10年前の修理から音的には何ら欠点を感じず昨年(2025年)春まで使っていました。最近になって使えるなら見た目は問いませんという学生に譲るため動作チェックをしたら片側の高域が出ません。テスターでツイーターAUDAX TW025M0の断線を確認しました。前回とは別の原因による再修理です。

修理から10年経過したツイーターの内部にはほとんど変化がありません。磁性流体(フェローフルイド)充填直後のギャップの10年前(上)とその10年経過後(下)の比較。コイルに付着する分もあるので僅かに減っていますが大きな変化は見られません。


前回、初のツイーター修理で試行錯誤の末にアルテコパワーエースと墨汁でシルクドームの再コーティングを行ったダイアフラムも状態に大きな変化は見られませんで、この手法の耐久性が証明されました。コイルが断線しなければまだまだ使えたことでしょう。

ボイスコイルからリード線が引き出される部分が断線していました。私にはここをハンダ付けする技量はありません。

AliExpressのGHXamp Audioから25.4mm(1inch)のダイアフラムを取り寄せました。
https://ja.aliexpress.com/item/32878001801.html

このショップを利用したのは初めてでしたが、潰れやすいスピーカー部品を事故なく送るために梱包にしっかりとした配慮があり品質も素晴らしい。


コイル径や突出量は問題なさそう。リード線も太くて丈夫そう。


10年前に再コーティングした部分を上記の新品と比較すると手塗りで濃淡にムラがあるのは仕方がないとして、シルクドームの再現度としてはけっこうイイ線行ってたと思います。


しかし残念ながらこのダイアフラムはサイズの問題で使えませんでした。
【元のダイアフラムのサイズ】
コイル径 25.4mm
ドーム径 31mm
生地径 36mm
台座外周直径 54mm
台座のドーム開口穴径 30mm
大きなネジ4穴 対角距離 47.5〜48mm 穴径5mm
小さな穴2穴 対角距離48mm 穴径4mm
【取り寄せたダイアフラムのサイズ】
コイル径 25.4mm
ドーム径 31mm
生地径 36mm
台座外周直径 約62mm
端子部分の直径81mm(端子を折って83mm)
台座のドーム開口穴径 31mm
大きなネジ4穴 対角43〜59mm(ネジ対角にして47〜56mm) 穴径5mm
小さな穴4穴 対角距離44mm 穴径3mm

※正確に定規が当てられない部分があるので1mm程度の誤差があります。
TW025M0のマグネット側にはセンター出しの為の突出部が2つあり、まずそこのサイズが合いません。

それだけなら穴を広げればよいのですけど、そもそもエンクロージャー側のバッフル穴径が73mmで板厚もあるので端子部分の横幅が81mmだと入らないです。

仕方がないのでシルクドーム+コイルのみを再度取り寄せて元のプラスチック製台座に貼り込むことにしました。
https://ja.aliexpress.com/item/32827390652.html

こちらも個装ではないけど潰れないように配慮された梱包で一週間で届きました。クーポン利用で2個も4個も値段変わらないので4個購入。リード線の引き出し方向を除けば前述のダイアフラムに貼ってあるのと同じものです。

前回の修理でコイルがギャップに接触して音が濁る経験をしているのでどうにもセンター出しに苦手意識があります。古いドームを撤去すると一段低いリング状の接着面が出現。ベタ付けというより線状に接着剤か塗布されていたように思えます。

繊維状の模様で残った古い接着剤は溶剤で除去しきれなかったのでパターンカッターで削り取り、脱脂しました。

交換するシルクドームを接着面の段差をガイドにしてマスキングテープで仮固定します。

リード線もマスキングテープで仮固定してから端子にハンダ付けしますが、

台座が熱にとても弱くハトメのハンダが溶けるまで加熱し続けると変形してしまいました(右側の端子)。

この失敗の反省から以降はヒートクリップで吸熱しながらちょっとずつ溶かして付けるようにしました。テスター測定による巻線抵抗値は断線していないオリジナルが5.5Ωで交換品は6Ωでした。

マグネットに装着し、高域の濁り(コイル擦れ)がわかりやすい音源を再生しながらセンター出しをする目論見でしたが磁性流体が入っているのでコイルが浮き、音がビビります。マスキングテープの固定箇所を増やします。

磁性流体には自動最適化の性質があるので音を流しながらだとある程度自然に位置が決まる所があり、前述のリングをガイドに仮固定していれば事前の想像ほどセンター出しは難しくありません。前回苦労したのはコイルが斜めになっていたからですね。位置が確定できたらマスキングテープを少しずつ剥がして接着していきます。使った接着剤はB-7000です。

カッターナイフの先で生地の端を持ち上げ、パターンカッターの先で接着剤を塗り、1〜2分待って初期乾燥でベタつき始めたらヘラの先で押し付けマスキングテープで固定、の繰り返しで円周を貼っていきます。

作業中も音(いつもの新居昭乃「ばらの茂み」と窪田ミナ「金の波 千の波」のピアノ・ソロ版)を流しコイル擦れが発生しないかチェックしながらで、トイレットペーパーの芯を載せると聞きやすい。

コイルの突き出し量の比較です。交換前のオリジナル(上)より交換後(下)のほうがごくわずかに凸量が多い(交換前はコイルの先端に磁性流体が付着していて黒くなっている)。


逆にフロント側の突き出しは交換前(上)のほうが高く、交換後(下)は少し低くなりました。


パネルを装着した状態。交換前(上)より交換後(下)のほうが凸量が控えめです。


シルクドームを貼り終わったら台座を裏返してリード線を固定します。接着剤は絶縁を兼ねて黒色のT-7000。


この配線は浮くので8〜10分後の接着剤がベタベタしつつも手には付かない頃を見計らって指先で押し付けるのですけど、交換品のリード線はオリジナルの細いエナメル線に比べると太くて絶縁性が無く、接着剤による絶縁だけでは不十分でパネル組み付け時にネジを締め付けるとマグネット側の金属面とショートして音が途切れてしまいます。最終的にはエーモンの結束テープで絶縁しました。下の写真は2個目の施工例でリード線のゆとりと絶縁テープの貼り位置を考えて1個目より内側に配線位置を変更しています。

交換後、エンクロージャーに付けて断線していない方と鳴らし比べてみましたが予想外に差がありません。交換後のほうがややピーキーな帯域を感じて前回コーティング修理したほうが音が柔らかい感じですが、意識して聞かないとすぐにはわからない程度の差でエージングで馴染むかなという感想。位相も同じでした。つまり取り寄せた新しいコイルは裏側(コイル側)から見て下側にリード線を延ばした状態で右側のリード線がプラス、左側がマイナスで、このスピーカーの配線では青色線がプラス(台座側の端子に赤色の着色がある方)、白色線がマイナスです。

音質と寿命を左右で合わせるため断線していなかった方も同様にシルクドームを貼り替えました。本機のネットワークは寿命が短い電解コンデンサーではなくフィルムコンデンサーで聴感上のバランスも問題ないので特に手を入れずそのままです。

フロントパネルのフィルム端が剥がれかけなので接着剤(アルテコパワーエース)で剥がれないように補修し、底面には保護のため耐久性のあるカモ井のマスキングテープmtを貼りました。

ウーハーの周囲のリングが変形して外れていたので切れ目を入れて少し長さを詰めてから接着剤(セメダインスーパーX)で貼り直し。

古くなって見栄えはさほど良くありませんが、10年以上仕事で使っていただけあってこれの音に慣れております。透き通るような高音というほどではないにせよ高音はちゃんと出ていますし、無理して出している低音ではなく自然な低音で音量を下げても高音と低音のバランスが崩れない。私にとっては「普通のスピーカー」。GENELECやADAMよりもこういうので良いんだけどな。私の手元からは離れるけれど、少しでも音の後輩の役に立ってくれれば。

自宅のモニタースピーカーはYAMAHA NS-10M→AUDIX Studio1a→Soundcraft Spirit Absolute2と変遷してきましたが、次はDynaudio BM-5を復活させる予定です。
本記事を参考に修理をされる場合は自己責任でお願いします。
(がんくま)
【関連記事】
Soundcraft Spirit Absolute2 ツイーター修理記(1)
Soundcraft Spirit Absolute2 ツイーター修理記(2)
Soundcraft Spirit Absolute2 ツイーター修理記(3)
AUDIX Studio1A 修理記

修理から10年経過したツイーターの内部にはほとんど変化がありません。磁性流体(フェローフルイド)充填直後のギャップの10年前(上)とその10年経過後(下)の比較。コイルに付着する分もあるので僅かに減っていますが大きな変化は見られません。


前回、初のツイーター修理で試行錯誤の末にアルテコパワーエースと墨汁でシルクドームの再コーティングを行ったダイアフラムも状態に大きな変化は見られませんで、この手法の耐久性が証明されました。コイルが断線しなければまだまだ使えたことでしょう。

ボイスコイルからリード線が引き出される部分が断線していました。私にはここをハンダ付けする技量はありません。

AliExpressのGHXamp Audioから25.4mm(1inch)のダイアフラムを取り寄せました。
https://ja.aliexpress.com/item/32878001801.html

このショップを利用したのは初めてでしたが、潰れやすいスピーカー部品を事故なく送るために梱包にしっかりとした配慮があり品質も素晴らしい。


コイル径や突出量は問題なさそう。リード線も太くて丈夫そう。


10年前に再コーティングした部分を上記の新品と比較すると手塗りで濃淡にムラがあるのは仕方がないとして、シルクドームの再現度としてはけっこうイイ線行ってたと思います。


しかし残念ながらこのダイアフラムはサイズの問題で使えませんでした。
【元のダイアフラムのサイズ】
コイル径 25.4mm
ドーム径 31mm
生地径 36mm
台座外周直径 54mm
台座のドーム開口穴径 30mm
大きなネジ4穴 対角距離 47.5〜48mm 穴径5mm
小さな穴2穴 対角距離48mm 穴径4mm
【取り寄せたダイアフラムのサイズ】
コイル径 25.4mm
ドーム径 31mm
生地径 36mm
台座外周直径 約62mm
端子部分の直径81mm(端子を折って83mm)
台座のドーム開口穴径 31mm
大きなネジ4穴 対角43〜59mm(ネジ対角にして47〜56mm) 穴径5mm
小さな穴4穴 対角距離44mm 穴径3mm

※正確に定規が当てられない部分があるので1mm程度の誤差があります。
TW025M0のマグネット側にはセンター出しの為の突出部が2つあり、まずそこのサイズが合いません。

それだけなら穴を広げればよいのですけど、そもそもエンクロージャー側のバッフル穴径が73mmで板厚もあるので端子部分の横幅が81mmだと入らないです。

仕方がないのでシルクドーム+コイルのみを再度取り寄せて元のプラスチック製台座に貼り込むことにしました。
https://ja.aliexpress.com/item/32827390652.html

こちらも個装ではないけど潰れないように配慮された梱包で一週間で届きました。クーポン利用で2個も4個も値段変わらないので4個購入。リード線の引き出し方向を除けば前述のダイアフラムに貼ってあるのと同じものです。

前回の修理でコイルがギャップに接触して音が濁る経験をしているのでどうにもセンター出しに苦手意識があります。古いドームを撤去すると一段低いリング状の接着面が出現。ベタ付けというより線状に接着剤か塗布されていたように思えます。

繊維状の模様で残った古い接着剤は溶剤で除去しきれなかったのでパターンカッターで削り取り、脱脂しました。

交換するシルクドームを接着面の段差をガイドにしてマスキングテープで仮固定します。

リード線もマスキングテープで仮固定してから端子にハンダ付けしますが、

台座が熱にとても弱くハトメのハンダが溶けるまで加熱し続けると変形してしまいました(右側の端子)。

この失敗の反省から以降はヒートクリップで吸熱しながらちょっとずつ溶かして付けるようにしました。テスター測定による巻線抵抗値は断線していないオリジナルが5.5Ωで交換品は6Ωでした。

マグネットに装着し、高域の濁り(コイル擦れ)がわかりやすい音源を再生しながらセンター出しをする目論見でしたが磁性流体が入っているのでコイルが浮き、音がビビります。マスキングテープの固定箇所を増やします。

磁性流体には自動最適化の性質があるので音を流しながらだとある程度自然に位置が決まる所があり、前述のリングをガイドに仮固定していれば事前の想像ほどセンター出しは難しくありません。前回苦労したのはコイルが斜めになっていたからですね。位置が確定できたらマスキングテープを少しずつ剥がして接着していきます。使った接着剤はB-7000です。

カッターナイフの先で生地の端を持ち上げ、パターンカッターの先で接着剤を塗り、1〜2分待って初期乾燥でベタつき始めたらヘラの先で押し付けマスキングテープで固定、の繰り返しで円周を貼っていきます。

作業中も音(いつもの新居昭乃「ばらの茂み」と窪田ミナ「金の波 千の波」のピアノ・ソロ版)を流しコイル擦れが発生しないかチェックしながらで、トイレットペーパーの芯を載せると聞きやすい。

コイルの突き出し量の比較です。交換前のオリジナル(上)より交換後(下)のほうがごくわずかに凸量が多い(交換前はコイルの先端に磁性流体が付着していて黒くなっている)。


逆にフロント側の突き出しは交換前(上)のほうが高く、交換後(下)は少し低くなりました。


パネルを装着した状態。交換前(上)より交換後(下)のほうが凸量が控えめです。


シルクドームを貼り終わったら台座を裏返してリード線を固定します。接着剤は絶縁を兼ねて黒色のT-7000。


この配線は浮くので8〜10分後の接着剤がベタベタしつつも手には付かない頃を見計らって指先で押し付けるのですけど、交換品のリード線はオリジナルの細いエナメル線に比べると太くて絶縁性が無く、接着剤による絶縁だけでは不十分でパネル組み付け時にネジを締め付けるとマグネット側の金属面とショートして音が途切れてしまいます。最終的にはエーモンの結束テープで絶縁しました。下の写真は2個目の施工例でリード線のゆとりと絶縁テープの貼り位置を考えて1個目より内側に配線位置を変更しています。

交換後、エンクロージャーに付けて断線していない方と鳴らし比べてみましたが予想外に差がありません。交換後のほうがややピーキーな帯域を感じて前回コーティング修理したほうが音が柔らかい感じですが、意識して聞かないとすぐにはわからない程度の差でエージングで馴染むかなという感想。位相も同じでした。つまり取り寄せた新しいコイルは裏側(コイル側)から見て下側にリード線を延ばした状態で右側のリード線がプラス、左側がマイナスで、このスピーカーの配線では青色線がプラス(台座側の端子に赤色の着色がある方)、白色線がマイナスです。

音質と寿命を左右で合わせるため断線していなかった方も同様にシルクドームを貼り替えました。本機のネットワークは寿命が短い電解コンデンサーではなくフィルムコンデンサーで聴感上のバランスも問題ないので特に手を入れずそのままです。

フロントパネルのフィルム端が剥がれかけなので接着剤(アルテコパワーエース)で剥がれないように補修し、底面には保護のため耐久性のあるカモ井のマスキングテープmtを貼りました。

ウーハーの周囲のリングが変形して外れていたので切れ目を入れて少し長さを詰めてから接着剤(セメダインスーパーX)で貼り直し。

古くなって見栄えはさほど良くありませんが、10年以上仕事で使っていただけあってこれの音に慣れております。透き通るような高音というほどではないにせよ高音はちゃんと出ていますし、無理して出している低音ではなく自然な低音で音量を下げても高音と低音のバランスが崩れない。私にとっては「普通のスピーカー」。GENELECやADAMよりもこういうので良いんだけどな。私の手元からは離れるけれど、少しでも音の後輩の役に立ってくれれば。

自宅のモニタースピーカーはYAMAHA NS-10M→AUDIX Studio1a→Soundcraft Spirit Absolute2と変遷してきましたが、次はDynaudio BM-5を復活させる予定です。
本記事を参考に修理をされる場合は自己責任でお願いします。
(がんくま)
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