昨日より雲覆ひたるせいか、我の住まうどころは幾分涼しくなりたり。
此の夏の盛りに暑ぞに悩まなかりてよき日あるはありがたき事なり。


然し数日前の蒸し暑ぞには本当に参ひてしまりけるかし。
愛用のぱそこんも調子悪しくなりて、
壊れたるぞかしてはゆかと心配したりき。


精巧なる機械といふはいと便利なる物なるに思へど、
何やにつけて繊細なれど厄介なるかし。


さて、せっかく涼しくなりしひとときなれば、
頭よく回るうちに歌なぞ詠む手習ひせむやと思ひ、筆と硯の用意などしき。


然しもとより、我にとりて歌は苦手なる部類。
中々上手き句浮かびてこざりて困ったものなるかし。


さういりき我の気持ちを見透かすごとく、

内庭の池にて鯉がぽちゃんと身を跳ねらせた。


涼しげなる夏の夕暮れに、飛沫躍らす一匹の鯉や。


然様なる光景のみにも良し一句あたひさうのみれど、

あへてやめておくにせむ。


歌詠みにうんうんと頭悩ませるよりも、
今は黙して、此のひとときの風情を全身にて覚え味はう方が、
我の性格には合ひたるならむが為。