A DAY IN THE LIFE WITH MUSIC -839ページ目

チェット・ベイカー・シングス / チェット・ベイカー

CHET BAKER SINGS / CHET BAKER


chet baker sings


①THAT OLD FEELING  ザット・オールド・フィーリング

②IT'S ALWAYS YOU  イッツ・オールウェイズ・ユー

③LIKE SOMEONE IN LOVE  ライク・サムワン・イン・ラヴ

④MY IDEAL  マイ・アイディアル

⑤I'VE NEVER BEEN IN LOVE BEFORE  アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォア

⑥MY BUDDY  マイ・バディ

⑦BUT NOT FOR ME  バット・ノット・フォー・ミー

⑧TIME AFTER TIME  タイム・アフター・タイム

⑨I GET ALONG WITHOUT YOU VERY WELL  アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・ヴェリー・ウェル

⑩MY FUNNY VALENTINE  マイ・ファニー・ヴァレンタイン

⑪THERE WILL BE ANOTHER YOU  ゼア・ウィル・ビー・アナザー・ユー

⑫THE THRILL IS GONE  ザ・スリル・イズ・ゴーン

⑬I FALL IN LOVE TOO EASILY  アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥ・イージリー

⑭LOOK FOR THE SILVER LINING  ルック・フォー・ザ・シルヴァー・ライニング



本日紹介するのは、1954年のチェット・ベイカーのアルバム「チェット・ベイカー・シングス」です。


このアルバムは、チェット・ベイカーの代表作であると同時に、ジャズ・ヴォーカルの名盤です。


どこのBARに行っても必ず置いてるアルバムですw



チェット・ベイカーは、ジャズのトランペッターであり、シンガーです。

このアルバムでは、1920年代~40年代の映画の主題歌をカヴァーしています。


余談ですが、ジャズのスタンダードと言われるものの多くは、もともとジャズ・ナンバーとして書き下ろされたのではなく、映画やミュージカルに使用されたものです。

ジャズ・ミュージシャンが作曲したスタンダードが登場するのは、1940年以降あたりからだそうです。



中性的で繊細そして切なくクールなヴォーカル、ゆったりとスウィングするリズムと楽曲の素晴らしさ、そして彼のトランペット・プレイ、これらが見事に調和して何とも言えない魅力を作り出しています。

複雑な即興演奏もほとんどなく、演奏もヴォーカルもいたってシンプルです。



①のイントロだけで、もう名盤決定です。

このスウィングの心地よさ、そしてさりげなく入ってくるヴォーカル、最高です。

自然と体がリズムをとってしまいます。


③は、しっとりとしたバラード。

チェット・ベイカーはここではヴォーカルのみに徹しています。

ビョークもデビューアルバムでこの曲を歌っていました。


そして⑦はあまりに有名なガーシュイン兄弟の名曲です。

ここでもチェットのヴォーカルとトランペットは素晴らし過ぎます。


⑩も超有名ですね。

オレはこのアルバムの日本盤を持ってるのですが、この曲の解説には、

「あまりにも有名なスタンダードだから、解説は必要ないと思う」

と書かれてます。氏ね。

あまりにいろんな人が歌っているのですが、元々のオリジナルというのはあまり知られていないように思います。

オレも知りませんw

ヴァレンタイン・デーにもほとんど聴かれることがないというのがわかるくらい、暗い曲です。

でも、ここではそれがいいのです。


⑪はボサノヴァでカヴァーされることも多い、これも有名な曲です。

以前紹介したアナ・マルティンス もカヴァーしてます。




こうした夜の雰囲気に合う音楽というのは、お酒がなくても楽しめます。

ま、お酒があったほうがいいんですけどね。


今夜もこのアルバムはどこかのBARで流れていることでしょう。


正にジャズの最高傑作です。







バット・ノット・フォー・ミー




愛について書かれた曲はたくさんある

でもどれも僕のためじゃない

幸運の星は夜空に輝いている

でも僕のためじゃない


恋に導かれて進んだら

行く手にはどんよりとした曇り空

どんなロシアの劇でも

これより暗くはなれない


落っこちてへんな道に迷いこみ

僕は愚か者

まったく 本当に


彼女のキスは忘れられないけど

でも僕の恋人じゃない


クロージング・タイム / トム・ウェイツ

CLOSING TIME / TOM WAITS


closing time



①OL' 55  オール’55

②I HOPE THAT I DON'T FALL IN LOVE WITH YOU  恋におそれて

③VIRGINIA AVENUE  ヴァージニア・アヴェニュー

④OLD SHOES (& PICTURE POSTCARDS)  オールド・シューズ

⑤MIDNIGHT LULLABY  ミッドナイト・ララバイ

⑥MARTHA  マーサ

⑦ROSIE  ロージー

⑧LONELY  ロンリー

⑨ICE CREAM MAN  アイス・クリーム・マン

⑩LITTLE TRIP TO HEAVEN (ON THE WINGS OF YOUR LOVE)  愛の翼

⑪GRAPEFRUIT MOON  グレープフルーツ・ムーン

⑫CLOSING TIME  クロージング・タイム



本日紹介するのは、1973年のトム・ウェイツのアルバム「クロージング・タイム」です。


これは、トム・ウェイツのデビュー・アルバムになります。


「酔いどれ詩人」と言われるトム・ウェイツですが、さすがにこのアルバムでは声もまだまだ若々しく、曲調も歌詞もストレートです。

タイトルが示すように、ここで聴かれるものは夜の雰囲気で、内省的で切ない男の感情をロマンティックに歌うラヴ・ソングで構成されています。


シンプルで素朴でクセのない美しいメロディが際立つ名盤です。


ジャケットのイメージそのまんまですので、「ジャケ買い」しても損はしませんw



オープニングの①は静かなピアノのイントロで始まります。

スローでメランコリックなナンバーです。

イーグルスもこの曲をカヴァーしていますが、トムはインタビューでそのことを聞かれた時、

「ターンテーブルの埃よけくらいにはなるだろう。」

と辛辣ですw


②はアコースティック・ギターが基調のフォーキーなバラードです。

「君に恋などしたくない」と、強がって意地を張る男の気持ちが切々と歌われます。


③は一転してジャジーなナンバー。

ミュート・トランペットがその雰囲気を盛り立てます。


④はディラン風の、ギターによる3拍子のカントリー・タッチの曲です。

このアルバムの中では明るい雰囲気の曲ですが、女性との別れを歌っています。


⑤もジャジーなナンバーです。

ここでもミュート・トランペットがフィーチャーされています。

冒頭の歌詞、

「6ペンスの歌を歌おう ポケットにはいっぱいのライ麦」

というのは、マザー・グースからの引用句です。

トムのことですから、ここでのライ麦というのはウィスキーのことなのかも知れません。

エンディングのピアノのメロディがとても印象的です。


⑥と⑦は共に女性の名前がタイトルになっています。

どちらもストレートな感情を告白する曲で、ゆったりとした優しい印象ながらも胸に迫るものがあります。


⑧は狂おしいくらいの未練がましい男の歌です。

「君がいなくて寂しい」

トムのピアノによる弾き語りです。


⑨はスウィング・ジャズ的なナンバーです。

アップ・テンポながらどことなく寂しげな雰囲気が漂います。


⑩はこのアルバムのハイライトです。

ピアノでしっとりと歌われるラヴ・ソングです。

「君の愛の翼に乗って天国へ小さな旅をする」

という歌詞はロマンティック過ぎますねw


⑪も詩的なイメージの広がるロマンティックな名曲です。

後半から被さるストリングスが何とも言えず味わい深いです。


⑫は、アルバムの最後に相応しいジャジーな3拍子のインストです。




全12曲どれも素晴らしい出来映えなんですが、個人的に好きなのは、③⑤⑩⑪ですね。


トム・ウェイツの音楽は、しんみりとお酒を飲みたい時にぴったりなんですが、お酒はもちろん、夜のドライヴのBGMにもグゥです。






グレープフルーツ・ムーン




グレープフルーツのような月 光る星ひとつ

それが僕を照らしている

あの調べをもう一度聴きたいと

焦がれている僕を

あのメロディが聞こえるといつも

胸の奥で何かが壊れる

グレープフルーツのような月 光る星ひとつ

潮の流れは それでも戻せない


踏み越えられない運命

そんなものはなかった

君は僕にインスピレーションを与えてくれた

だがいったい何を失わなければならないのだろう

あのメロディが聞こえるといつも

胸の奥で何かが壊れる

グレープフルーツのような月 光る星ひとつ

僕には覆い隠せない


今 タバコをふかしながら

僕は清らさのためにたたかう

でも星のように

暗闇に落ちてゆく

というのはいつもあのメロディが聞こえると

樹に登るのに

グレープフルーツのような月 光る星ひとつ

それしか見えないから


アビー・ロード / ザ・ビートルズ

ABBEY ROAD / THE BEATLES


abbey road



①COME TOGETHER  カム・トゥゲザー

②SOMETHING  サムシング

③MAXWELL'S SILVER HAMMER  マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー

④OH! DARLING  オー!ダーリン

⑤OCTOPUS'S GARDEN  オクトパス・ガーデン

⑥I WANT YOU (She's So Heavy)  アイ・ウォント・ユー

⑦HERE COMES THE SUN  ヒア・カムズ・ザ・サン

⑧BECAUSE  ビコーズ

⑨YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY  ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー

⑩SUN KING  サン・キング

⑪MEAN MR.MUSTARD  ミーン・ミスター・マスタード

⑫POLYTHENE PAM  ポリシーン・パン

⑬SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW  シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドウ

⑭GOLDEN SLUMBERS  ゴールデン・スランバー

⑮CARRY THAT WEIGHT  キャリー・ザット・ウェイト

⑯THE END  ジ・エンド

⑰HER MAJESTY  ハー・マジェスティ



本日紹介するのは、1969年のザ・ビートルズのアルバム「アビー・ロード」です。


これがビートルズにとっての実質的なラスト・アルバムになります。

ビートルズが最後に見せた、完璧な傑作です。



この年の1月、「ゲット・バック」セッション が失敗に終わり、ビートルズはすでに事実上崩壊寸前の状態だったのですが、メンバー4人はもう一度ビートルズとしてのアルバムを制作することを決意します。

アルバム契約が残っていたからなのか、「ゲット・バック」での失敗のままグループが終わってしまうのを嫌ったのか、或いは他の理由があったのか、わかりません。


「アビー・ロード」のレコーディングは1969年の7月~8月にかけて行われました。

「ゲット・バック」セッションからこの「アビー・ロード」制作までの間、シングル「ジョンとヨーコのバラード」とそのB面「オールド・ブラウン・シュー」をレコーディングしたこと以外は、メンバーはビートルズとしての仕事をほとんど行っていません。


リンゴ・スターは俳優として映画の撮影を、ジョン・レノンはヨーコと結婚し、6月には初めてのソロ・シングル(プラスティック・オノ・バンド名義)である「平和を我等に」をレコーディング、ポールもリンダと結婚、また、ジョージはマリファナ所持の疑いで逮捕されています。




アルバム収録曲は、いくつかの新曲を除いては「ホワイト・アルバム」 の頃に作られた曲や、「ゲット・バック」セッションで仕上げられなかった曲で構成されています。


このアルバムがビートルズとして最後のアルバムになることはメンバー全員が知っていました。

ここではかつてのように4人でレコーディングしており、バンドとしてのタイトで素晴らしいまとまりや、美しいハーモニーを聴くことが出来ます。


LPでは、①~⑥がA面で、⑦~⑰がB面です。

プロデューサーであるジョージ・マーティン曰く、

「A面はジョンの好きなロックンロールに、B面はポールの好きなロック・シンフォニーにした。」



ジョンによるクールでファンキーな①で幕を開けます。

ジョンのヴォーカル、ポールのベース、リンゴのドラム、どれもがカッコイイ名曲です。

この曲はまた、チャック・ベリーの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」に酷似しているということで、裁判沙汰になりました。後にのジョンはソロ・アルバム「ロックンロール」でこの曲を収録しています。

意外なことに、ジョンの曲がアルバムの冒頭を飾るのは、「ヘルプ!」以来のことです。


②はジョージによる名バラードです。

ジョージの曲としては初めてシングルのA面になった曲でもあります。


③はポールの物語風の曲。歌詞の内容はちょっと怖いです。

「ゲット・バック」セッションでも何度が取り上げられていました。

映画「レット・イット・ビー」でもその時のセッションの様子を見ることが出来ます。


④もポールによるヘヴィなロッカバラードの名曲。

「君に捨てられたら僕はやっていけない どうか信じてほしい」

という歌詞はまるでジョンに訴えているみたいで切ないです。

この時期のポールはこうした内容のものが多いです。

この曲も「ゲット・バック」セッションで取り上げられていました。


⑤はリンゴによるポップでコミカルなナンバー。

映画「レット・イット・ビー」ではこの曲をジョージと一緒にピアノを弾きながら作っているシーンが見れます。


⑥はジョンによるブルージーで強烈な曲。

「ヤー・ブルース」「ドント・レット・ミー・ダウン」に続くジョンのヘヴィ路線の末端。

歌詞はたったの3節しかありませんが、曲は8分近くあります。

ジョンの絶叫、ジョージのギター、リンゴのドラム、そしてポールのコーラス全てがキテます。

ビートルズの最後の狂気であり、シンプルな歌詞を連呼するその作法は、翌年にリリースされるジョンのソロ・アルバム「ジョンの魂」に通じるものがあります。

テープ切ったように、この曲はばっさりと終わります。


ジョンの意向で作られたといわれるA面ですが、ジョンの曲は最初と最後の2曲だけです。

しかしながらその2曲はどちらも新曲であり、それなりにジョンも気合が入っていたんじゃないか、と思ってしまいます。


⑦はジョージによる和やかな曲です。


⑧はジョンによる美し過ぎる名曲。

このアルバムからムーグ・シンセサイザーが使われているのですが、この曲ではそれが効果的に使われています。

また、ジョン・ポール・ジョージによるコーラスも絶品です。

ここでもジョンの歌詞はひたすらシンプルで美しいです。


⑨~⑯まではメドレーになっています。

いわゆる「ヒュージ・メドレー」と言われているものですが、ビートルズとしてのラスト・アルバムを完璧に仕上げるという意欲がある一方で、仕上がっていない過去の曲をまとめるためのやり方でもあったようです。

現に⑯以外は、全てすでに前からあった曲ばかりです。

しかしながらこのメドレーは、このアルバムの、ビートルズ最後のハイライトです。

楽しそうで、しかも美しく、そして切ないです。

ポールはこうしたロック・オペラ的な展開がお気に入りなのか、解散後のウィングスのアルバムでもこうした手法を取り入れています。


めまぐるしく展開が変わる⑨の後、⑩⑪⑫とジョンのナンバーが続き、⑬⑭⑮で静かにそして徐々に激しく盛り上がっていき、⑯で文字通り「ジ・エンド」を迎えます。


⑯ではリンゴのドラム・ソロの後、ジョン・ポール・ジョージの3人が持ち回りでギター・ソロを弾いています。

大団円です。

そしてこの曲は「ジ・エンド」というタイトルですが、歌詞の中では「In the end」、つまり「結局は」という意味で使われており、決して終わりそのものを歌っているのではない、という言葉遊びのような感覚がビートルズらしいです。


そして約15秒のブランクの後、アンコールのようなポールの弾き語りによる小品⑰でアルバムは幕を閉じます。



この「アビー・ロード」はビートルズが最後の力を振り絞って出来た、メンバー4人の結晶です。

ライヴ・セッションによる「ゲット・バック」が失敗に終わった以上、ビートルズとして残された道は「スタジオ・ワーク」しかなかったのだと思います。


その最後の「スタジオ・ワーク」を見事に仕上げ、ビートルズは解散したのです。


正に有終の美、です。



そしてビートルズと共に、60年代も終わったのです。








ジ・エンド




そして結局は

君が奪う愛というものは

君が作る愛と同じなんだ




abbey road jacket