アビー・ロード / ザ・ビートルズ | A DAY IN THE LIFE WITH MUSIC

アビー・ロード / ザ・ビートルズ

ABBEY ROAD / THE BEATLES


abbey road



①COME TOGETHER  カム・トゥゲザー

②SOMETHING  サムシング

③MAXWELL'S SILVER HAMMER  マックスウェルズ・シルヴァー・ハンマー

④OH! DARLING  オー!ダーリン

⑤OCTOPUS'S GARDEN  オクトパス・ガーデン

⑥I WANT YOU (She's So Heavy)  アイ・ウォント・ユー

⑦HERE COMES THE SUN  ヒア・カムズ・ザ・サン

⑧BECAUSE  ビコーズ

⑨YOU NEVER GIVE ME YOUR MONEY  ユー・ネヴァー・ギヴ・ミー・ユア・マネー

⑩SUN KING  サン・キング

⑪MEAN MR.MUSTARD  ミーン・ミスター・マスタード

⑫POLYTHENE PAM  ポリシーン・パン

⑬SHE CAME IN THROUGH THE BATHROOM WINDOW  シー・ケイム・イン・スルー・ザ・バスルーム・ウィンドウ

⑭GOLDEN SLUMBERS  ゴールデン・スランバー

⑮CARRY THAT WEIGHT  キャリー・ザット・ウェイト

⑯THE END  ジ・エンド

⑰HER MAJESTY  ハー・マジェスティ



本日紹介するのは、1969年のザ・ビートルズのアルバム「アビー・ロード」です。


これがビートルズにとっての実質的なラスト・アルバムになります。

ビートルズが最後に見せた、完璧な傑作です。



この年の1月、「ゲット・バック」セッション が失敗に終わり、ビートルズはすでに事実上崩壊寸前の状態だったのですが、メンバー4人はもう一度ビートルズとしてのアルバムを制作することを決意します。

アルバム契約が残っていたからなのか、「ゲット・バック」での失敗のままグループが終わってしまうのを嫌ったのか、或いは他の理由があったのか、わかりません。


「アビー・ロード」のレコーディングは1969年の7月~8月にかけて行われました。

「ゲット・バック」セッションからこの「アビー・ロード」制作までの間、シングル「ジョンとヨーコのバラード」とそのB面「オールド・ブラウン・シュー」をレコーディングしたこと以外は、メンバーはビートルズとしての仕事をほとんど行っていません。


リンゴ・スターは俳優として映画の撮影を、ジョン・レノンはヨーコと結婚し、6月には初めてのソロ・シングル(プラスティック・オノ・バンド名義)である「平和を我等に」をレコーディング、ポールもリンダと結婚、また、ジョージはマリファナ所持の疑いで逮捕されています。




アルバム収録曲は、いくつかの新曲を除いては「ホワイト・アルバム」 の頃に作られた曲や、「ゲット・バック」セッションで仕上げられなかった曲で構成されています。


このアルバムがビートルズとして最後のアルバムになることはメンバー全員が知っていました。

ここではかつてのように4人でレコーディングしており、バンドとしてのタイトで素晴らしいまとまりや、美しいハーモニーを聴くことが出来ます。


LPでは、①~⑥がA面で、⑦~⑰がB面です。

プロデューサーであるジョージ・マーティン曰く、

「A面はジョンの好きなロックンロールに、B面はポールの好きなロック・シンフォニーにした。」



ジョンによるクールでファンキーな①で幕を開けます。

ジョンのヴォーカル、ポールのベース、リンゴのドラム、どれもがカッコイイ名曲です。

この曲はまた、チャック・ベリーの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」に酷似しているということで、裁判沙汰になりました。後にのジョンはソロ・アルバム「ロックンロール」でこの曲を収録しています。

意外なことに、ジョンの曲がアルバムの冒頭を飾るのは、「ヘルプ!」以来のことです。


②はジョージによる名バラードです。

ジョージの曲としては初めてシングルのA面になった曲でもあります。


③はポールの物語風の曲。歌詞の内容はちょっと怖いです。

「ゲット・バック」セッションでも何度が取り上げられていました。

映画「レット・イット・ビー」でもその時のセッションの様子を見ることが出来ます。


④もポールによるヘヴィなロッカバラードの名曲。

「君に捨てられたら僕はやっていけない どうか信じてほしい」

という歌詞はまるでジョンに訴えているみたいで切ないです。

この時期のポールはこうした内容のものが多いです。

この曲も「ゲット・バック」セッションで取り上げられていました。


⑤はリンゴによるポップでコミカルなナンバー。

映画「レット・イット・ビー」ではこの曲をジョージと一緒にピアノを弾きながら作っているシーンが見れます。


⑥はジョンによるブルージーで強烈な曲。

「ヤー・ブルース」「ドント・レット・ミー・ダウン」に続くジョンのヘヴィ路線の末端。

歌詞はたったの3節しかありませんが、曲は8分近くあります。

ジョンの絶叫、ジョージのギター、リンゴのドラム、そしてポールのコーラス全てがキテます。

ビートルズの最後の狂気であり、シンプルな歌詞を連呼するその作法は、翌年にリリースされるジョンのソロ・アルバム「ジョンの魂」に通じるものがあります。

テープ切ったように、この曲はばっさりと終わります。


ジョンの意向で作られたといわれるA面ですが、ジョンの曲は最初と最後の2曲だけです。

しかしながらその2曲はどちらも新曲であり、それなりにジョンも気合が入っていたんじゃないか、と思ってしまいます。


⑦はジョージによる和やかな曲です。


⑧はジョンによる美し過ぎる名曲。

このアルバムからムーグ・シンセサイザーが使われているのですが、この曲ではそれが効果的に使われています。

また、ジョン・ポール・ジョージによるコーラスも絶品です。

ここでもジョンの歌詞はひたすらシンプルで美しいです。


⑨~⑯まではメドレーになっています。

いわゆる「ヒュージ・メドレー」と言われているものですが、ビートルズとしてのラスト・アルバムを完璧に仕上げるという意欲がある一方で、仕上がっていない過去の曲をまとめるためのやり方でもあったようです。

現に⑯以外は、全てすでに前からあった曲ばかりです。

しかしながらこのメドレーは、このアルバムの、ビートルズ最後のハイライトです。

楽しそうで、しかも美しく、そして切ないです。

ポールはこうしたロック・オペラ的な展開がお気に入りなのか、解散後のウィングスのアルバムでもこうした手法を取り入れています。


めまぐるしく展開が変わる⑨の後、⑩⑪⑫とジョンのナンバーが続き、⑬⑭⑮で静かにそして徐々に激しく盛り上がっていき、⑯で文字通り「ジ・エンド」を迎えます。


⑯ではリンゴのドラム・ソロの後、ジョン・ポール・ジョージの3人が持ち回りでギター・ソロを弾いています。

大団円です。

そしてこの曲は「ジ・エンド」というタイトルですが、歌詞の中では「In the end」、つまり「結局は」という意味で使われており、決して終わりそのものを歌っているのではない、という言葉遊びのような感覚がビートルズらしいです。


そして約15秒のブランクの後、アンコールのようなポールの弾き語りによる小品⑰でアルバムは幕を閉じます。



この「アビー・ロード」はビートルズが最後の力を振り絞って出来た、メンバー4人の結晶です。

ライヴ・セッションによる「ゲット・バック」が失敗に終わった以上、ビートルズとして残された道は「スタジオ・ワーク」しかなかったのだと思います。


その最後の「スタジオ・ワーク」を見事に仕上げ、ビートルズは解散したのです。


正に有終の美、です。



そしてビートルズと共に、60年代も終わったのです。








ジ・エンド




そして結局は

君が奪う愛というものは

君が作る愛と同じなんだ




abbey road jacket