この本は、TGCBerylさんが書いた本。
石や鉱物がキラキラすると言うのも、元々は結晶に面が出ているから。その面のなす角度(面角)を測定して結晶図を書くことができる。それを行なって書かれた本です。
結晶を理解するには、稜線(edge)や隅(角,頂点,corner)ではなく、面(face)を把握することが大切。結晶を記述しようとするときに最も早く出てくるのが、ニコラス・ステノが見つけた「面一定の法則」です。それは「同じ鉱物であれば、外形が違っているように見えても同じ結晶面と結晶面のなす角度(面角)は常に等しい」というものです。
下の図は、参考1のp6に掲載されている水晶の結晶の例です。r面とz面、r面とm面、z面とm面のなす角度は、試料a,b,cいずれでも同じであることを示し、ステノの面角一定の法則が成立していることを表しています。TGCBerylさんのこの本には、水晶の特に変わった形として四角柱の水晶が知られていますが、そのことも書かれています。
また、千葉石も内包(クラスレート)する物を除けば水晶で、まず結晶が六角柱状でないこと、加熱すると黒くなることなどで、最初の発見から確認までかなりの時間が掛かりました。
結晶の図で本に掲載されている物は理想形ですから、実際目で見た場合と異なっていることは多くの石マニアでも知っていることです。なので、見た目から結晶物がどの鉱物に該当するのか判断するためには、最低でも、この面一定の法則を知っている必要があります。これを知っていて、理想形からこの法則を使って、先ずはいろいろの結晶の形を想像して結晶系を決め、鉱物が何かを判断していく必要があります。もちろん結晶構造の詳細を次に知っていくとさらに眺めている結晶がどんな風に結晶化したのかなども想像できるようになっていきますね。
鉱物を知ろうとしたら、結晶の形も必要ですが、まず最初は分類することでしょう。その分類は、どの鉱物図鑑も概ね、①化学組成(化学種)を基礎としたシュツルンツ(H.Strunz))が始めた分類と②結晶構造とを合わせた分類が現在の主流です。特にケイ酸塩、アルミノケイ酸塩では化学組成と結晶構造を合わせた分類になっていることが、参考1のp289~301や参考3のp256~282を眺めるとよくわかります。
前書きばかりで長くなりましたが、この本は鉱物情報に掲載されたものを再編集したものです。20個の鉱物の結晶図が掲載され、著者の苦労話などが読めて楽しい物でした。石を眺めて楽しんでいるだけの人もちょっとステップアップし、もう一段階先に進めるのではないかと思います。ただちょっと、結晶を測角し、結晶図を書き求め、その苦労話を書いているので、余程の興味がない限り、読み続けるのはしんどいかなと思いもしますが。
なお、本の注文は、鉱物情報(参考4)のサイトでできます。
また、TGCBerylさんのサイトは以下の所です。いろいろの結晶写真が見られます。訪問してみてください。
http://tgcberyl.livedoor.blog/
参考
1.鉱物学概論 第2版 原田準平 岩波全書230 (1973)
2.高田雅介 やさしい結晶学 結晶の形態 (2012)
この本の注文は、以下の所に問合せ願います。
鉱物の結晶の博物館(高田クリスタルミュージアム)
〒610-1132 京都市西京区大原野灰方町456
tel 075-331-2064
3.松原聰、宮脇律郎、門馬綱一 鉱物の博物学 秀和システム(2016)
4.鉱物情報のサイト
鉱物情報
問い合わせのタグをクリックして確認してください。