今宵の遅くにはちぢの流れ星見らるなりかし。
天体の織り成す催しには、我もいとめづれど、
あまりに遅し刻限なるにさすがに起きては有られぬし。
何時まで夜空を見上げられたるや悩みどころなり。
さう言へば、先ほど惟盛殿が何やら長き木筒のごとき物持ちて
うらうらとしたりけるかし。
「其れは何なるや?」と問うたら、
「おや、知らざるや有り、敦盛。汝は勉強不足なるかしぇ。
此は天体望遠鏡と言ひて、天にあるもの悉く観察せらるる優れものなるなりかし」
などとのたまふ。
其れはいみじきと思ひければ、我もいささか触らせて貰ふことにしき。
木筒の先の小さき穴より覗きてみけるにころ、
別段、特に何も変わりしことはなかるなりきけれど。
「斯様にするに、月や星ら大きに見ゆるなり」と、
惟盛殿は木筒の反対側をぐいと上に向かれて覗きき。
するに「あひしたたた」と片目を抑えて痛とは有り。
だうやら木筒の中にあひし屑が目に入りたりしらし。
やほら上に向かれたりせざればよかれど。
「未来の道具といふ物は、中々扱きづら有りものなるかな」
と、目をしぱしぱさされつつ呟く惟盛殿。
彼の木筒は未来の道具なりけるや。
いりたき誰より然様なる情報聞きてきけるや知られざれど、
何の変哲もなき只の木筒にて天体観察あたふわけもなきと思へど。
「いづれのみ流れ星見らるかしや」と、
嬉しさもあり木筒撫いでたりやの人に、
「ちぢ降りてくるるによかりはべるなりかし」と、
我は未来の道具とやらには、あへて触られずにかへりごとしき。