には選鉱場跡が今も残っています。川の手前にも沈澱池などの遺跡がありますし、カートランドの左奥には嗽沢抗口や事務所跡などの史跡を示す標柱もあります。以前(2007年頃)には、カートランド場の山際には、砂袋を詰めて塞がれた抗口がいくつか見られましたが、最近ではその後の台風や大雨でだいぶ変わったとの話を耳にしますが、今はどうなっているか。
              

             荒川鉱山(百目石坑)の坑道巡り(2007年まで、当時の案内図)

 

 百目石坑内には私は一度入ったことがあります。2007年に封鎖される前です。カートランド前の建物から橋を渡って右手方に進み、抗口に入ります。構内に入ると2,300m進んで突き当たりに広場のような広い空間のところに出ます。脇に縦坑があってエレベータで繋がっていました。乗れませんでしたが。左手の方に坑道が続いており、また右のエレベータの脇から、最初に入った抗路に右に曲がって登るように広い通路になっていて、その坂になった通路の右脇には鉱物が展示されていました。この時カメラを持って行かなかったので写真はありませんが、写真を撮りに行こう行こうと思っているうちに坑内で落盤があって坑道は封鎖されてしまって、写真は撮れずじまいになってしまいました。

3.採集場所
 水晶は、川の中を探すと頭が擦れてなくなった物がたくさん落ちているのがわかります。また、サーキット場の右手のズリでも拾えます。が、形の良い物は拾うのが難しいでしょう。しかし、最後の方に在る写真の瑪瑙や紫水晶が入った20cmほどある石は、川の中で拾い上げました。荒川鉱山では、かなり広い範囲のあちこちで水晶の採集はできます。2箇所だけ書いておきましょう。比較的楽に行けます。

 一つ嗽沢(うがいさわ)です。嗽沢抗口の左手の方にある沢の脇に多くの人が通った跡がありますから、これを探していけば良いだけです。

 

 すぐに砂防ダムの脇に着き、反対側の山際に坑道を見ることができますが、それを無視してひたすら登るだけです。

        

 

途中で3mほどの滝(下写真、涸れ沢なので崖が適当か)がありますが、左に回ってロープなしで登れます。以前に若い二十代(?)のカップルが水晶を探したいと言って荒川鉱山に来たときに、道具を何も持たずに来ていたのに、案内して登ることができました。が、最近はどうなっているのか。

      

 

 途中で左右に裂け目が続いているような所も通ります。右の方には登ってみました。途中に抗口がありますが人が入るには小さい物でした。夏の暑いときに行ったときには、抗口から涼しい風が吹いていたので、そこで涼みました。その抗口より上に上ると、大きな縦穴があって、それはかなり深いようで底まで見ることができませんでした。

 左の裂け目の方は登っていませんのでわかりません。坑道のような物が見えます。

 

 右側、坑道が見える。更に登ると、大きな穴が、縦坑で。

 

     

 左側、坑道がみえる。

 

 左右の裂け目を過ぎて、更にまっすぐ登っていくとズリが拡がっていました。最近ではどうなったのかわかりませんが、私が最初に訪ねた2011年にはあまり手が入っていない感じだったところが、1年後に訪ねると数mも掘られた跡がたくさん在って、その荒廃ぶりにビックリしました。砂防ダムからそのズリまでの間にも水晶の脈がたくさん在ったのですが、それもほとんど削り取られてしまって何もなくなっていたのにも驚きでした。私の採集は、ほとんど表面採集なので、その荒廃ぶりに、所属している鉱物の会で採集の方法も自重するように話したことがあります。2015年頃に青森から来た20代らしい若いカップルを案内した時にはめぼしい物はなくなった感じでしたので、以来、嗽沢には登っていません。
      

2011年に訪ねたときの嗽沢のズリ

  (下から見た。今はもっと荒れているはず)

 

 荒川鉱山の緑水晶は、水晶の先が緑泥石が吹きかけられたような、表面だけが緑色の水晶ですが、嗽沢のここが主な産地だと思います。
 ちなみに嗽沢は、坂上田村麻呂が東北に遠征した際にこの沢で嗽をしたという故事に因んで付けられたそうです。(参考1、p10)
 

 もう一つ日陰沢です。日陰沢は入口に立て札が立っています。夏に行くと入口から、丈が2mもある草に阻まれて、私は何度も挫折しました。日陰沢に入ってから100mもしない所で右の沢から流れる川(岸はコンクリート板、落ちると危険です)を跨ぎ、更に登ります。途中に砂防ダムが在ったような気がしますが、記憶に残っていません。砂防ダムの向かって右側を登ったような記憶がありますが、記憶違いなのか、記録を残していませんで。そこを過ぎて暫く枯れ木立のような中を進むと沢の広い空間になった感じの突き当たりに近い、手前が原っぱのようになっていて、右上方を見ると水晶が転がっているのを見ることができます。秋ならばここまで簡単に行くことができます。

 

  日陰沢の詳細は以下の所で見ることができます。

   荒川鉱山日陰坑 | かすとろーるセリカ (ameblo.jp)

  私は奥まで行ったことはありません。また、このサイトを見ると、雪のあるときに行くと川に落ちる可能性が高くて危険だと思えます。川は傾斜しており、落ちると滑って流されるか、溝が深くて上がるのが大変です。危険なので、私は草と雪のないときにしか行ったことはありません。

 さて続きです。

 反対側には、坑口があって砂袋が積まれて塞がれています。砂袋が積まれている、この坑道口はすぐに深くなるので危険です。(中に入らないようにお願いします。)覗き込むと一見つまらないような坑道に見えますが、隙間からのぞき込んでよ~く見ると苔むした水晶が硬い岩盤にびっしり付いているのを見ることができました。とても剥がせるとは思えないし、手が届かないところにありました。

 

 私が水晶を採集したのは、この坑道ではなくて、反対側にある、先ほどの右上方の水晶が転がっているのが見える場所です。たくさん水晶が転がっているので、3回ほど訪ねましたが、行く度に形の良い水晶はなくなっていました。また、晶洞も掘られて次第に大きくなっていました。人の背丈にも満たない、高さ1m程度の、奥行き1mもない、人が入ると言うには浅い晶洞です。

 ここを最後に訪ねたのは、2016年の冬が始まる直前頃で、亀山盛鉱山への道が閉ざされる11月末頃です。この時は、晶洞の前で水晶を探してから、汚い泥の晶洞を眺めているうちによく見ると泥の中に水晶が埋まっているのが見えたので、タガネとハンマーで中で叩いて水晶を採集しました。叩くこと1時間ほど、すると天井に近いところがドサッと足の上に落ちたので、直前危ないと思って足を引いたのでかすり傷で済みました。

4.採集結果
 下の写真は落ちてきたものを採集して運んだ水晶の塊です。戻る際に途中の川を跨ぐのに重くて苦労しました。今この水晶は庭に転がっています。大きいので洗浄はブラシで洗って泥を落とした後に庭に放置。雨水で綺麗になることを期待していますが一向に綺麗になっていきません。がっかり。
  

 

 次は、タガネで打っていて天井から落ちた水晶の塊

 裏側にも水晶がびっしり

 床のタイルのサイズは9cm四方

  

一生懸命タガネを打った跡が中央に白く...。

別な時に嗽沢で採集した水晶は、10%塩酸で洗浄しました。洗浄前後の写真です。洗浄に2ヶ月ほど掛かけました。他の水晶も一緒に洗浄していたこともありますが。
 

塩酸洗浄前

 

塩酸で洗浄後

以下は、嗽沢で採集した水晶を塩酸で洗浄後。

上の写真と同じ物。
 

下の二つはいずれも嗽沢で採集した水晶

  

 

 

これは塩酸で洗浄してません。

 

 に、川の中から瑪瑙と紫水晶が層になった20cm程の厚さ8cmの石英を拾ってきました。そのままでも綺麗なことが予想できます。それはいつか石材屋で切断してもらおうと思っていますが、まだしていません。畑で重しとして使っています。以下がそれです。

 

 

 川で拾った瑪瑙(畑に転がしておいた物(最大長約20cm)

 

 

 上の試料の別の面

 紫水晶の部分は日光に当たって色が薄くなっている。

 切断して研磨すれば、綺麗な面が出てくると思ってますが。

 

5.荒川鉱山の水晶について

 荒川鉱山では、水晶の表面だけが緑色の緑水晶がよく知られています。表面の緑は、緑泥石(シャモス石)が付着した物です。またここの水晶は写真のように群晶はくっつきあっている物が多いですね。上から見ると周囲の根元部が白っぽく不透明で、花が咲いているように見えます。白い花が咲いているように見えるので、「花咲水晶」と呼ぶ人がいます。また、しばしば岩と水晶の間に緑色の柔らかい緑泥石(シャモス石)が発達し、この上に水晶の結晶が見られることも多いですね。上の水晶は両方ともシャモス石上に水晶が発達していますが、シャモス石は塩酸により色も青灰色に変化しています。シャモス石は非常に柔らかいので、爪で簡単に傷がつきます。

 

 荒川鉱山は、銅山なのに水晶で有名です。その銅鉱物はというと、私は嗽沢でしか見たことがありません。嗽沢で孔雀石などを拾いましたが、2015年頃にはほんのちょっと、かけら程度しか緑や青緑色の石を見ることしかできませんでした。いろいろな銅を含む鉱物が見つかっていてもいいと思うんですが。ミネラルショーでも自然銅は見たことがありますが、他の銅鉱物についても見たことがありません。なので銅鉱物の採集は難しいでしょう。荒川鉱山の三角黄銅鉱は、秋田大学の鉱物博物館で見たことがありますが、宮田又鉱山の物であったか忘れてしまってます。写真があると思うので見つかったらこちらに掲載することにしましょう。

 

6.最後に

 なお、荒川鉱山や宮田又鉱山の資料などは、国道から荒川鉱山への道に入る際に、左方にある大盛館で見ることができます。荒川鉱山に行ったときにはついでに覗いてみてください。

 

7.参考
1.進藤孝一,協和町の鉱山,秋田文化出版社(1994)
2.横路悠,地学研究,v55,3,p185-188,(2006)
3.平間敏之,水晶(鉱物同志会会誌),23号,p36-38(2012)
4.浜野一彦,地質調査所月報,v4.p219-222(1952)